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今年のクルマは、タイプRでもZでもなく、アトレー!
今年の下半期は、シビックタイプRやフェアレディZなど、数年後に振り返れば時代の転換点だったと感じられそうなクルマが発売されているが、残念ながら、いずれにも試乗できていない。ということで、今年、実際に公道で試乗した中から印象的だったクルマを選ぶとすると、ダイハツ・アトレーだろうか。
大きな理由は、新開発された縦置きエンジン用のCVT。試乗したのも、このCVTの取材の予習が目的だった。アトレーは商用バンのハイゼットカーゴがベースなので、エンジン縦置きのキャブオーバー(傾斜搭載したエンジンの上に、前2席を載せた)レイアウトになっている!
軽乗用車のほとんどがエンジン横置きになる中、商用バンとトラック専用に、縦置きのトランスミッションが必要になるわけだ。日本市場限定で販売台数がそれほど多くないのに加え、利益率の低い軽自動車の中でも、さらに低い軽商用車用に、よくぞまったく新しいCVTを開発したものだと思う。
技術の詳細は「モーターファンイラストレイテッド(MFI)誌」186号を参照いただくとして、遊星歯車式ATでは、どう作ってもトップギヤでの一次振動共振が出てしまい、ロックアップできずに燃費が伸ばせないことと、変速ショックのないCVTなら荷崩れのリスクも小さくなるというのが主な理由だ。
実際、変速応答は滑らかなのだが、何より感心したのが、騒音の小ささ。金属ベルト式CVTにありがちな高周波音が、ほとんど聞こえない。クルマが重いし空気抵抗も大きいので、高速道路でもそれほど低回転で走るという感じではないものの(100km/hで3200rpmぐらい)、従来の4ATに比べれば低い回転数で静かに走れるし、上り坂で踏み増ししてダウンシフトしても、ショックが出ないのがまた良い(その分、多少のラバーバンド感はある)。
4WDシステムは電子制御カップリング式でロックモード付き
もうひとつ驚いたのが、乗り心地の良さだ。商用バンは積載時を考えてリヤサスのスプリングを硬めに設定するのが常だし、タイヤの空気圧も前280kPa/後350kPaと極端に高い。乗り心地が良くなる要素は皆無といえる。ところが、僕が乗り心地評価に使っている極悪舗装路面を走っても、速度を落とすことなく助手席と会話できるのだ。
このコースは、荒れた舗装がまだらに補修され、それも剥がれてポットホール状になった箇所が連続するため、乗用車でも下手なクルマでは突き上げが強く、縦Gで息が詰まったり、会話していると舌を噛みそうになることがあるのだが、ハイゼットカーゴはそういうレベルにはならない。これなら林道でも不快感なく走れそうだから、車中泊仕様に仕立てて、渓流釣りや沢登りに使うのも楽しいかもしれない。
なにしろ4WDシステムが電子制御カップリング式で、ロックモードも付いている。だからパートタイム式並みの走破性を持ちながら、タイトコーナーブレーキング現象も気にしないで済む。
4ナンバー車なので、リヤシートの背もたれは垂直に近く、3名以上で使うのは無理があるし、運転席は身長181cmの僕には少々窮屈だが、平均的な体格の人が1〜2名で趣味専用車として使うなら、良い選択肢になると思う。
ダイハツ アトレー RS(4WD) 全長×全幅×全高 3395mm×1475mm×1890mm ホイールベース 2450mm 最小回転半径 4.2m 車両重量 1020kg 駆動方式 四輪駆動 サスペンション F:マクファーソン・ストラット式 R:トレーリングリンク車軸式 タイヤ 145/80R12 エンジン 水冷直列3気筒DOHCターボ 総排気量 658cc 最高出力 47kW(64ps)/5700rpm 最大トルク 91Nm(9.3kgm)/2800rpm 燃費消費率(WLTC) 14.7km/l 価格 1,826,000円