フレーム車の新たな再生法? 70のシャーシを与えてランクル40を復活させる! 【東京オートサロン2023】

ランクルBASEという聞き慣れないブースが出店していた。そこには古いランドクルーザー40が展示してあるのだが、妙に車高が高い。近づいてみればフレームとボディのマッチングに違和感がある。聞けば古い40をリニューアルさせるために試作された画期的な車両だったのだ。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
要するに写真のような組み合わせなのだ。

東京オートサロン2023の会場に「ランクルBASE」という聞き慣れないブースがあった。ブースの中ほどには1960年から1984年まで生産された古いランドクルーザー40が置いてある。ランドクルーザーのレストア車だろうと思うのだが、妙に車高が高い。?と思って展示してある車両の手前にある説明を見て驚いた。なんと、70のベアシャーシに40のボディをドッキングさせたのだという。なんと大胆なことか!

ご存じのように古いランクル40系は乗用車ではなく商用車の扱いになる。1993年12月に発効となった自動車NOx・PM法により、特定地域における古い商用車の継続車検、移転登録などが禁じられた。このため都市部から古い商用車が姿を消すことになったのだ。

もちろん排ガス浄化装置を追加するなどで規制を乗り切ることは可能だが、多額の費用がかかる。この規制に嘆く旧車ファンは多く、遠隔地に置いたままでも維持し続けたいと考える旧型商用車オーナーまでいる。ランドクルーザー40もその一つであり、無骨なスタイルと本格4WD性能はいまだに見るべきものがあるが、都市部で維持したり、これから中古車を手に入れて都市部で登録することには障害が多い。

特定地域外に住むオーナーなら今も継続車検が可能であるため、完全に絶滅したわけではないランクル40だが、さすがに古くなって修理に困るケースが出てきている。なんとか直して乗り続けたいという声に応えようと、考え出されたのが写真のクルマだ。70系であれば2000年代まで生産されていたモデルなので、今でも数多く残っている。70のシャーシを用いて40を復活させようと考えられたことから、「ランクルBASE」が生まれることになった。

70のフレームが長いためボディマウントが露出している。
エンジンやサスペンションは70のまま。フレーム上のステアリングは途中で40用と合体している。

「ランクルBASE」の実態はトヨタ車体。ランドクルーザーの企画・開発から生産までを担当する会社であり、ランクルのことなら右に出るものはいない。トヨタ車体に40を乗り続けたいという相談があったことから、このプロジェクトが立ち上がった。トヨタ車体が製作しているのだから間違いない状態に仕上がっているはず。

だが、現状はまだ試作の段階で、細部の煮詰めや法規適合はこれからだそうだ。ともあれ写真の車体が形になったことで、1月21日から愛知県刈谷市にアンテナショップとして「ランクルBASE」がオープンすることになった。

トレッドが狭く見えるリヤビュー。
リヤエンドのボディマウントはブラケットを製作して対処している。

70のシャーシに40のボディを載せるため、2台を完全に分解してボディマウントの位置を検証。車体の側面で左右に5ヶ所ずつ新たにブラケットを製作してドッキングさせている。70のシャーシは40のボディより長いため、現状ではフロントからシャーシが突き出ている。製作時にはフロントボディをストレッチして寸法を合わせることも検討されたが、東京オートサロン2023に出店するため見送られたとか。完成形ではボディがストレッチしている可能性もあり、この個体と若干スタイルが変わることも考えられる。

インテリアは現状で40のままとしている。
シートは張り替えられている。

ボディとシャーシは寸法が合わなかったが、室内は40そのものが残されている。エンジンやサスペンションなどは70なのでより近代的な乗り味になるが、運転する室内は古い雰囲気を大事にしたい。だからステアリングは70のままだが途中で40の部品を溶接して繋ぎ合わせている。さらにシフトレバーの位置は変えられないため、フロアの形状を一部変更までしている。

苦労された結果、このインテリアとすることができたのだ。シートは張り替えられているが、シートベルトやフロントの合わせガラスなど安全基準が適合しないため、これから作り直さなければならないという。古いクルマだから乗り続けるのは難しい。けれど、こんなアイデアで乗り切ることも可能だし、トヨタ車体が請け負ってくれるのなら安心して任せられる。閉会した後も開発が続けられることだろうから、今後の動向に注目したい。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…