禁断の中古ジャガーに手を出したら、想像以上の幸せが待っていた! 【XK8購入期Vol.2】

買って後悔すること間違いなしと言われる中古ジャガー。あえて令和の今、「ネオクラシック」とさえ呼べる古いジャガーを普段のアシに使うと、どのような現実が待っているのだろう。長年の憧れだったXK8を格安で手に入れた筆者自ら、ドロ沼にハマる様子をお伝えする第2回目はさらなる出費に泣かされることになった。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
長大なボンネットに花粉が溜まるジャガーXK8クーペ。

前回の記事でいきなりエンジンのフロントカバーからオイルが漏れていることが発覚、対策部品へ交換することになった我がジャガーXK8クーペ。10万円台後半の出費となったが、しばらく安心して乗れると思えば安いもの。車体を格安で買っているので、これくらいの出費は覚悟のうえだった。

修理することのきっかけは、実はオイル漏れではなくリモコンキーが使えないこと。オイル漏れだけ対処してリモコンを放置していたわけではない。純正リモコンは新品が11万円もすると聞いて尻込みしたが、今回は続けて修理した個所を紹介しよう。

リモコンキーは社外品が確実

修理に出すきっかけとなったリモコンキー。右が純正で中央が社外品。

実はリモコンを修理するためにお邪魔したJ-Gear Labの長澤秀則さんは、ご自身の愛車かつ工場の代車としてジャガーXK8コンバーチブルを所有されている。お邪魔した時に拝見させていただくと、コンバーチブルの純正リモコンキーを譲ってもいいとおっしゃっていただいた。

ただ、長澤さんの愛車は純正ではなく社外のリモコンを使っている。純正はいつ壊れるか分からないし、クルマのそばまで寄らないと反応しない。ところが社外品は耐久性に優れ、ずいぶんと離れた位置からでも反応すると社外品をオススメされた。長澤さんの純正リモコンを譲っていただいても社外品に交換しても、金額は偏差でしかない。だとするなら安心できる社外品がいいだろうと結論して、作業をお願いすることにした。

エンブレムの間に鍵穴がある。

リモコンキーにはさまざまな機能がある。今回のリモコンも純正もドアロックだけでなくトランクオープナーやヘッドライトスイッチがあるのだ。ただ、すべての機能を使えるようにすると社外品の場合、余計な出費が重なる。トランクオープナーだと配線をトランクまで新たに引っ張ることになるなど、作業工程が増えるのだ。そこで今回はドアロックだけお願いして、操作した時にハザードなど点灯しなくても良いとお伝えした。

その結果、部品代と工賃を合わせて4万1000円(税込)の請求となった。ただ、使い始めて若干後悔している。実は我がXK8は室内にあるトランクオープナースイッチを操作してもトランクは開いてくれない。時々開くのだが、多くの場合反応音だけで閉まったまま。仕方なしにキーで開けているのだが、ちょっと不便を感じるようになってきた。いずれ追加で作業をお願いすることにした。

リヤサスペンションからの異音

下が純正リヤショックで上が新品のビルシュタイン。

さらに購入時から気になっていたのが左リヤからの異音。段差を乗り越えたり不整路面を通過すると、ガタンと大きめの音がする。さらにコーナリング中に音が発生するとリヤサスペンションがバラバラに動いているような挙動を示す。距離を伸ばすにしたがい、この症状が顕著になってきた。これではせっかくの猫足が台無しだし、乗っていて不快極まりない。そこでJ-Gear Labの長澤さんに追加で作業をお願いすることにした。

異音の原因だったスプリングアイソレーター(上)がボロボロ。

初回の点検時にフロントショックは交換されていると指摘されていた。純正ショックにはジャガーマークが入っているのだが、交換されるとジャガーマークではなくビルシュタインマークが付く部品になっている。フロントはビルシュタインマークのショックになっていたから判明したことで、純正もビルシュタインだから品質的には同じ。ところがリヤは交換歴がないように見受けられる。

そこで新品のビルシュタインショックとアッパーブッシュ、さらにアッパーマウント的部品であるスプリングアイソレーターを揃えていただいた。エンジンのタイミングチェーンと同様に社外品で揃え、部品代は6万9000円(税込)。ここに工賃が加わるが、正直言って激安だと思う。というのも交換後に感じた乗り味は以前とまるで別物だったからだ。

これこそXK8本来の走りと呼べる滑らかさとスポーツカーらしい剛性感を備え、運転すること自体が喜びになった。交換した部品の状態を見れば然もありなんで、元から付いていた純正はブッシュが崩壊しているし、スプリングアイソレーターは半分ほどの厚みに減り径まで細くなっている。こんな状態でXK8を語ろうなど論外だ。

決して手を出してはいけない!? 禁断の中古ジャガーを買うとドロ沼にハマるのか? 【XK8購入記 Vol.1】

中古ガイシャのなかで手を出してはいけない筆頭のように例えられるのがジャガー。曰く「壊れる」「修理代が高い」などなど、すでに都市伝説のように語られている。でも果たしてそうなのか? ここでは筆者自ら清水の舞台から飛び降り、人身御供となって中古ジャガーの真実を探ってみる。 PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)

タイヤを新調した

続いてタイヤを交換することにした。

サスペンションが本来の仕事をするようになると、タイヤの状態も良くわかるようになる。すでに硬化が始まり乗り心地は悪いしロードノイズも大きいのだ。サイドウォールにある製造年月を確認すれば、なんと10年近くのタイヤだと判明。タイヤも真っ先に交換すべきポイントだったのだ。

ちなみに初期型のXK8にはスポーツとクラシックというグレードが存在し、スポーツには18インチ、クラシックには17インチのアロイホイールが採用された。我がXK8は1997年式で内装が本革仕様だからクラシックのはずだが、ホイールは18インチになっている。もちろんオプションで選択可能だったから不自然なことではないが、正直なところ穏やかな乗り心地になる17インチが良かった。

過去に何度かお世話になっているタイヤショップ。

しかも18インチホイールは前後で太さが異なり、タイヤサイズがフロント245/45R18、リヤ255/45R18になる。このサイズが曲者で、前後とも同じ銘柄で揃えようと思うと選択肢が極端に絞られる。ミシュランだとパイロットスポーツかプレマシー、ブリヂストンだとレグノGRX-ⅡかポテンザS007A、もしくは同アドレナリンRE004といった具合。

アジアンタイヤでいいじゃん!と言われそうだが、車格に相応しいタイヤを履きたいのが素直な気持ち。そこで選んだのがアドレナリンRE004。S007Aほどグリップ重視ではないので、適度にスポーティかつウエット性能に優れることから選んだ。このサイズを通常のタイヤショップで交換すると20万円でお釣りがくるような価格になる。なので以前からタイヤを交換するならココと決めている専門店で作業をお願いした。

フロントタイヤは245/45R18サイズ。
リヤはひと回り太い255/45R18だ。

専門店とは矢東タイヤでネット通販でも販売している。以前の住まいから近かったため何度か利用しているのだが、ネット通販しているくらいなので価格が安い。XK8にアドレナリンRE004を履かせた結果、廃タイヤ処理代などを含んで12万円少々(税込)。一般のタイヤショップと比較すれば安いが、決して安価な買い物ではない。でも走り出せば納得。交換前とは比較にならない乗り心地でロードノイズも低減。片道300キロ弱の取材に行くと高速道路、一般道問わず快適に過ごせ確かなハンドリングを感じることができた。

購入後すでに40万円ほどの出費となったが、それだけの価値はあるし刷新するごとにXK8が好きになる。国産車と比べたら品質的に弱い部分は確かだから手はかかる。ただ、その都度良さを体感できるのだから費用を別にすれば幸福度は非常に高い。安心してアクセルを全開にできる状態になったため低速からベタ踏みで加速力を試し多ところ、いまだに俊足と呼べるだけの実力を備えている。ドロ沼地獄にハマると思っていたら、とんでもない幸せが待っていた。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…