ボク……縛られたいの。本当に素晴らしいから外したくないのだけど。【TOYOTA GR86 長期レポート28_AE86~GR86への道】

さて、コチラが皆さん大絶賛のGR86ノーマルシートだ。
2021年12月に納車され、約9000km乗って改めて素晴らしさを感じるばかりのGR86。素晴らしいところはたくさんあるが、今回のシートはマジで良い。もちろんグレード(RZ)だということもあるが、とにかくフィットして滑らない、最高のシートなのだ! そう……オレを、縛ってくれないということ以外は……。変態味が増してきましたGR86連載、納車から1年の乗って気になる点編・その弐。

TEXT&PHOTOS:加茂 新(KAMO Arata)

調教したいのよ! 自分好みのアクセルレスポンスにさ!【TOYOTA GR86 長期レポート27_AE86~GR86への道】

1年約9000km乗って、あらためて素晴らしさを感じるばかりのGR86。しかーし、もうちょっとカスタムしたいのがアクセルレスポンスである。なにやらGRヤリスではそういう調整ができるようになったらしいジャマイカッ! GR86だって、調教したいデスよ〜ッ(この声、ぜひ届いてください)。というわけで、納車から1年、乗って気になる点編・その壱。 TEXT&PHOTOS:加茂 新(KAMO Arata)

嗚呼、この1ヵ所がぁ~

正直、先代86のシートはイケてなかった。腰高だし、クッションもう~むという感じだった。
いま現在、先代86でノーマルシートを使っている皆さまには非常に申し訳ないが「なんじゃこりゃあ」と思った。そして加茂は、耐えきれず早々に交換した(そのまま使っている皆さまゴメンナサイ)。

ところがGR86のシートは、以前にもお伝えしたがとんでもなく良い!
とくにRZグレードにしたおかげで表皮がバックスキン的な、滑らかでいてツルツルしていない、アノ、アレである。この表皮が絶妙に衣服とグリップして体制を保持しやすいのだ。

高さ的にもイケている。仕事柄チューニングカーしか乗らないためベッタベタに低いシートが当たり前の加茂だが、それでも全然高く感じない。クールだ。

そしてガタがない。純正シートのレールは結構いいかげんな車種もあり、じつは前後にガタガタ動いたりする。そういった細かな部分もよく作り込まれている。
なのになのになのにっ!大問題がひとつある。
それは、サーキット用のフルハーネスが使えないこと(フルハーネスとは、いわゆる4点式シートベルトとか呼ばれるものね)。

皆さん大絶賛のノーマルシート。ヘッドレストと肩の間からフルハーネスの肩ベルトは通せる。腰ベルトもつけられるだろうが、6点式は座面に穴が開いていないので不可。

最近レースの世界では6点式が主流というか、レギュレーションによって6点式「だけ」が使えることになった。
股下の2ヵ所に固定される股ベルトにバックルがついていて、そこに腰ベルト左右と肩ベルト左右を差すのである。
これまでは腰ベルトと肩ベルトだけの4点式がメインだったが、肩ベルトを締め込むと腰ベルトがずり上がる事があり危険という理由から、6点式に移行したのだ。

これは、HANS(ハンス)が義務づけられたことによる影響もある。
HANSとはクラッシュ時に首が伸びすぎて怪我をしないようにする装置で、本体を肩と肩ベルトの間に装着するもの。
HANSからヘルメットに紐を伸ばして固定し、クラッシュしたときにヘルメットが前方へいきすぎないようにすることで顔面をハンドルに打つけるリスクを下げたり、頚椎損傷を防ぐもので、現在日本国内のレースではすべて装着が義務づけとなっている。

このHANSは、肩ベルトがガッチガチに締まっていないとキチンと機能してくれない。
「ガッチガチに肩ベルトを締めるとさぁ、腰ベルトがズリ上がることがあるジャン? あ、じゃさ、じゃさ、6点式にすれば股ベルトがあるからさぁ、腰ベルトが正規の位置にくるんジャン?」というのが6点式ベルト義務化の理由だという。※コメントはイメージです。

ボクを縛ってくれるシートはいづこ……

だのにっ! GR86は肩ベルトのホールがない。ないけども、肩ベルトは装着できなくもなくもない。だが、股ベルトが装着できない。もちろんシートに穴が空いていないのだから装着できるはずもないのだが。

そして購入者の全員が全員HANSを装着するわけではないから、そんなとこに穴が空ける必要もないし、なんなら空いている方が不自然だ(購入者の7割はそもそもHANSの存在を知らないだろう)。
そこで、まぁ、ガタガタ抜かしてないでシートを変えろよ、という話なのだが……正直ちょっとめんどくさい事態になっているのだ。

それは、昨今シートに関する車検のあり方が変わってきている、ということ。
これまでは、同一メーカーのシートとシートレールであれば車検は問題なかったのだが、最近のクルマではそれだけではダメ。そのシートとシートレールがその車種でさまざまな試験に適合している証明書が必要になっているのだ。

これはGRヤリスのシートとハーネス。こんな感じのサベルトの6点式ハーネスもじつは買ってあるのだった。そうだ! GR86にフルハーネスつ~けよっ! ってハイテンションで買ったものの、ノーマルシートではつけられないんだった。すっかり忘れていたよ……。

つまりシート交換する場合、そのシートとシートレールがGR86の強度試験とか、もろもろの試験でパスした証明をしなければならない。そこで必要となるのが[保安基準適合強度証明書]。
これはシートメーカーにお願いすれば入手することができるぞ(方法は郵送・FAXなど。無料/有料アリ)。
ここでの注意点は、いずれの方法にしても車検に行ってからでは遅く、車検の1ヵ月程前にはシートメーカーに申請をしてほしい、とアナウンスされていること。覚えておこう。

もちろん「最近車検をしたがそんなこと言われなかった」という方もいる。どうやら民間車検場やディーラーの検査ラインの検査官までは、まだその保安基準適合強度証明書の確認、という作業が浸透していないようである。「そんなこと言われなかった」方はそういったところで車検をしたのではないだろうか?
少なくとも関東運輸局東京支局や関東運輸局神奈川運輸支局では実際にその指摘をされており、今後徐々に厳しくなっていくと予想される。

で、そうなるとその証明書を先に入手しておけばいい、のだが……。
そもそも、シートメーカーでも保安基準適合強度証明書を順次申請しているところだということで、現在すべてのシートについて保安基準適合強度証明書が出ているわけではないようである。

そうなるとシート選びの選択肢も狭くなってきてしまう。
そんなわけでね、いま加茂は「ムムムゥ~」とアタマを抱えてるのよ……。

GR86 オーナーじゃないとわからない!【一気読み|TOYOTA GR86 長期レポート_AE86~GR86への道】

トヨタとスバルが共同開発したFRスポーツ、86。フルモデルチェンジを受けてGR86となったわけだが、86といえば元祖AE86カローラ・レビン/スプリンター・トレノ。AE86、86KOUKI、そして最新のGR86に乗り換えた86マイスター、加茂新がオーナーだからこそわかるGR86の魅力を長期レポートします。

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著者プロフィール

加茂 新 近影

加茂 新

1983年神奈川生まれ。カメラマンの父が初代ゴルフ、シトロエンBX、ZXなどを乗り継ぐ影響で16歳で中型バイ…