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大ヒットモデルの後継だが、守りに入らずに開発
レクサスの屋台骨を支えるモデルゆえに、5代目となる新型の開発にあたっては悩みがともなったことは想像に難くない。守りに入りたくなる気持ちもわかるが、攻めの姿勢を貫いた。「新型RXでは守りに入らず、走りとデザインに挑戦しました。これまで好評だった静粛性や乗り心地に加え、対話のできるクルマ、走って楽しいクルマを目指し、基本素性を徹底的に鍛え上げました」と関係者は話す。
RX500h: 2.4L-T HEVを搭載
WLTCモード燃費:14.4km/ℓ 市街地モード11.8km/ℓ 郊外モード14.3km/ℓ 高速道路モード15.8km/ℓ
新型RXは3種類のパワートレーンを設定。グレード名称がパワートレーンの違いを表している。RX500hは2.4L直列4気筒ターボエンジンを核にしたHEVモデルで、リヤにも高出力のモーターを搭載しているのが特徴。新型クラウン・クロスオーバーに設定される「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム(DBHS)」に近似した構成だが、RXの場合は「2.4L-T HEV」と表現している。後輪操舵(DRS:Dynamic Rear Steering)を搭載しているのもクラウンのDBHSと同じで、RXでは500hのみの専用装備だ。F SPORT Performanceの単一グレード構成とした点が示すように、「走る楽しさを追求したパフォーマンスモデル」の位置づけである。
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:T24A-FTS 排気量:2393cc ボア×ストローク:87.5mm×99.5mm 圧縮比:- 最高出力:275ps(202kW)/6000rpm 最大トルク:460Nm/2000-3000rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:DI+PFI(D-4ST) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:65ℓ トランスミッション:6AT+モーター(Direct Shift-6AT)
RX450h+ RX初のプラグインハイブリッド
WLTCモード燃費:18.8km/ℓ 市街地モード15.6km/ℓ 郊外モード20.2km/ℓ 高速道路モード19.6km/ℓ
RX450h+はRX初のプラグインハイブリッド(PHEV)モデルだ。「2.5L PHEV E-Four」と呼ぶシステムで、やはり、クラウン・クロスオーバーに設定のある「2.5Lハイブリッド車」と同じシステム構成。フロントにより強力なモーターを搭載しているのがRX版PHEVの特徴だ。リチウムイオンバッテリーの容量は18.1kWhで、EV走行可能距離は86kmを実現している。
エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:A25-FXS 排気量:2487cc ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm 圧縮比:- 最高出力:185ps(136kW)/6000rpm 最大トルク:228Nm/3600-3700rpm 過給機:× 燃料供給:DI+PFI(D-4S) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:55ℓ トランスミッション:6AT+モーター(Direct Shift-6AT)
RX350 ノンハイブリッドの2.4Lターボ
WLTCモード燃費:11.8km/ℓ 市街地モード8.3km/ℓ 郊外モード11.8km/ℓ 高速道路モード14.5km/ℓ
RX350は電動デバイスを搭載せず、エンジンのみの動力で走る。RX500hから電動デバイスを取り去り、8速ATを組み合わせた構成。2.4L直列4気筒ターボと8速ATを組み合わせたパワートレーンを搭載するモデルは、レクサスを含むトヨタ初である。
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:T24A-FTS 排気量:2393cc ボア×ストローク:87.5mm×99.5mm 圧縮比:- 最高出力:279ps(205kW)/6000rpm 最大トルク:430Nm/1700-3600rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:DI+PFI(D-4ST) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:67ℓ トランスミッション:8AT
ベストバイはどれだ?
パフォーマンスを追求したHEVに、クラストップレベルのEV航続距離と力強い加速性能を実現するPHEV、それにトルクフルでダイナミックな走りを提供するガソリン車の3種類のパワートレーンを設定したのは、カーボンニュートラル社会を実現するのにバッテリーEVだけに頼らず、マルチパスを用意することが重要との考えからだ。また、多様なユーザーニーズやライフスタイルに応えながら、CO₂排出量を削減していく狙いのためでもある。
RX500h、RX450h+、RX350の順に試乗した。特定のグレードが図抜けて印象に残り、「おすすめはコレ!」と言えればいいのだが、言えないのが本音だ。それぞれに特徴があり、良さがある。RX500hは「パフォーマンスを追求した」とメーカー側が自負するだけあり、2100kgの車両重量をものともせず、身軽に動く。有り余るパワーで強引に大柄な車体を振り回すのではなく、振る舞いがスマートだ。アクセルペダルを強く踏み込まなくても充分な力を出してくれるので、エンジンの回転を高めなくても思いどおりを維持できるし、発進や追い越しなのでエンジンの回転を高めるような走りをしても騒々しくない。
レクサスRX500h F-SPORT Performanceの脚周り
レクサスRX450h+ Version Lの脚周り
レクサスRX350 Version Lの脚周り
前述したように、RX500hのみ後輪操舵のDRSを搭載している。開発者によると、クラウンの場合は最小回転半径の短縮に軸足を置いて後輪操舵を開発したという。先代までのクラウンはFRだったため前輪の切れ角は大きかったが、新型はFFベースになり前輪切れ角は小さくなった。そのハンディを補う技術として後輪操舵を採用しつつ、同時に運動性能の底上げも図る格好だ。
いっぽうRXでは運動性能の底上げに軸足を置いて開発に取り組んだそう。といっても程度の問題で、RX500hの最小回転半径はRX450h+やRX350より0.4m小さく、5.5mに収めている。逆相側が最大4度まで切れるのはクラウンと同じ。運転時のフィーリングもクラウンと同じで、RX500hの場合も後輪操舵の作動を意識させないのがいい。意のままに走って気分がいい走りを実現する黒子に徹している。
プラットフォームはやはりクラウンと共通で、GA-Kだ。トヨタの新世代プラットフォームであるTNGAを採用するのは、レクサスRX史上で初となる。RXへの適用にあたっては、リヤ回りを重点的に強化した。マルチリンク式のサスペンション形式に変わりはないが、ボディ骨格やサスペンションメンバー側の着力点を含め剛性を上げている。ナックルは軽量化のためもありアルミ鍛造製にした。
剛性を上げたのはしっかりした乗り心地と操安性確保のためだが、RX500hのようにリヤに高出力・高トルクのモーター(最高出力76kW、最大トルク169Nm)を搭載することも、剛性アップを図った背景にある。大きなトルクを確実に受け止めるためだ。「リヤのしっかり感がないと物足りなく感じるので、そこを重点的に鍛え上げ、しっかりとしたリヤサスペンションを新設しました」と開発に携わった技術者は説明する。
PHEVのRX450h+はモーター駆動ならではの発進のスムーズさと静粛性の高さが魅力だ。当然のことながらバッテリー残量が充分にある間の走りはBEVと同等。スペック上、135km/hまでEV走行が可能だ。大容量のバッテリーを搭載するためシリーズ最重量(2160kg)となるが、重さと重心の低さが、乗り心地面での収まりの良さにつながっているように感じる(減衰がいい)。ラグジュアリー度ではラインアップ中で随一だ。
ベースモデルのRX350でも充分魅力的
最後にRX350に乗ったが、RX500hやRX450h+から価値をそぎ落としたグレードがRX350でないことがよくわかった。位置づけは逆で、RX350をベースに価値を付加していったのがRX450h+であり、RX500hだ。RX350はラグジュアリークロスオーバーSUVとして、充分に魅力的なクルマに仕上がっている。ボディ骨格とサスペンションの着力点剛性を高めたのが効いているのだろう(締結軸力も上げている)。素性を徹底的に鍛え上げたのが効いており、ステアリングを切り込んだ際にクルマが向きを変える動きは応答が良く、かつ穏やか。路面からの入力の受け止め方は上質で、低級な微振動も突き上げるような強いショックもない。
同じレクサスでもNXではなく、RXであることに重きを置くならRX350という選択は充分にアリ。EV航続距離の長さを重要視するならPHEVのRX450h+、パフォーマンスの高さを求めるならRX500hという選択になるだろうか。どのタイプを選んでも走らせて楽しいし、ラグジュアリー。付加される価値が異なるだけだ。