高級SUVの王者レクサスRX TNGA初採用の新型のベストパワートレーンはどれだ?

レクサスRX500h F-SPORT Performance 車両価格:900万円
ラグジュアリークロスオーバーSUVのレクサスRXが全面刷新し、5代目に移行した。RXは1998年にまず北米市場でデビュー。2005年には2代目RXにハイブリッドシステムを搭載したRX400hを設定し、ラグジュアリー市場に初めてHEVモデルを投入した。過去4世代を通じて約95の国と地域で累計約362万台を販売し、レクサスの最量販モデルに成長している。果たして5代目も成功できるか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

大ヒットモデルの後継だが、守りに入らずに開発

新型が5代目となるRX。歴代大ヒットしている。まさにレクサスの屋台骨だ。

レクサスの屋台骨を支えるモデルゆえに、5代目となる新型の開発にあたっては悩みがともなったことは想像に難くない。守りに入りたくなる気持ちもわかるが、攻めの姿勢を貫いた。「新型RXでは守りに入らず、走りとデザインに挑戦しました。これまで好評だった静粛性や乗り心地に加え、対話のできるクルマ、走って楽しいクルマを目指し、基本素性を徹底的に鍛え上げました」と関係者は話す。

RX500h: 2.4L-T HEVを搭載

レクサスRX500h F-SPORT Performance 車両価格:900万円 試乗車はオプション(48万8400円:ルーフレール F SPORT Performance+パノラマルーフ20万9000円/マークレビンソンプレミアムオーディオ27万9400円)付き
WLTCモード燃費:14.4km/ℓ
 市街地モード11.8km/ℓ
 郊外モード14.3km/ℓ
 高速道路モード15.8km/ℓ

新型RXは3種類のパワートレーンを設定。グレード名称がパワートレーンの違いを表している。RX500hは2.4L直列4気筒ターボエンジンを核にしたHEVモデルで、リヤにも高出力のモーターを搭載しているのが特徴。新型クラウン・クロスオーバーに設定される「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム(DBHS)」に近似した構成だが、RXの場合は「2.4L-T HEV」と表現している。後輪操舵(DRS:Dynamic Rear Steering)を搭載しているのもクラウンのDBHSと同じで、RXでは500hのみの専用装備だ。F SPORT Performanceの単一グレード構成とした点が示すように、「走る楽しさを追求したパフォーマンスモデル」の位置づけである。

ボンネットを開けるとT24A-FTS型エンジンが見える。
(ご興味のある方は少ないと思いますが)これがエンジンカバー。
裏側はこうなっている。
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:T24A-FTS
排気量:2393cc
ボア×ストローク:87.5mm×99.5mm
圧縮比:-
最高出力:275ps(202kW)/6000rpm
最大トルク:460Nm/2000-3000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:DI+PFI(D-4ST)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:65ℓ
トランスミッション:6AT+モーター(Direct Shift-6AT)

RX450h+ RX初のプラグインハイブリッド

レクサスRX450h+ Version L 車両価格:871万円 試乗車はオプション(50万9300円:ルーフレール+パノラマルーフ20万9000円/マークレビンソンプレミアムオーディオ27万9400円/寒冷地仕様2万0900円)付き
WLTCモード燃費:18.8km/ℓ
 市街地モード15.6km/ℓ
 郊外モード20.2km/ℓ
 高速道路モード19.6km/ℓ

RX450h+はRX初のプラグインハイブリッド(PHEV)モデルだ。「2.5L PHEV E-Four」と呼ぶシステムで、やはり、クラウン・クロスオーバーに設定のある「2.5Lハイブリッド車」と同じシステム構成。フロントにより強力なモーターを搭載しているのがRX版PHEVの特徴だ。リチウムイオンバッテリーの容量は18.1kWhで、EV走行可能距離は86kmを実現している。

PHEVのエンジンは、2.5L直4のA25-FXS型
エンジンカバーの表側
裏側。シンプルな造りだ。
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:A25-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm
圧縮比:-
最高出力:185ps(136kW)/6000rpm
最大トルク:228Nm/3600-3700rpm
過給機:×
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:55ℓ
トランスミッション:6AT+モーター(Direct Shift-6AT)

RX350 ノンハイブリッドの2.4Lターボ

レクサスRX350 Version L 車両価格:705万円 試乗車はオプション(14万4100円:ムーンルーフ11万円/おくだけ充電1万3200円/寒冷地仕様2万0900円)付き
WLTCモード燃費:11.8km/ℓ
 市街地モード8.3km/ℓ
 郊外モード11.8km/ℓ
 高速道路モード14.5km/ℓ

RX350は電動デバイスを搭載せず、エンジンのみの動力で走る。RX500hから電動デバイスを取り去り、8速ATを組み合わせた構成。2.4L直列4気筒ターボと8速ATを組み合わせたパワートレーンを搭載するモデルは、レクサスを含むトヨタ初である。

RX500hと同じT24A-FTS型を積む(スペックは少し違うが)
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:T24A-FTS
排気量:2393cc
ボア×ストローク:87.5mm×99.5mm
圧縮比:-
最高出力:279ps(205kW)/6000rpm
最大トルク:430Nm/1700-3600rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:DI+PFI(D-4ST)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:67ℓ
トランスミッション:8AT

ベストバイはどれだ?

レクサスRX450h+ Version L 全長×全幅×全高:4890mm×1920mm×1700mm ホイールベース:2850mm ボディカラーはテレーンカーキマイカメタリック 試乗車の車両重量:2200kg 前軸軸重1240kg 後軸軸重 960kg

パフォーマンスを追求したHEVに、クラストップレベルのEV航続距離と力強い加速性能を実現するPHEV、それにトルクフルでダイナミックな走りを提供するガソリン車の3種類のパワートレーンを設定したのは、カーボンニュートラル社会を実現するのにバッテリーEVだけに頼らず、マルチパスを用意することが重要との考えからだ。また、多様なユーザーニーズやライフスタイルに応えながら、CO₂排出量を削減していく狙いのためでもある。

RX500h、RX450h+、RX350の順に試乗した。特定のグレードが図抜けて印象に残り、「おすすめはコレ!」と言えればいいのだが、言えないのが本音だ。それぞれに特徴があり、良さがある。RX500hは「パフォーマンスを追求した」とメーカー側が自負するだけあり、2100kgの車両重量をものともせず、身軽に動く。有り余るパワーで強引に大柄な車体を振り回すのではなく、振る舞いがスマートだ。アクセルペダルを強く踏み込まなくても充分な力を出してくれるので、エンジンの回転を高めなくても思いどおりを維持できるし、発進や追い越しなのでエンジンの回転を高めるような走りをしても騒々しくない。

レクサスRX500h F-SPORT Performanceの脚周り

タイヤは前後ともに235/50R21サイズ
ミシュラン PILOT SPORT⁴ SUV
リヤサスペンションはマルチリンク式。右に見えるのが、リヤモーターが見える。その手前に見えるのが後輪操舵のDRS
フロントはマクファーソンストラット式

レクサスRX450h+ Version Lの脚周り

タイヤは前後ともに235/50R21サイズ
ブリヂストン ALENZA
リヤモーターは4NM型交流同期モーター
フロントサスペンション

レクサスRX350 Version Lの脚周り

タイヤは前後ともに235/50R21サイズ
ブリヂストン ALENZA
RX350はFF仕様も設定。4WDはモーターではなくカップリング式

前述したように、RX500hのみ後輪操舵のDRSを搭載している。開発者によると、クラウンの場合は最小回転半径の短縮に軸足を置いて後輪操舵を開発したという。先代までのクラウンはFRだったため前輪の切れ角は大きかったが、新型はFFベースになり前輪切れ角は小さくなった。そのハンディを補う技術として後輪操舵を採用しつつ、同時に運動性能の底上げも図る格好だ。

いっぽうRXでは運動性能の底上げに軸足を置いて開発に取り組んだそう。といっても程度の問題で、RX500hの最小回転半径はRX450h+やRX350より0.4m小さく、5.5mに収めている。逆相側が最大4度まで切れるのはクラウンと同じ。運転時のフィーリングもクラウンと同じで、RX500hの場合も後輪操舵の作動を意識させないのがいい。意のままに走って気分がいい走りを実現する黒子に徹している。

プラットフォームはやはりクラウンと共通で、GA-Kだ。トヨタの新世代プラットフォームであるTNGAを採用するのは、レクサスRX史上で初となる。RXへの適用にあたっては、リヤ回りを重点的に強化した。マルチリンク式のサスペンション形式に変わりはないが、ボディ骨格やサスペンションメンバー側の着力点を含め剛性を上げている。ナックルは軽量化のためもありアルミ鍛造製にした。

レクサスRX500h F-SPORT Performance ボディカラーはホワイトノーヴァガラスフレーク 試乗車の車両重量:2140kg 前軸軸重1190kg 後軸軸重 950kg

剛性を上げたのはしっかりした乗り心地と操安性確保のためだが、RX500hのようにリヤに高出力・高トルクのモーター(最高出力76kW、最大トルク169Nm)を搭載することも、剛性アップを図った背景にある。大きなトルクを確実に受け止めるためだ。「リヤのしっかり感がないと物足りなく感じるので、そこを重点的に鍛え上げ、しっかりとしたリヤサスペンションを新設しました」と開発に携わった技術者は説明する。

PHEVのRX450h+はモーター駆動ならではの発進のスムーズさと静粛性の高さが魅力だ。当然のことながらバッテリー残量が充分にある間の走りはBEVと同等。スペック上、135km/hまでEV走行が可能だ。大容量のバッテリーを搭載するためシリーズ最重量(2160kg)となるが、重さと重心の低さが、乗り心地面での収まりの良さにつながっているように感じる(減衰がいい)。ラグジュアリー度ではラインアップ中で随一だ。

ベースモデルのRX350でも充分魅力的

レクサスRX350 Version L ボディカラーはソニックイリジウム 試乗車の車両重量:1960kg 前軸軸重1160kg 後軸軸重800kg

最後にRX350に乗ったが、RX500hやRX450h+から価値をそぎ落としたグレードがRX350でないことがよくわかった。位置づけは逆で、RX350をベースに価値を付加していったのがRX450h+であり、RX500hだ。RX350はラグジュアリークロスオーバーSUVとして、充分に魅力的なクルマに仕上がっている。ボディ骨格とサスペンションの着力点剛性を高めたのが効いているのだろう(締結軸力も上げている)。素性を徹底的に鍛え上げたのが効いており、ステアリングを切り込んだ際にクルマが向きを変える動きは応答が良く、かつ穏やか。路面からの入力の受け止め方は上質で、低級な微振動も突き上げるような強いショックもない。

同じレクサスでもNXではなく、RXであることに重きを置くならRX350という選択は充分にアリ。EV航続距離の長さを重要視するならPHEVのRX450h+、パフォーマンスの高さを求めるならRX500hという選択になるだろうか。どのタイプを選んでも走らせて楽しいし、ラグジュアリー。付加される価値が異なるだけだ。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…