新型プリウスを○△×で判定してみた!○はスムーズな走り、△は乗降性、×は斜め後方の視界

新型プリウスは燃費重視のスペシャル仕様から、ロー&ワイドなフォルムを手に入れたスタイリッシュなハイブリッドカーへと進化した。一方で、デザイン重視に見えるスタイリングは先代までの実用性の高さを引き継でいるのだろうか?とういう疑問も残るだろう。それでは、新型SUVプリウスの長短を○△×で判定してみよう。
TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:平野 陽(HIRANO Akio)/塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

まさに「デザインコンシャス」といえるスタイリング&パッケージング

トヨタのハイブリッド車をリードしてきたプリウスは、燃費(空力)向上のために2代目で生み出された「トライアングルシルエット」を継承してきた。新型では、燃費スペシャル仕様の座をアクアやヤリスに譲り、ハイブリッドのアイコンとして手にしたのは、ロー&ワイドなフォルムだ。筆者も素直にカッコよくなったと思える一方で、車内や荷室の広さ、乗降性、視界などの面ではトレードオフになった面も否めない。しかし、そうしたネガも折り込み済みとしながらデザイン革命を成し遂げたのが新型といえる。

新型プリウスのココが○

新型プリウスは、全長4600×全幅1780×全高1430mm、ホイールベース2750mmで、先代の全長4575×全幅1760×全高1470mm、ホイールベース2700mmと比べると、25mm長く、20mmワイドになり、40mm低くなった。視覚的に最も伝わってくるもは低さで、一気にローフォルムになったのがひと目で分かる。

新型プリウスは、全長4600(+25)×全幅1780(+20)×全高1430mm(-40)、ホイールベース2750(+50)mmとなった 。(先代比)

2.0Lハイブリッド車を一般道で走らせると、低い重心高によるスポーティな走りを手に入れていることを実感。とはいっても挙動はとても素直で走らせやすく、EV度合いが濃厚なモーター走行を中心とした街中での走りでも爽快なフィーリングを享受できる。

ライバルになりそうなホンダ・シビックほどスポーティ志向ではないものの、高速道路をかっ飛ばす新型プリウスが多くなりそうな予感がする。2.0L化で最高出力が高まった分、ブレーキの利きも良好で、制動時の立ち上がりから止まる直前までがすこぶるスムーズ。回生とメカブレーキの制御も巧みでほとんど違和感を抱かせない。

後方からシルエットも「デザインコンシャス」といえるスポーティーなスタイリングだ。

また、電制シフトレバーは、先代のふにゃふにゃとした感触(感触そのものがない)から節度感を抱かせるものになり、電動パーキングブレーキの操作性も良好だ。

使い勝手の面では、「置く」のではなく「入れる」方式になったスマホのワイヤレス充電器が秀逸。「置く」タイプだと走行時にズレてしまって充電ができなくなることがよくあるが、短時間の試乗ではあるものの、入れる方式なので充電が中断されることはなかった。そのほか、前席のシートサイズ、座り心地も上々だ。

電制シフトレバーの作り込みや、電動パーキングブレーキの操作性など先代よりも感じ良く進化してる。

新型プリウスのココが△

静粛性の高さも印象的だ。ただし、エンジンコンパートメントからの音・振動をはじめ、風切り音なども含めて全体的に明らかに静かになった分、前後席ともにロードノイズが目立ってしまっている。

プリウスに限らず、電動化車両が難しいのがロードノイズの遮断で、高級車ならお金を掛けて対策できるものの、普及価格帯モデルであるプリウスであっても難しいのだろう。ロードノイズは、先代からの改善点のひとつだったそうだが、まだ改善の余地は残されているように感じられた。

2.0Lハイブリッドのシステム最高出力は144kW(196ps)で、先代1.8Lハイブリッド比で1.6倍となる。

また、意のままにコントロールできる操縦安定性を手に入れている反面、一般道では想像よりも足まわりが硬めだ。大型のダンプカーなどが行き交う郊外路の荒れた路面では、後席だけでなく、前席でも突き上げ感や揺すぶられるような乗り味も抱かせた。

2.0Lハイブリッドは19インチタイヤを装着

デザインコンシャスな見た目をもたらす19インチタイヤの功罪のうち、乗り心地に関しては多少のデメリットといえるかもしれない。また、低全高化により後席の頭上まわりそのものは、広大とはいえず、身長171cmの筆者で手のひら2枚ほどのクリアランスがある程度だった。もっと背の高い人だと天井ぎりぎりになるかも。

なお、新型プリウスPHEV(プロトタイプ)と従来型PHEVをサーキットで乗り比べると、パワーフィールやスムーズな足まわり、ロールの小ささ、静粛性の高さまで当然ながら新型が圧倒的に上をいっていて、新型の進化ぶりがうかがえる。「△」とした点も従来型のオーナーからしたら不満に感じないかもしれない。

新型プリウスのココが×

短時間の試乗では、正直「×」といえるような瑕疵はほとんど感じられなかった。

全高が低くなったことで、乗降時に頭上まわりに注意を払う必要があるのと、背が低いため身長171cmの筆者でも大きく腰を上下動させる必要がある。また、後席はドア開口部下側、つまり足元が狭く、足さばきも良好とはいえない。とはいえ、スタイリッシュさを謳うスポーツセダンとしては欠点ともいえないだろう。最近のSUVやハイトワゴン、ミニバンなどに乗り慣れていると、ドア開口部は、低く狭く感じるのは間違いない。

撮影のため何度もUターンした際に気になったのは、斜め後方の視界がかなり遮られていて、死角が大きく感じられた。「バックビューモニター」はもちろん、斜め後方から接近する車両を知らせる「ブラインドスポットモニター」もぜひ装着したいところだ。

全高が低くなりデザイン重視のスタイリングのため、斜め後方視界が遮られる点には注意が必要だ。

「ブラインドスポットモニター」は、安心降車アシスト、後方車両接近告知+周辺車両接近時サポート、後方車両への接近警報、セカンダリーコリジョンブレーキとのセットオプションで、そうなると「Z」グレードしか選択できないのも惜しい。なお、極端に寝かされたAピラーによる斜め前方、サイドの視界は思ったよりも良好である一方、Aピラーの「存在感」も高い。目障りではないが、歩行者や自転車などが数多く行き交うシーンでどう感じられるか少し懸念も抱かせる。

存在感の強い極端に傾斜したAピラーだが、斜め前方〜サイドの視界は思ったよりも良好だった。

また、低全高化もあり、荷室容量は先代の502L(FF)から、新型は「Z」と「G」が410L(「KINTO Unlimited」専用の「U」は422L)と小さくなっている。とはいえ、大きな開口部とスクエアなラゲッジボードを備え、日常使いなら不満は出ないだろう。

荷室容量は先代の502L(FF)から410Lに縮小しているが、フラットな床面と大きな開口部で日常使いに不便は無さそうだ。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…