ホンダZR-Vに乗ってニク派が考えるヨンクの価値。4WD代はいくらか? 燃費と走りと価格の関係は?

ホンダZR-V e:HEV Z
冬はスノードライブの季節。となると、俄然4WDが威力を発揮する。4WDのメリットを体感するための雪上試乗会だから、「嗚呼やっぱりヨンクだよなぁ」となるわけだが、4WDは重くて高価で燃費が悪い……はず。そこのところを、ZR-Vに乗って考えた。そもそもヨンク代はだいたいいくら?

ニク派の考え「ヨンクは重くて高くて燃費が悪い」はず

ここまで悪コンディションになるとFFでは走れないこともある。4WDの威力は絶大だ。

基本的にニク派である。

肉か魚か、ではなく、二輪駆動(2WD)派という意味だ。これまで乗ってきたマイカーはすべて2WD。11台のうち6台がRWD、5台がFWDで、4WDのクルマを所有したことはない。

そんな筆者だが、「やっぱりヨンクだよなぁ」と思い知らされるイベントが冬季には開かれる。1月下旬に山形・蔵王で開催されたホンダZR-Vの雪上試乗会もそうだった。

私がニク派である理由は、まずは車両価格が高いこと。そして車両重量が重くなり燃費が悪くなることをよしとしないからだ。それに対するメリットを東京都内暮らしでは享受しにくい。

ちなみに、10年前の2013年デビューのマツダ・アクセラの場合、FFモデル(15C)の車両重量が1270kgだったのに対して4WDモデルは1350kgと80kgも重い。燃費もFFモデルが19.4km/Lなのに4WDモデルは17.8km/Lと8.2%も悪化する。そして価格も4WDモデルは21万円高だった。

現代のヨンクはさして重くないし、燃費も悪化しない?

では、現代はどうだろう?
4WDといっても、さまざまな方式がある。

トラディショナルな機械式、つまりエンジンをフロントに横置きするFFベースの場合は、トランスファーを介してプロペラシャフトをリヤアクスルまで伸ばして駆動力を後輪に伝える。最近ではリヤにモーターを搭載して4WD化する、いわゆる電動4WDもある。

ホンダZR-Vのe:HEVの4WDモデル。ZR-Vの場合はプロペラシャフト+カップリングユニットという機械式4WDだ。

ホンダZR-V Zの場合は、前者だ。コンベンショナルな1.5L直4ターボのモデルも、ハイブリッドのe:HEVモデルも、フロントから駆動力をプロペラシャフトで後輪に伝え、リヤデフの手前に配置された電子制御カップリング(多板クラッチの押しつけ力の制御する)が後輪へのトルク配分を制御する。e:HEVのFF(1580kg)に対して4WDは1630kg。4WD化による重量増は50kgに収まっている。

燃費は、FFがWLTCモードで22.0km/Lなのに対して4WDは21.5km/L。燃費はわずか2.3%の悪化ですんでいる。

そうなのだ。最近の4WDはさして重くもないし、燃費も悪くならないのだ。

ちょっと調べてみた。もちろん、4WD化にともなって装備が追加になるなど条件はさまざまだからあくまでも参考までに表にしてみた。

ホンダZR-V e:HEV Z(機械式4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1580kg22.0km/L
4WD1630kg21.5km/L
+50kg▲2.3%

ホンダ・ヴェゼルe:HEV Z(機械式4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1380kg24.8km/L
4WD1450kg22.0km/L
+70kg▲11.3%
ヴェゼルの4WDはリアルタイムAWD。リヤアクスルにはプロペラシャフトで駆動力を伝える。

トヨタ・プリウス G(電動4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1420kg28.6km/L
4WD1480kg26.7km/L
+60kg▲6.6%
新型プリウス E-Four。リヤには最高出力41ps/最大トルク84Nmの強力なモーターを積む。

トヨタRAV4 X(機械式4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1500kg15.8km/L
4WD1570kg15.2km/L
+70kg▲3.8%
トヨタRAV4は3種類の4WDシステムを用意している。

トヨタRAV4 ハイブリッドX(電動4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1620kg21.4km/L
4WD1670kg20.6km/L
+50kg▲3.7%
これがその3種類。

マツダCX-5 XDプロアクティブ(機械式4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1630kg17.4km/L
4WD1690kg16.6km/L
+100kg▲6.6%
マツダC-5

日産エクストレイル X(電動4WD)

車両重量WLTCモード燃費
FF1750kg19.7km/L
4WD1850kg18.4km/L
+100kg▲6.6%
日産エクストレイルe-4ORCE。リヤに強力なモーターを積む電動4WDだ。

4WDの威力はコンディションが悪化すればするほど際立ってくる。蔵王の雪上でも、それは感じた。FF(2WD)でも、スタッドレスタイヤのおかげで、普通に走ることはできる。これが4WDになると、走行に関わるストレスがグッと低くなるのがわかる。低μ路の走行で望むのは、まずは安心・安全にドライブすること。楽しく走るというのは、その先の話。まずは、スタックしないで思った通りのラインをトレースできることだ。ZR-Vの4WDは、まさにそうだった。

「ヨンク、いいじゃん」と思ったところで、これが都内の市街地や高速道路で同じように感じられるか? もちろん豪雨などの悪条件になれば4WDのメリットは体感できる。でも、普通の状態だとなかなかヨンクのメリットは感じにくいのは事実だ。その場合でも、燃費の悪化がほとんどないなら、OKだという気持ちになった。

問題は、ヨンク代がいくらか、である

では4WD代を考えてみよう。

ホンダZR-V e:HEV Z(機械式4WD)
 FF:389万9500円
 4WD:411万9500円
 差(4WD代):22万円

ホンダ・ヴェゼルe:HEV Z(機械式4WD)
 FF:289万8500円
 4WD:311円8500円
 差(4WD代):22万円

トヨタ・プリウス G(電動4WD)
 FF:320万円
 4WD:342万円
 差(4WD代):22万円

トヨタRAV4 X(機械式4WD)
 FF:293万8000円
 4WD:316万9000円
 差(4WD代):23万1000円

マツダCX-5 XDプロアクティブ(機械式4WD)
 FF:326万1500円
 4WD:349万2500円
 差(4WD代):23万1000円

トヨタRAV4 ハイブリッドX(電動4WD)
 FF:353万8000円
 4WD:379万1000円
 差(4WD代):25万3000円

日産エクストレイル X(電動4WD)
 FF:349万9100円
 4WD:379万9400円
 差(4WD代):30万0300円

日産のe-4ORCEは、ヨンクとしては高価だ。

こうしてみると、4WD代は20~30万円だ。奇しくも電動4WDのプリウスと機械式4WDのZR-Vの4WD代は同じ22万円。電動4WDの場合は、プロペラシャフト+カップリングユニットの代わりにモーターとPCU(パワーコントロールユニット)が必要になる。もちろん、どちらも制御用のソフトウェアは専用に開発しないといけない。

20万円ならヨンクかなぁと納得したところで、せっかくなので、他も考えてみると

ハイブリッド代は
トヨタ・ヴォクシー:約35万円
ホンダZR-V:約35万円
ホンダ・ヴェゼル:約38万円
トヨタRAV4:約62万円

ディーゼル代は
マツダCX-5:約32万円

となっている。コンベのFFモデル(これがターボかNAかというものあるが)に対して、ハイブリッド+4WDならざっくり57万円ほど価格増となり、ディーゼルなら+30万円前後となる。

結局ディーゼル(+30万円)、ハイブリッド(+35万円)、4WD(+20万)のどれを予算内で選ぶか、ということになるわけだ。次期愛車選びには、「ヨンク」も候補に入れることにしよう。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…