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スズキのハスラーはワゴンRと共通のプラットフォームを用いつつ軽ワゴンタイプの乗用車とSUVを融合させた、新しいジャンルの新型軽自動車として2013年12月24日に発表され、翌2014年1月8日に発売されました(以後、ここでは2019年12月24日に発表されてバトンタッチされた現行モデルを「2代目」、それ以前の旧型を「初代」と称します)。「アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」をコンセプトに、軽ワゴンと同等の広い室内空間とワンランク上のラフロード走破性を両立するべく開発されており、個性的なSUVテイストのデザインと豊富な車体色、普段の街乗りからアウトドアまで使い勝手に優れた機能・装備を特長としています。初代ハスラーは人気のキャンプ漫画あるいはそのアニメーション作品などに登場したこともあってか、現在でも中古車市場で高い人気を誇っています。
さて、現在のところスズキ・ハスラーのプラモデルはフジミ模型(以下、フジミ)の1/24スケールのものとアオシマ文化教材社(以下、アオシマ)の1/32スケールのものが発売されており、実車の人気の高さをうかがわせます。なお、プラモデル化されているのは、いずれも初代ハスラーの前期型になります。アオシマの製品は前回のトヨタC-HRと同じシリーズですので、今回は少し大きな1/24スケールのフジミ模型の方を選んでみました。
実車の1/24という大きさはカープラのスケール(縮尺)としてたいへんオーソドックスで、国内外の様々なメーカーから同スケールのものが発売されており、最多アイテム数を誇ります。それこそ軽自動車からトラック、スーパーカー、F1マシンに至るまで用意されていますから、色々と並べて実車のサイズを比較して実感したりするには格好のサイズと言えます。また、フィギュアや小物アクセサリー、カスタム・パーツやホイールなども数多く販売されていますから、自分だけのカスタムを楽しむにもうってつけです。
さて、フジミの1/24初代ハスラーのプラモデルですが、前回のアオシマのプラモデルと同様に「接着不要、塗装不要」をうたっており、組み立ててシールを貼るだけです。この初代ハスラーは「次世代のプラモデルのあり方」を模索し「組み立てるだけで満足感ある仕上がり」を目指したフジミの意欲的な『NEXT(ネクスト)』シリーズに属する『車NEXT』シリーズの1台で、この『NEXT』シリーズは戦艦「大和」などの軍艦を扱う『艦NEXT』シリーズからスタートしました。
2022年末現在、『車NEXT』シリーズにはこの初代ハスラーのほか、トヨタ・ヴェルファイア、トヨタ・アルファード、トヨタ・FJクルーザーがあります。面白いのは初代ハスラーのバリエーションとしてOEM車のマツダ・フレアクロスオーバーのキットも用意されていることでしょう。尚、フジミには組み立てには接着は必要だが塗装は不要という『カーモデルEASY』シリーズもありましたが、こちらは現在は休止中のようです。
なお、今回製作したカープラの商品名は『スズキ ハスラー』となっているだけですが、メーカーの説明ではこの「パッションオレンジ」と「サマーブルーメタリック」および「ピュアホワイトパール」は「XグレードのCVT、FF・2WD」だそうです。「G/フェニックスレッドパール」および「G/アクティブイエロー」は「GグレードのCVT、FF・2WD」で、Gグレード用スチールホイール、バイザー、室内フロント部単眼カメラの部品が追加されています。
箱の中身を見てみよう
軽自動車の模型でありながら、さまざまな色で成形された部品がビッシリと詰まっている。初見では完成できるか不安になるが、説明書通りに進めれば初心者でも大丈夫。
今回使用する工具は前回も使用した部品を切り出すニッパー、シール貼りに使用するピンセットとつまようじに加え、ニッパーの切り跡の処理やシールの切り出しなどに使用するカッターナイフ、部品の合わせの調整に使用する精密棒ヤスリ(ダイヤモンドヤスリ)のセットがあると良い。いずれも100均で購入したもの。この他にシールを切り出すためカッティングマットとアルミ定規も用意しておきたい。これらも100均で購入可能だ。
〇このプラモデルの感心した点
7色(オプション含めると8色)もの成形色の部品を使って無塗装モデリングを成立させているのは驚異的。外装まわりの部品の光沢も素晴らしい。
サイドウィンドウおよびリヤウィンドウの部品はクリアーとスモークブラックの2種類が用意されており、どちらか選べるようになっているサービスはうれしい。
△このプラモデルでちょっと不満な点
再現度と精密感がアップするということは、必然的に小さい部品や細い部品が増えるということ。つまり製作途中の部品紛失や破損の可能性が高まるので、製作には十分に注意したい。
シートまわりの車体色のパイピングは自分でカッターを使ってシールを細いテープ状に切り出し、現物合わせで貼る必要がある。正直、これは意外とやっかい。この作業が最も難しいかも知れない。
それでは初代ハスラーのプラモデルを作ってみよう!
接着不要・塗装不要とは言うものの、今回の初代ハスラーのプラモデルは前回作ったアオシマの1/32トヨタC-HRよりもサイズが大きくなったぶん模型としての再現性や精密度がアップしているため、より細かな部品やシールが増えており、作業の手間も確実にアップしています。
組み立てそのものは1/100や1/60サイズのロボット・プラモデルを作ったことのある方なら難しくないと思います。ただし部品のハメ込みのボス(主に樹脂製品で他部品を締結する際に使用される面状に隆起した凸形状の結合部分。本来の意味と違うが「ダボ」「ピン」「軸」と言う場合もある)とボス穴があまりにカッチリとし過ぎてキツい部分が見られますから、ハメ込む前にボス穴を棒ヤスリで軽く2〜3回転さらっておくか、ボスをカゥターで軽く削いで「遊び」を作っておくといいでしょう。
ハメ合わせ(勘合)がキツ過ぎるとボスがボス穴の途中で止まって動かなくなり、キッチリとハメ込むことが出来なくなって泣くことになります。実は筆者も一か所失敗してボスを折ってしまいました。また、ハメ込む時の部品の角度にも気を付けないと、力をかけ過ぎてしまいボスや部品そのものを折ってしまうことがあります。力まず気長に確実に作業しましょう。焦りは禁物です。
このカープラの難所は、やはり前回の1/32C-HR同様にシール貼りです。今回は最初に一気に貼るのではなく、製作の都度都度でシール貼りをして行くことになりますから、各工程で貼り忘れがないか慎重にチェックしながら進めましょう。特に内装のシートまわりのパイピングが難所です。ここは自分でシールを細長いテープ状に切り出して貼らないとなりませんので恐ろしく面倒です。サイドウィンドウとリヤウィンドウはクリヤーとブラックスモークの部品が用意されていますから、前席のシートバックだけに貼り、ブラックスモークの部品を使ってごまかしてしまうのも手かも知れません。
もう一つの難所はサイドウィンドウの窓枠とピラー部分のシール貼りで、ここは組み立て説明書を見てもわかり難い部分があります。たとえばシール3および20はサイドの三角窓の後方の窓枠に貼りますが、この指示がわかり難かったりします。
かなり苦戦する部分もありますが、完成すると初代ハスラーの魅力を余すところなく伝えてくれる模型となります。日本のプラモデルの技術的進化の到達点の一つとしても面白いので、機会があればぜひ作ってみていただきたい一作です。
工作の流れ
まずは下回りの工作からスタート。フロントとリヤのサスペンションはまさに実車の1/24縮小版という感じ。リヤサスは9パーツで構成される細かさ。
フロントは実車の構造とは微妙に違うが、樹脂のテンションなどを上手く利用してステアが切れる工夫がされているのに感動する。しばし見入ってしまった。
エキゾーストパイプの部品を見ると、きちんとセンサーまでモールドされているのに驚かされる。
完成した下回り。FF・2WDのCVT仕様で模型化されていることがわかる。こうやって下回りを俯瞰することは実車ではまず不可能。手に取れる模型ならではの醍醐味だ。
インテリアはバスタブ型の部品にペダルやインパネ、フロントとリヤのシートバックなどを組み付けていくオーソドックスな構成。細切りにしたシールを使用するシートのパイピングは老眼には厳しい作業だったため、ほぼ半日費やした。
インテリアと下まわりを合体させてシャシー側は完成。ホイールは上品なつや消し処理のメッキ、タイヤはゴム製で別体部品。
サスペンションに続き、このプラモデルで驚いたのはベース、レンズ、ベゼルの3パーツから成るヘッドライト部分。かなりリアリティが高い。
シャシー部分とボディを合体させたらウィンドウや外装パーツを組み付けていく。もちろん実車とは違うのだが、それを承知していてもなお、実車を組み立てているような気分になる。完成までもう少し。
完成したプラモデルをフロントから見る。いくつもの成形色の部品がまるでパスルのように組み合わさって生み出される、実車同様に色分けされたボディの設計の妙には舌を巻く。
完成したプラモデルをリヤ側から。リヤ側のシールの貼付位置については組み立て説明書で何ら解説されていないので、組み立て時の参考にしていただければ幸い。
(初出:2020年5月7日/改題・改稿)