酷道険道でもイケる!? 最新のプジョー308 Allure Blue HDiで激狭路を走る! 気になるサイズ感・取り回し・運転席からの視界は!?

プジョー308 Allure Blue HDi(オリビン・グリーン)
最近のクルマは大きくなった。Cセグメントと言われるクラスは全幅が1800mm前後から場合によっては1800mm台半ばというモデルもある。クルマのグローバル化により巨大市場であるアメリカでの販売を視野に入れる必要も、厳しい衝突安全基準を満たす必要もあり、サイズが大きくなるのは仕方ない。そもそもクルマはモデルチェンジごとにサイズが拡大していく傾向にはある。しかし、クルマは大きくなっても道路は急に広くはならない。幹線道路や主要道はともかく、日本の道路はまだまだ狭いのだ!そこで、フランスを代表するCセグメント車であるプジョー308を日本の狭隘路で走らせるとどうなるのか試してみた。
REPORT:大橋俊哉

クラス最大級の堂々たるボディ

今回の試乗車であるプジョー308 Allure Blue HDiのボディサイズは

全長×全幅×全高:4420mm×1850mm×1475mm

となっており、全幅1850mmはCセグメント車の中ではトップクラスに大きい。
プジョー308と同クラスとなるCセグメントハッチバック車の代表的モデルと全幅を比較してみると、メーカーチューンドのスポーツモデルを除けば最大である。

■代表的なCセグメントハッチバックモデルの全幅
ゴルフ[フォルクスワーゲン]:1790mm
1シリーズ[BMW]:1799mm
A3スポーツバック[アウディ]:1815mm
Aクラス[メルセデスベンツ]:1800mm(AMG A45S:1850mm)
C4[シトロエン]:1800mm
DS4[DS]:1830mm
メガーヌ[ルノー]:1815mm(R.S.:1875mm)
カローラスポーツ[トヨタ]:1790mm
リーフ[日産]:1790mm
シビック[ホンダ]:1800mm(Type R:1890mm)
3ファストバック[マツダ]:1795mm
インプレッサ[スバル]:1775mm

道路幅員2m? ほとんど舗装林道の峠を308で越えて行く

日本の一般道路は基本的に1車線あたり3m〜3.5mが確保されている。しかし、市街地や住宅街、山間部の道では3mに満たない道も多く、場合によっては幅員制限が設けられていることもある(自動車通行可能な道路では1.7m程度まで)。
最近はルート選択が賢くなったのでそういったケースは減っているものの、ナビ、特にGoogle Mapなどは道路環境を無視した最短ルートを指示したりする。地図上ではわからないが、実際に行ってみたら「なんじゃこりゃ!」というような道だったりすることもある。
プジョー308はそんな状況になった時、引き返すか、あるいは突破できるのか!?

峠のアペックス付近はすり鉢状の切り通しになっている。

■路肩に段差のある狭隘路
視界自体は開けているものの、道路左右端には脱輪防止のためか路肩保護のためか段差が設けられている。垂直ではないものの山側(写真右)は壁になっており、谷側(写真左)はギリギリではないが木が生えている。壁や木に接触することはないが、段差を踏みそうだし場合によっては圧迫感もある。
段差を含めない路面の幅員は推定で2mちょっとはありそうだ。

運転席からの視界。実際の数字以上に狭く見える。左の路肩のラインはほぼボンネット中央だ。
クルマの前から見ると、思いのほか幅にはまだ余裕がある。
森の中に入り壁も迫ってきて視界が狭くなり緊張感が高まる。

プジョー308は1850mmと全幅こそクラス最大ではあるが、オーソドックスな2BOXハッチバックのスタイルはボンネットもよく見えるのでフロントまわりの見切りはとても良かった。車幅感覚も掴みやすく、この道路に突入する時は緊張感があったものの、それほど不安なく走ることができた。

■路肩注意! 崩壊の危険あり?
先ほどはまだ路肩に段差があり、逸脱する可能性はあまり高くない。寄り過ぎればタイヤが路肩に当たったり乗り上げたりするのですぐわかるからだ。
しかし、今度の道は路肩に段差はなく、谷側には申し訳程度に「路肩注意」の細い標柱が並んでいるだけ。おそらく、標柱より向こうまで行かなければ脱輪するようなことはないだろうが、柔らかそうな土と枯れ葉が道路まで広がっているので舗装と未舗装の境界がはっきりとわからない。

谷側は先ほどより傾斜が強く、ガードレールも段差もない。脱輪を避けるためつい左寄りを走ってしまう。
土と落ち葉で舗装の境界がわかりづらく、道幅は実際より狭く感じる。

時間帯の違いもあり鬱蒼とした森林は薄暗く心理的圧迫感は先ほどの道より強い。路肩の状況……特に谷側は先ほどより悪いので、つい道路の左寄りを走ってしまうのだが、幸い308は車両の見切りが良いので左側には寄せやすかった。
ただし、左側が完全な壁ではなく傾斜しており空間に余裕があったからでもある。壁になっていたらミラーの分だけ寄せづらくなるだろう。

■左右に迫る土壁! カーブのある切り通しを抜ける
峠のアペックス(頂点)付近は切り通しになっており、左右に土壁が迫ってくる。幅はますます狭く土で多少傾斜はしていても左右は壁。木漏れ日がちょうど逆光になり眩しく、しかもアペックスでしかもその先がカーブしており視界が悪い。ミラーはあるが、対向車を確認しにくい状況もあり、非常に緊張を強いられる状況だ。

運転席からの視界では、左右はほとんどギリギリに見える。左右が壁になっている圧迫感はかなりのもの。

土壁から崩れ落ちた土と周囲の木々からの落ち葉が道路の両端を埋めており、実際の幅以上に舗装部分は狭くなっている。土や落ち葉のところは多少は踏んでも大丈夫そうだが、それでもあまり余裕はない。
運転席から見た道路幅自体はこれまでとそれほど違いがないように見えるが、外から見ると運転席から見た以上に道路幅(舗装面)には余裕がなかった。
路肩の土を踏んでも脱輪したりミラーが土壁にぶつかることはないが、視界の悪さをあいまってかなり慎重に走らなければならなかった。

路面は土と落ち葉でかなり舗装面が狭くなっており、クルマが踏んで通った跡も見受けられる。その辺りまでは大丈夫だろう。
クルマのウエストライン以上なら多少は余裕があるように見えるが、ドア以下の高さではかなり狭く感じられる。

見切りの良さは◎! 無事走破成功!

今回テストしたのは5km弱。それほど長い道のりではないものの上記の3ヶ所を中心に狭隘区間が続き、ほかにも民家の壁がギリギリまで迫っている場所、左右から草が伸びてきている場所、路肩が蓋のない側溝になっている場所となかなかにチャレンジングな道路だった。
そんな道を実際に走ってみると、初めてのクルマ&初めての道&狭隘路ということで緊張こそ強いられたものの、意外にも「これはヤバイ!」とか「絶対ムリ!」みたいなことはなかった。
というのも、プジョー308は運転席からの見切りがとても良かったのだ。ボンネットがしっかり見えて、車両感覚が掴みやすい。これがボンネットが見えないタイプのクルマだと、たとえプジョー308より小さくても苦労しそうな気がする。

気になる点が全く無いわけでもなかった。
こういう道なのでつづら折れの急カーブもあり、カーブ曲がる際にAピラーが視界の邪魔になることがあった。旋回中の一時的なものとはいえ、この狭い道で蓋のない側溝のある下り急カーブという状況のせいではあるのだが……。

幸いなことに今回走破した際には対向車との離合が発生しなかった。ところどころに離合用の待避帯はあるものの、ほとんどの場所では離合不可能な道幅しかないので、対向車と遭遇する場所によっては延々とバックすることになるかもしれないし、そうでなくとも左右どちらかギリギリまで寄せることになるだろう。
バックモニターはあるし、バック時は上からの視点も表示されるのでバックやバックで左右に寄せる際には非常に助かる。見切りの良さも前方向に寄せる際には強い味方になるはずだ。

プジョー308で狭隘路に突っ込むことを薦めるわけではないが、間違って突っ込んでしまったとか、ルート的に避けられない(例えば山間部のキャンプ場へのアクセス路など)状況になっても、今回くらいの狭隘路であれば慌てずゆっくり走れば問題なく抜けることができるだろう。

あわせて、ドライバーは普段から意識して車両感覚を磨いておけばより安心だ。

プジョー308 Allure Blue HDi
全長×全幅×全高:4420mm×1850mm×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1420kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボディーゼル
排気量:1498cc
ボア×ストローク:75.0mm×84.8 mm
圧縮比:16.4
最高出力:130ps(96kW)/3750pm
最大トルク:300Nm/1750rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:53ℓ
燃費:WLTCモード 21.6km/ℓ
 市街地モード17.1km/ℓ
 郊外モード:21.6km/ℓ
 高速道路:24.4km/ℓ
トランスミッション:8速AT
車両本体価格:344万1000円
試乗車はオプション込み3 48万 105円(フロアマット 2万1890円/ETC 1万7215円)

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著者プロフィール

大橋 俊哉 近影

大橋 俊哉

自動車部でダートラとジムカーナとラリーを少しずつかじった大学卒業後、ゲーム雑誌編集として10年過ごし…