いいじゃないかホンダZR-V!シビックで物足りないと感じたものが全部揃っている

ホンダZR-V e:HEV Z AWD 車両価格:411万9500円
ホンダがCR-Vに代えて日本市場に投入した新型SUV、ZR-V。ヴェゼルの兄貴分でベースはシビックである。競争激しいこのカテゴリーでZR-Vは、どう戦っていくか? まずは、見て、乗ってみることにしよう。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

「いいじゃないか、このクルマ」

ホンダZR-V e:HEV Z AWD ボディカラーはプレミアムグレー・メタリック

ホンダZR-Vを最初にパソコンの画面で見て、「大丈夫かよ、ホンダ」と頼まれもしないのに売れ行きを心配した筆者は見る目がない。思い起こせばヴェゼルでも同じような感想を抱いた。そしてヴェゼルのときと同じように、実車を見て180度印象を改めた。「いいじゃないか、このクルマ」と。いい気なものである。

実物のZR-Vからは質の高さが伝わってくる。写真で見るとクセの強いフロントマスクが印象を引っ張るが、実物を目にすると実車のボリュームから受ける印象のほうが支配的で、マスクはクセの強さよりも個性に感じられる。クルマ全体としては、適度な緊張感があり、艶っぽく、力強い。

ZR-V e:HEV Z(FF)車両価格:389万9500円 ミッドナイトブルービーム・メタリック

じつは公道で試乗機会を得る前に、Hondaウエルカムプラザ青山の展示車両に張り付いて眺め回した。ドアを開けて室内を覗き込んだ瞬間(後席も含め、ドアの閉まり音がいい)、「いいじゃないかZR-V」の印象が増した。運転席に腰を下ろすともっとよくわかるのだが、パッケージングも室内のつくりも、もっと言うとパワートレーンやサスペンションなど、ハードウェアの基本はシビックと共用またはその派生だ。

ZR-Vは意図して「セダンライクな乗車姿勢」としたため、上体を起こし気味にして低めにあるステアリングを抱え込むような姿勢で座るのではなく、セダンに近い、脚を投げ出すような姿勢で座るよう設計されている。背の高いセダンに座るような感覚だが、SUVらしい見晴らしの良さは担保されている。

室内長×幅×高:1930mm×1530mm×1195mm
インテリアの質感は高い。

切り立った(寝ていない)Aピラーが手前にあるおかげで、フロントウインドウ越しの景色が左右に開けていて見晴らしがいい(そして、気分もいい)。この点はシビックと共通。水平基調のシンプルなインパネと質感の高いソフトパッド、それにエアコンのルーバーを隠すパンチングメタル、センターに大きなエアコン操作のダイヤルスイッチが並ぶ景色もシビックと同様だ。すっきりしていて、上質である。

身長183cmのドライバーが前席でポジションをとっても、膝元には余裕があった。

ZR-Vは上下方向に余裕のある空間を生かし、センターコンソールを高い位置に設定。コンソールの下にトレーを設けることで、使い勝手が増している。シビックとの対比で「これはいい」と感じたのは、ステアリングヒーターの設定があること(上級のZに標準)。4WD仕様には前席だけでなく後席左右にもシートヒーターの設定がある(上級のZに標準)。

後席にUSBジャック(2口)があるのもシビックとの大きな違いで、「いいじゃないかZR-V」と感心した点だ。室内照明がすべてLEDに統一されている点にも好感を抱いた。ルームランプはレンズ付近に触れるだけで点灯する静電タッチ式で、見た目も使用感もモダンである。しかし自己分析するに、「いいじゃないかZR-V」と感じたもっとも大きな要因は、上質で気品のあるレザーシートだった(上級のZに標準、Xはプライムスムースとファブリックのコンビ)。インパネやセンターコンソール、センターやドアのアームレストとコーディネートしたオレンジステッチがアクセントとして効いているし、質感が高く、カッコイイ。

シビックにはなくてZR-Vにはあるもの=AWD

エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:LFC 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.9 最高出力:141ps(104kW)/6000rpm 最大トルク:182Nm/4500rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:40ℓ

パワートレーンは1.5L直列4気筒ターボ+CVTと、エンジン直結モードを持つシリーズパラレルハイブリッドのe:HEVの2種類を設定する。シビックにはタイプRの設定があるが、タイプRを特別枠だとすれば、シビックと同じラインアップだ。ウエルカムプラザ青山のあるホンダの本社(東京都港区南青山)を起点に、e:HEV Z FFとe:HEV Z AWDをそれぞれ1時間とちょっと(それぞれ約30km)ドライブした。

ZR-Vにはシビックには設定がないAWDがある。方式は最近流行の電動4WDではなく、プロペラシャフトで後輪に駆動力を送るコンベンショナルなシステムだ。

シビックにはなくてZR-Vにはある大きな魅力は、AWDの設定があることだ。AWD好きの筆者にとって「いいじゃないかZR-V」と感じる最大の要因である。ZR-Vが搭載するのはリアルタイムAWDと呼ぶシステムで、電子制御カップリングに分類されるユニットを用いる。走行状況に応じて油圧クラッチの押し付け力をコントロールすることにより、前後の駆動力を適切に配分する。

ホンダのAWDは、雪道など、すべりやすい路面での発進性や走破性を確保するだけでなく、乾燥した舗装路でも恩恵が感じられる狙いで開発されている。「四輪のタイヤ摩擦円を最大限に活用して駆動力を発揮させるのが、ホンダのAWDの目的」であり、そのためにフロントだけでなくリヤにも駆動力を伝えて「タイヤの負荷を均衡化すること」により、ドライバーの操作に対する動きの精度が上がり、安心・安全な走りにつながる、というわけだ。グリップ力の限界が低くなる濡れた路面や雪上では、タイヤの負荷を均衡化するAWDの効果が発揮されやすい。

スリッパリーな路面でなくても後輪にトルクを送るのがホンダ流。こちらはノーマルモード
シビックにはないSNOWモードが追加されている。

ZR-Vには、シビックe:HEVに設定のあるNORMAL、SPORT、ECOに、SNOWモードが追加されている。発進・加速時はホイールスピンを誘発しないような穏やかな加速になるよう制御。アクセルオフ時は回生ブレーキ(ガソリン車はCVTの変速制御)により、NORMALモードよりも強めの減速G(ガソリン車はSレンジと同じ減速度)が出る制御としている。

ヴェゼルと同じでZR-Vも、AWDを選択したからといって専用のバッジは付かない。外観の違いでFFかAWDかを識別するのは困難だ。だが、下回りを覗き込むと、ひと目でわかる。リヤまで伸びるプロペラシャフトや銀色に光るカップリングユニット、それにドライブシャフトが見えるので当然だが、リヤサスペンションを構成するパーツの一部材質が異なる点でも違いは明白だ。

AWDモデルのリヤサスペンション。ロワーリンクはアルミ合金製。
こちらはFFモデルのリヤサスペンション。スチール製である。

マルチリンク式のリヤサスペンションのうち(フロントはマクファーソンストラット式)、コイルスプリングが載るロワーリンクがアルミ合金製だ。FFはスチールである。アンチロールバー(スタビライザー)のレイアウトもFFとAWDでは異なっている。AWDのリヤサスペンションを構成するリンク類のレイアウトや形状、材質はZR-Vのひとクラス上にあたるCR-Vによく似ている。

AWDのロワーリンクをアルミにしたのは、ばね下重量の軽減が目的だそう。AWDはリヤのドライブシャフトがあるぶん、ばね下重量が増えてしまうからだ。また、アンチロールバーのレイアウトが異なるのはリヤデフがあるためで、レイアウト上の都合である(効率はFFのほうが高いという)。

ZR-VにリアルタイムAWDを適用するにあたっては、前後駆動力配分を見直し、四輪のタイヤ利用率を最適化。旋回加速時は、とくに車速が高い領域でのリヤトルクを高めている。今回のドライブでは明確な違いは感じ取れなかったが(首都高速もずっと渋滞だったし)、路面状況を問わずコーナリングが楽しいAWDに仕上がっているはずだ。

ZR-Vはハードウェア的に言うと背を高くしたシビックだが、ユーティリティは高く、一段と上質で、見た目も装備もモダン。背が高いからといって、あからさまにSUVに寄せてはおらず、セダンのスピリットを受け継いでいるのが特徴。なにより、シビックには設定のないAWDを選択できるのが魅力だ。あれ? シビックに相対した際、何か物足りないと感じたものがZR-Vには全部揃っている?

FFモデルのモード燃費はWLTCモード燃費:22.0km/ℓ 市街地モード 19.4km/ℓ 郊外モード 24.7km/ℓ 高速道路モード 21.7km/ℓ
ホンダZR-V e:HEV Z AWD
全長×全幅×全高:4570mm×1840mm×1620mm
ホイールベース:2655mm
車重:1630kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R マルチリンク式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LFC
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
最高出力:141ps(104kW)/6000rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:40ℓ

モーター
H4型交流同期モーター
最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000rpm

WLTCモード燃費:21.5km/ℓ
 市街地モード 19.5km/ℓ
 郊外モード 23.9km/ℓ
 高速道路モード 21.1km/ℓ

車両価格:411万9500円
ディーラーop ドライブレコーダー/フロアカーペット

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…