VW ティグアンに待望の四駆モデル「4MOTION」が追加!スムーズで扱いやすくで包容力のある走り【フォルクスワーゲン・ティグアン TSI 4MOTION試乗記】

フォルクスワーゲンSUV、“T”シリーズ三兄弟の長男であるティグアンに四輪駆動モデル“4MOTION”が追加された。これでティグアンは、ベーシックな「1.5L TSI」、新規追加の「2.0L TSI 4MOTION」、ハイパフォーマンスの「R」と、バランス良く3タイプが揃うことになった。さっそく4MOTIONの印象を報告しよう。
REPORT:山田弘樹 PHOTO:中野幸次

常用域ですこぶる扱いやすい2.0リッターターボ

全長4515mm×全幅1860mm×全高1675mm。背が高めでボクシー、SUVらしい力強さや安心感も感じさせるスタイリングだ。

トゥアレグなきいま日本市場では最も大きなフォルクスワーゲンのSUVとなるティグアン。そのラインナップに昨年9月、待望の「TSI 4MOTION」が加わった。

搭載されるパワーユニットは2リッターの直列4気筒ガソリンターボ(190PS/320Nm)で、駆動方式は4MOTION(前輪駆動をベースとしたフルタイム4WD)のみ。シリーズの位置づけとしては前輪駆動のベーシックモデル「1.5 TSI」と、ハイエンドな「ティグアンR」の間を埋める存在となる。

従来グレードのTSIは1.5Lだが、2.0Lに排気量アップして4WD化したのが「TSI 4MOTION」。190ps、320Nmとスペックにも余裕がある。

そのグレード構成は、1.5TSIと同じく全部で3種類。

最もベーシックなモデルを「アクティブ」、LEDマトリクスヘッドライト“IQ.LIGHT”や純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”、“Digital Cockpit Pro”メーターシステムといった先進装備が標準搭載されるモデルを「アドバンス」、上級モデルを「R-Line」と設定している。今回試乗できたのは「R-Line」だ。

さっそく2.0TSIユニットとティグアンの組み合わせを一般道とワインディングにおいて試してみたわけだが、その出来映えからは、フォルクスワーゲンが目前に迫りつつある電動化社会への違和感のないシフトを意識していると感じ取れた。

TSI 4MOTIONの標準サイズは255/45R19。試乗車はDCCパッケージ装着車のため255/40R20サイズを履く。タイヤ銘柄は、コンチネンタルのスポーツコンタクト5だ。

その印象を決定付けたのは、市街地におけるターボエンジンのスムーズな走りだ。

要となるのはトルキーなエンジンの出力特性で、これが7速DSGの細かなステップ比と連携することで、想像以上に快適な運転を可能にする。

このエンジンは、320Nmの最大トルクを1500~4100rpmという広範囲に渡って発揮する。もちろん常にその最大トルクを引き出しながら走るわけではないのだが、そこに至るまでの過給圧制御がとても滑らかだから、常用域ですこぶる扱いやすいのだ。もしこれがディーゼルターボだと言われたら、素直に信じてしまうドライバーも少なからずいると思う。

最新EVのID.4などと比べると極めてオーソドックスなインパネデザイン。フォルクスワーゲンらしいとも言える。

かつターボのトルクで惰性を与えたあとは、剛性の高いタイヤがよく転がる。だから市街地ではその多くを高いギアのまま空走させながら、ときおりつま先でトルクを与えるだけで、イージーに走れてしまう。

そして筆者はこの走りが、ちょっとEV的だと感じた。

R-lineの適度にしゃっきりした足周りと、低燃費を意識したタイヤの組み合わせ。ここにティグアンの車格がもたらす静粛性と、低振動なガソリンターボのアウトプットを組み合わせた走りはシームレス感が高い。このまま数年2.0TSIを乗り続けてEVにシフトしても、違和感なくステップを踏める感じがする。

デジタルメータークラスター“Digital Cockpit Pro”搭載。全面ナビ表示などにも対応できる。

パワフルさよりもシームレスな走りにシフト

対してワインディングでの走りは、そのトレードオフというか印象がやや平凡だった。

フォルクスワーゲンの2.0TSIは、その爽快な吹け上がりが楽しいパワーユニットだったはずだが、ことティグアンに関しては、高回転にかけての伸び方が、パンチに欠けていた。実にスムーズだが、フツー感が高いのだ。

シフトノブ自体もシフト周りもオーソドックスなデザイン。シフト手前に走行モードセレクターを備える。

ここにはティグアンの1750kgという車重が影響しているのはもちろんだが、それ以上に感じるのは制御の変化だ。

その主たる原因は当然排気ガス規制の厳しさだが、それと同時にフォルクスワーゲンはいま、パワフルさよりもシームレスな走りに方向性をシフトしているのだと思う。

そう考えると7速DSGの変速フィールが、丸みを帯びたことにもなんとなく頷ける。

とはいえそのシャシーは「R-line」として仕上げられているから、トータルなパフォーマンスはやはりスポーティだ。

高さ方向に余裕があるパッケージを採用しており、寸法以上に広々と寛げるリヤシート。
試乗車はオプションのR-Line専用レザーシートを装備。シートバックに「R」のロゴが入る。

DCC(アダプティブ・シャシー・コントロール)をスポーツモードに入れるとダンパーの減衰力が高まり、重心が高く重たい車体はカーブでそのロールスピードを適正にコントロールしてくれる。

その上でしなやかな乗り心地が保たれているあたりも、最上級グレードと呼ぶに相応しい。

4MOTIONの4輪さばきは実に地味だが、確実にリアのトラクションを高めて、曲がり込んだカーブで安定性を高めてくれる。R-lineとして評価するとあまり“Racy”には思えないが、“Rich”な身のこなしだと言えるだろう。

ラゲッジルームのフロア高はやや高め。ボクシーで積載性にも優れる。

フォルクスワーゲンの2.0TSI搭載モデルというイメージからすると、もう少し元気な弾け感が欲しいのが正直な感想だが、これがストップ&ゴーの少ないハイウェイのような場面であれば、もっとこのエンジンの伸びやかさと足周りのしなやかさが楽しめるはずだ。

それにもっとパワフルでエッジの効いた走りが欲しいのならば、フォルクスワーゲン的には「本物のRをどうぞ」、ということなのだろう。

ちなみにフォルクスワーゲンは現在、マイナーチェンジしたティグアンにまだTDIモデルをラインナップしていない。これはどうやらディスコンということではないようだから、もし現行モデルにも2.0TDIが登場するのなら、このマイルドになった(と筆者が感じた)2.0TSIとどのようにキャラ分けされるのかはとても興味深い。

まとめると2リッターターボを搭載したティグアン TSI 4MOTION R-lineは、実にフォルクスワーゲンらしい、隙のないSUVに仕上がっていた。ミドルサイズのプレミアムSUVを検討しているなら、一度は試乗して欲しい一台だ。

フォルクスワーゲン Tiguan TSI 4MOTION R-Line


全長×全幅×全高 4515mm×1860mm×1675mm
ホイールベース 2675mm
最小回転半径 5.4m
車両重量 1720kg(1750kg ※ラグジュアリーパッケージ装着車)
駆動方式 四輪駆動
サスペンション F:マクファーソンストラット R:4リンク
タイヤ 前後:255/45R19(255/40R20 ※DCCパッケージ装着車) 

エンジン 直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
総排気量 1984cc
最高出力 140kW(190ps)/4200-6000rpm
最大トルク 320Nm(32.6kgm)/1500-4100rpm
トランスミッション 7速DSG

燃費消費率(WLTC) 12.8km/l

価格 5,816,000円

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…