ホンダ・ヴェゼルe:HEV 長期レポート | 朝のルーティン走行の燃費は旧型よりどれほど良いか?

新型ホンダ・ヴェゼル 旧型ヴェゼルと同じ条件で燃費を比べてみた。果たしてi-DCDよりe:HEVはどれほど良いか?

筆者の新型ヴェゼル(e:HEV Z FF) ツインリンクもてぎ、スーパースピードウェイコース上にて
新型ヴェゼルが納車されて3カ月近くとなるが、緊急事態宣言下ということもあり自車でなかなか遠出をする機会がなくオドメーターはまだ1900kmだ。走りに関する報告が出来るほど走り込んではいないので、今回は日々のルーティンな走行条件から旧型ヴェゼルHV Z(FF)と新型ヴェゼルe:HEV Z(FF)の燃費を比較してみたい。
TEXT & PHOTO◎山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

往復7.9kmのルーティンで比べてみる

新旧でどのくらい燃費が変わるのか気になっている方も多いだろう。1モーターのパラレルハイブリッドの旧型ヴェゼルと2モーターとなったe:HEVの新型ヴェゼルの燃費にどれくらい違いあるのか報告する。

メーカー発表のカタログ値は

旧型ヴェゼル(ハイブリッドZ FF)
JC08モード燃費23.4km/ℓ・WLTCモード燃費19.6km/ℓ

新型ヴェゼル(e:HEV Z FF)
JC08モード燃費30.4km/ℓ・WLTCモード燃費24.8km/ℓ

となっている。新型の方が3割程燃費は良くなっているカタチだ。

筆者は、週の平日3日ほど、妻を職場まで送っている。距離にして往復7.9km、時間は8:40頃出発し9:00前に職場に到着、妻を降ろしてUターンという行程だ。使うルートは環七と中原街道という幹線道路。通勤時間帯なのでそれなりに混んでいる。ほぼ同じ時間で妻の職場まで到着するのだが、環七から中原街道へオーバーパス横の側道を通って右折する際、そこでもたもたしている車両がいると信号が変わってしまい2分程時間をロスすることも多々ある。妻はそういう車両がいると「どんくさぞうがいる!」といつも罵る(もう少し早く出ればイライラせず済むのにと思うのだが……)。また路上駐車の大型車両があるとちょっとした渋滞となるので、そこでもタイムロスするなど走行条件はまったく同じではないが、これを何年も続けているのでだいたいの平均値はわかっており、その比較する数値に問題はないと思う。

ちなみに信号で止まる回数は往復で9~11回である。燃費の比較をする数値は、ホンダ配布のスマホアプリ「HONDA TOTAL CARE」をもとにする。

「HONDA TOTAL CARE」は2016年12月よりスタートしたサービスだ。筆者の2016年式先代ヴェゼルも点検時にディーラーの担当者に勧められて加入した。「HONDA TOTAL CARE」のアプリのサービス項目に“燃費記録”と“ドライブノート”があり、このふたつが燃費関連の記録を教えてくれる。

“燃費記録”は現在の月と前月の平均燃費と日毎の走行距離とその平均燃費を“ドライブノート”は始動から停止までの距離とその平均燃費の記録を表示してくれる。“ドライブノート”の平均燃費はいつも気にして見ているのだが、まさか新型ヴェゼルのコラムを書くことになるとは思わなかったので旧型ヴェゼルでの記録はメモや画面キャプチャーを取っておらず筆者記憶の数字での比較となることは断っておく。

燃費を比較した前愛車の旧型ヴェゼル

さて、妻を送るための7.9kmの平均燃費だが、まず旧型ヴェゼルからお伝えするとだいたい11~12km/ℓといったところ。信号待ちのストップ&ゴーが多いとはいえ、ハイブリッドカーの燃費としてはあまり褒められた数字ではないように思う。真冬ではシートヒーターを始動時から数分使うせいもあるが9.5~10.5km/ ℓ程となってしまう。最高記録は確か14.7km/ ℓだったと思う。ちなみに「ECON」のスイッチはON、もちろんエアコンも常時ONである。

この交差点で右折に手間取る車両がいると直ぐに渋滞となってしまう

さあ新型ヴェゼルの燃費はどうなのか? 結論からいうと旧型よりメーカー公表値どおり3割ほど良いようだ。6月7月はきちんと日々の記録を残していなかったので8月の走行記録を参考として掲載する。走行モードは“ノーマル”、今年の夏は朝からかなり暑かったのでエアコンはかなり低めの温度設定で使用している。新型ヴェゼルで走行モードを“ノーマル”に選んでいるのは、“ECON”よりレスポンスよく加速できるから。旧型ヴェゼルでは“ECON”スイッチOFFでもアクセル踏み込み時のレスポンスにあまり変わりはなく、燃費も悪くなりそうだから基本“ECON”走行していた。

月 日   走行距離 平均燃費 ガソリン消費量 走行時間
8月2日(月) 7.9km 15.0km/ℓ 0.5ℓ 40分
8月4日(水) 7.9km 10.1km/ℓ 0.8ℓ 56分
8月5日(木) 7.9km 14.1km/ℓ 0.6ℓ 46分
8月6日(金) 7.9km 13.5km/ℓ 0.6ℓ 45分
8月10日(火) 7.9km 19.9km/ℓ 0.4ℓ 32分
8月11日(水) 7.9km 20.2km/ℓ 0.4ℓ 32分
8月12日(木) 7.9km 19.1km/ℓ 0.4ℓ 31分
8月13日(金) 7.9km 16.4km/ℓ 0.5ℓ 32分
8月17日(火) 7.9km 17.7km/ℓ 0.4ℓ 40分
8月18日(水) 7.9km 16.5km/ℓ 0.5ℓ 39分
8月20日(金) 7.9km 19.0km/ℓ 0.4ℓ 37分
8月23日(月) 7.9km 16.0km/ℓ 0.5ℓ 39分
8月31日(火) 7.9km 16.5km/ℓ 0.5ℓ 42分

数値的にかなりばらつきが出ているが、道の込み具合などでこれだけ変わるようだ。10日~12日は20km/ℓ前後とかなり良いのは、世間はお盆休みで道が空いており信号で止まる回数も少なかったことが要因だろう。それは走行時間が他の日より短いことからわかる。逆に8月4日は平均燃費10.1km/ℓと突出して悪い。走行時間も56分と長く、その間エアコン稼働によるエンジン始動の多さに原因があると思われる。

HONDA TOTAL CAREの燃費関連の画面

上記の平均燃費の平均値は16.46km/ℓとなる。この数値だけでも旧型ヴェゼルの最高値14.7km/ℓより良く、新型というかe:HEVの効率の良さがわかる。旧型ヴェゼルのハイブリッドシステムi-DCDでは、加速中は20km/hを超えるあたりでエンジンが始動してしまいモーター走行のみで50km/hに到達するのが難しい(交通の流れを無視しジワーっとアクセルを踏んでゆけば可能だが……)。旧型ヴェゼルは基本エンジンで走りモーターはサポートのパラレルハイブリッドなのでそこは致し方ないだろう。

ナビでの燃費情報画面、現在の燃費を知らせてくれる。
ナビでの燃費情報画面、トリップメーターをリセットしてからの燃費を知らせてくれる。

新型ヴェゼルのe:HEVではバッテリーの充電具合にもよるが、比較的エンジンがかからずバッテリーからのモーター駆動だけで50km/hに達することができる。実はエンジンは思っていたより頻繁に始動するのだがモーター駆動のためが基本で、50km/h程度ではエンジン直結駆動になることはほぼないようだ。

運転席メーター内の燃費情報画面
パワーフローモニター、制御をリアルタイムで表示してくれる
ドライブモード切り替えスイッチとメーター表示

パワーフローメーターを見ているとバッテリー及びエンジンとモーターをかなり複雑な駆動制御で切り替えながら走行していることがよくわかる(目まぐるしく変わるので今何モードで走っているのかわからないほど)。日産のe-POWERのようにモーター駆動のためだけにエンジンがかるわけでもなく、トヨタハイブリッドの「EVドライブモード」のようにはっきりモーター駆動に切り替えることができるわけでもないところにe:HEVがなかなか広く一般に理解してもらえない歯痒さがあるが、細かい話はさておき旧型ヴェゼルのi-DCDより新型ヴェゼルのe:HEVの方がストップ&ゴー頻繁の近距離市街地走行において燃費が良いのは明らかだ。カタログ通りの燃費向上率で、しかも静かで乗り心地も良いので新型に乗り換えを検討の方はぜひ決断をお勧めしたい。

少し長距離ドライブもしてみた

なかなか長距離は走れていないのだが、ちょっと遠出となるツインリンクもてぎへレースの取材で行ってきた。交通事情が同条件ではないので正確な比較にはならないが、渋滞具合もいつもと同じような感じだったので一応報告したい。走行距離は往復で300km、そのうち240kmは高速、60kmは信号の少ない田舎の一般道となる。高速道路での速度は流れの速い集団についてゆけるくらいのもの。旧型ヴェゼルで何度もツインリンクもてぎへ出かけているが平均燃費はだいたい17.5~18km/ℓくらいが多かった。対して新型ヴェゼルでの今回の平均燃費はというと20.2km/ℓと15%くらい良かった。

HONDA TOTAL CAREの燃費ランキングの画面
旧型ヴェゼル最終日取得のHONDA TOTAL CAREの画面 生涯燃費は15.2km/ℓだった。

「HONDA TOTAL CARE」の燃費記録のなかに、“同一車種 燃費ランキング”というのがある。8月度は1万1032人中、6153位とほぼ中間位だったが、7月度は9391人中7370位と結構下の順位だった。同じ条件で勝負している訳ではないのに下位順位だと運転がへたくそ!と言われているようでなんだか恥ずかしい気持ちになる……。

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著者プロフィール

山上博也 近影

山上博也

フォトグラファー。札幌市出身。株式会社ヴュー代表でWEB・DTPデザイナーだったりもする。
幼少より好き…