MAZDA3 e-SKYACTIV-X搭載モデル長期レポート|実車確認編 「ゴルフ7のドアは良かったなぁ」と懐かしみながらMAZDA3と付き合う日々

MAZDA3 SKYACTIV-X搭載モデルを新車購入 後席はちょっとばかり物足りない(ゴルフ7と比較して)

ボディカラーは、筆者お気に入りのポリメタルグレーメタリック
MAZDA3 FASTBACK X PROACTIVE Touring Selection、AWD、6MT、ポリメタルグレーメタリックの使用レポートをお届けしよう。VWゴルフ6、ゴルフ7と乗り継いできた身からすると、MAZDA3の後席はちょっとばかり物足りない。自分が後席の乗員になることはほとんどないのだが、後席に人を招きづらい。スペースの面でも、ホスピタリティの面でも。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

ちょっと物足りない理由は

ゴルフ7の全長が4265mmなのに対し、MAZDA3のファストバックは4460mmで約200mm長い。ホイールベースはゴルフの2635mmに対し、MAZDA3は2725mmで、90mm長い。さすがに200mmの全長差は大きく、乗り換え直後は自宅周辺の細街路で右左折する際に気を使った。

MAZDA3 全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm
VW GOLF7 全長×全幅×全高:4265mm×1800mm×1480mm ホイールベース:2635mm
VW GOLF8 全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm ホイールベース:2620mm

便利なのは、オプションの360°ビュー・モニターだ。MT車の場合は360°セーフティパッケージ(8万6880円)を選択すると、ドライバー・モニタリング、フロントパーキングセンサー(センター/コーナー)とセットになって装備される。ステアリングの右横にあるスイッチを押すことで、8.8インチのセンターディスプレイに車両周囲の状況を表示させることが可能だ。

トップビュー/フロントワイドビューがセンターディスプレイに表示されるよう設定した。
360°ビュー・モニターは付けてよかった装備。
設定はここから。
ステアリングの右横にあるスイッチを押すことで、8.8インチのセンターディスプレイに車両周囲の状況を表示させられる

スイッチを押すたびに、トップビュー(左)/フロントビュー、トップビュー/フロントワイドビュー、サイドビュー、ホームスクリーンの順に表示が切り替わる。筆者はマツダコネクトの「設定」から、システムを起動した際にトップビュー/フロントワイドビューがセンターディスプレイに表示されるよう設定している。自宅周辺ですぐに見通しの悪い交差点を左折するからだ。

以前はクルマを半身出すようにして(人間も車内で半身乗りだして)目視しないと左右を確認できなかったので、通行する歩行者や自転車、クルマに迷惑を掛けることがあった。MAZDA3ではフロントワイドビューのおかげでストレスなく、直交する道路の歩行者やクルマの通行を邪魔することなく、状況が確認できるようになった。360°ビュー・モニターは「付けてよかった」と感じる装備だ。

さて、問題は後席だ

さて、後席だ。ゴルフ7に対する寸法の余裕は後席よりもスタイリングや前席、それに荷室(まだまともに使っていないので、充分に活用したら報告します)に割り当てられたようで、ゴルフ7との感覚的な対比では、やや狭く感じる。少なくとも、広くはない。しかし、窮屈でもなく、足元だけでなくヘッドルームも含めて、スペース的には「まぁ、許せるかな」といった感じだ。

問題は後席。ゴルフ7と比較してもやや狭く感じる。
筆者は「閉塞感」はあまり感じない。

MAZDA3のファストバックは、アーチを描くルーフや、キックアップするウインドウグラフィックを採用したため、リヤのサイドウインドウが小さい。閉塞感(メンタルではなく、文字通りの意味で)を感じると指摘する声もあるようだが、筆者が実際に長時間を後席で過ごした印象でいうと、とくに問題は感じていない。

ゴルフ7よりMAZDA3の方がホイールベースは90mmも長いのに、足元に余裕はあまりない。
183cmのドライバー(筆者だ)が前席に座ったときの後席の膝周り。

乗心地に関しても同様だ。硬いか柔らかいかでいえば、硬い部類に入る。人によって感じ方は違うだろうが、金属や木の板や石のように弾力を拒絶した硬さではなく、板や棒がねじれたりしなったりするような、引き締まった硬さだ。不愉快に感じない理由のひとつは、大きな入力があった際に、胃に響くような衝撃が一切なく、角を丸めるように減衰されていること。上下だけでなく、左右方向に関しても急な動きがなく、ガシッとした箱に守られている印象である。後席の乗り味に関しては「しっかりした」という表現がぴったりだ。

唯一の救いはカップホルダー付きのセンターアームレストが付いていること
シートバックポケットは助手席側にしか付いていない

いっぽうで、後席の乗員に申し訳ないのは、エアコンの吹き出し口がないことである。USBポートもない(ので、コンソールボックスに2mのUSBケーブルを入れてある)。前席のシートバックにスマホ専用のポケットなどあるはずもなく、それどころか、シートバックポケットは助手席側にしか付いていない。唯一の救いはカップホルダー付きのセンターアームレストが付いていることくらいだ。ルームランプが白熱バルブではなくLEDなのも、数少ない歓迎ポイントだろうか。

ルームランプが白熱バルブではなくLEDなのはグッド。

がっかりするのは(しないでほしいが)後席の乗員ばかりではない。シートに腰を降ろしこそしないが、筆者が単独で移動の足として使う際、荷物を置くのに後席を使うことが多々ある。冬になれば上着を置くために、後席ドアを開ける機会は増えるだろう。そして困ったことに、後席ドアを開けたときの安っぽさといったらないのだ(個人の感想です)。外観も内装も非の打ち所がないほど質が高く、惚れ惚れするほどスタイリッシュなのに、一気に興ざめにしてくれるのが後席ドアである。

問題はリヤドアだ。とくに開けるとき。
フロントドアは問題ない(ちょっと物足りないけど)

閉めるときより、外から開けるときの音が問題だ。カップ焼きそばの湯をステンレスのシンクに思い切り良く捨てると、シンクの一部が熱で膨張してボコンといかにも鉄板らしい音を立てるが、後席ドアのノブを引いて開けると、それと同種の情緒ある音がする(皮肉です)。ボコンと。気になったら最後で、後席ドアを開けようとするたびに、「あぁ、またあの音を聞くのかぁ」と暗い気分になる。歯が染みるのがわかっているのに冷たい水を飲まなければいけないときの気分だ。だから、「うわぁー」と心の中で叫びながら後席ドアを開けるようにしている(誇張です)。

インテリアの質感に不満はない。というか大満足だ。

前席ドアを開けるときは後席ドアほどではないが、やはり、物足りない。ところが、乗り込んで閉めるときには重厚ないい音がする。軽々しくはなく、しっかり閉まっている感じだ。この質感を前も後ろも、開けるときも閉めるときも実現できると完璧なんだけどなぁと思う(贅沢言っているのは承知)。

新型のゴルフ8はどれだけドア開閉の感じが良くなっているかと実車で確かめてみたが、少なくとも「良くなっている」とは感じなかった。「ゴルフ7のドアは良かったなぁ。前も、後ろも。もっといえばバックドアも」と懐かしみながらMAZDA3と付き合う日々である。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…