【動画あり】停電時にEVからの給電でエレベーターを利用できるV2Xシステムの普及に向けて日産が日立ビルシステムと協創

日産自動車と日立ビルシステムはこのほど、EVからの給電で停電時のエレベーター利用を可能にするV2Xシステムの普及に向けて協創を開始したと発表。第一弾の取り組みとして、軽EV「日産サクラ」と日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」をV2Xシステムでつなぎ、EVからの給電でエレベーターを継続運転させる実証実験を共同で実施した。

軽EV「日産サクラ」のバッテリー(容量20kWh)が10時間連続でエレベーターを稼働させられることを実証

日産自動車と日立ビルシステムはこのほど、EVからの給電で停電時のエレベーター利用を可能にするV2X(※)システムの普及に向けて協創を開始したと発表。第一弾の取り組みとして、軽EV「日産サクラ」と日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」をV2Xシステムでつなぎ、EVからの給電でエレベーターを継続運転させる実証実験を共同で実施した。
※V2X=Vehicle to X:クルマとさまざまなモノとの接続や相互連携を行う技術の総称。エネルギー分野においては、EVと、住宅やビル、電力網(グリッド)などをつなぎ、電力の相互供給を行うことを可能にするV2Xシステムの実用化が進められている

昨今、頻発する自然災害に伴って停電が発生した際に、社会生活を継続できるようにするための対策に注目が集まっている。高層ビル・マンションなどにおいては、停電時にエレベーターなどの共用部設備が使用できなくなる事態を回避するため、非常時電源として蓄電池などを整備する動きが進んでいるが、導入コストなどが課題となっている。

このような背景のもと日立ビルシステムは、EVの普及により、ビルの非常時電源として活用できる可能性が広がっていくことを見据え、停電時に、EVと建物をつなぐV2X技術により、EVからエレベーターなどのビル設備に給電を行い、継続利用を可能とするシステムを開発し、2023年中の実用化に向けて準備を進めている。

一方、日産は、EVの活用による社会変革や地域課題の解決を図るべく、2018年から「ブルー・スイッチ」活動を推進、全国の自治体や企業・団体など、さまざまなパートナーとともに取り組みを行っている。

今回、両社の想いが合致して、それぞれの持つ技術やノウハウを共有しながら、V2Xシステムの普及などに向けた協創を開始する運びとなった。

【協創の内容】
・企業や自治体などへのV2Xシステム導入に向けた普及活動の推進
・日立ビルシステムが進めるV2Xシステムの実証実験への日産のEVを活用した実用化の加速
・子どもたちへの環境教育での協力など、脱炭素社会に向けた活動連携
【今回の実証実験】
・実験目的:EVの電力を利用したエレベーターの実稼働データの計測
・実験環境:エレベーターの稼働電力をEVからの給電に切り替え、停電時に使用する低速運転モードにて、6階建ての試験棟で10時間連続往復運転を実施(1階および6階でドア開閉、実利用を想定した重り搭載)
・使用車両:軽EV「日産サクラ」(バッテリー容量20kWh)
・使用エレベーター:日立標準型エレベーター「アーバンエース HF」
・測定項目:エレベーターの連続稼働時間および昇降回数、EVのバッテリー残量
【実証実験結果】
実証実験においてエレベーターの連続昇降回数は263回(往復)、「日産サクラ」のバッテリー残量(100%→46%)となり、10時間連続にてエレベーターを稼働可能なことを実証。なお、同条件で「日産リーフe+」(バッテリー容量60kWh)を用いてエレベーターの10時間連続稼働を行った場合の理論値は、連続昇降回数263回(往復)、バッテリー残量(100%→72%)となる。
今後、EVのバッテリー残量のリミット(※)までの長時間連続稼働の実証実験を行っていく。
※システム実用化時の目安としてバッテリー残量10~20%をリミットとして想定

●日立ビルシステムのエレベーターの災害対策に関するウェブサイト

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