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ほんの10年前のSUV比率はこの程度だった
各自動車メーカーは、年明けにアメリカでの販売実績を発表する。このデータをもとにグラフ化してみた。テーマは「SUV依存度」である。
中国市場が成長しても、依然として北米市場は世界中の自動車メーカーにとって最重要であることは変わっていない。ここでいかに勝ち抜くか。そのためには人気モデルを投入しなくては。ということで、北米市場の動向を見ればある程度、今後の自動車の流れが見てくるはずだ。
SUV依存度と書いたが、「適正なSUV比率」が存在するわけではない。現在の消費者の心をSUV/クロスオーバーが捉えているのは間違いないから、必然的にSUV比率が高くなるのはわかる。
とはいえ、人の心は移ろいやすい。自動車開発には短くて4年間は時間がかかる。いま仕込み始めたらそれが世に出るのは2020年代も後半になっている。そのとき、まだSUV/クロスオーバーが人気を維持しているか。
今回は北米市場のデータを使う。各社はラインアップのモデルを「CARS・PASSENGER CARS」と「TRUCKS・LIGHT TRUCKS」と分けて表記することが多い。TRUCKとあっても、昔のようにトラックベースのSUVばかりではないけれど、トヨタや日産などのように、ピックアップトラックを持っているメーカーもある。ここは、背が高いクルマとそうでないクルマと大別した、と考えていただきたい。
2022年のデータにいくまでに、少し前はどうだったかを見てみよう。
2012年の北米トヨタのSUV依存度:42.4%
10年前の2012年、トヨタの北米年間販売台数は208万2504台。2022年(210万8458台)とほぼ同じだ。この年、トヨタの北米販売(レクサスを含む)でもっとも売れたモデルはカムリの40万4885台。カローラは29万台、プリウスが23.7万台も売れている。SUVではRAV4が17.2万台を売り上げていた。
この年の北米でのトヨタのSUV比率は42.4%だった。
2014年の北米マツダのSUV依存度:38.5%
その2年後、マツダの北米年間販売台数は、30万5801台。2022年が29万4908台だったから、こちらもほぼ同じと考えていい。2014年もっとも売れたマツダ車はMAZDA3(日本名アクセラ)で10万4985台だった。この年のCX-5は9万9122台。SUV比率は38.5%だった。
2022年 SUV比率はどうなったか?
グラフは青がSUV、緑が非SUVである。BMWとスバルは意外なことにSUV比率がさほど高くない。スバルはアセント、フェレスター、クロストレックと人気のSUVを3モデル持っているが、それ以外にアウトバックがあるのが大きい。
アウディ、日産、ホンダの3メーカーは、およそ「3台に2台がSUV」。このあたりが平均値と言えそうだ。トヨタの76.0%はそれに比べると高いが、これはトヨタのSUVラインアップが強すぎるから、と見た方がよさそうだ。RAV4、HIGHLANDER(ハイランダー)、4RUNNER(フォーランナー)、カローラクロス、レクサスRXといった、いわゆるSUVのほかに、TACOMA(タコマ 23.7万台)、TUNDRA(タンドラ 10.4万台)という大人気ピックアップ系があるからだ。
と見てみてきたが、マツダの88.4%というSUV比率はやはり高い。ここまでいくと、「SUV依存」と言われても仕方がないレベルだ。マツダの北米ラインアップで、いわゆる「CARS」に当たるのは、MAZDA3、MAZDA6、MX-5Miata(ロードスター)しかない。2023年以降も予定されているのは、CX-70、CX-90といったラージSUV。しばらくSUV依存度は下がりそうもない。
マツダに限らず、どのメーカーも、「ポストSUV」を考える時期に来ている……としても、「SUV比率」よりも「電動化比率」について考えなければならない事情があるのだろう。
そろそろカッコよくて走りも良くて背か高くないクルマの登場を待っている人が選べるクルマが登場してほしい。