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Q:新型ランクルの運転席に座った印象は? 2列目、3列目の座り心地は?
ランクルーザーも300系でついにTNGAのプラットフォームが採用され、ラダフレームなどが一新された。これは各部に恩恵をもたらしたが、そのひとつがドライバーズポジションだ。エンジンルームと車内を仕切るバルクヘッドが前に出たことで、足元に余裕が生まれ、従来の家庭の椅子に座ったような姿勢から、脚を前方に投げ出すような姿勢になっている。
これにより脚腰に負担がかからなくなり、ロングドライブでも疲労や身体の痛みが軽減されるだろう。一方、激しい衝撃が加わるオフロードでも、しっかりと脚を踏ん張れるように、床の一部が盛り上がっている。
セカンドシートは、高級車だけに居住性は申し分ない。GXを除くすべてのグレードにセンターアームレストが備わっており、2名掛けならゆったりと過ごすことができるだろう。リクライニング量も十分で、長距離ドライブでも快適な時間を過ごせるはずだ。
サードシート(ディーゼル車、GXを除く)は、300系から床下収納式になったが、これを実現するために座面が薄くなったことで、頭上の空間に余裕ができた。レッグスペースは広いとは言えないが、大人でも一人で座っていくなら、脚を横に投げ出すなどして長時間堪えることができるかもしれない。おおよそだが、身長が160cm以下の人であれば、200系より快適なのではないだろうか。
Q:新型ランクルの荷室はどれくらい広い? 使い勝手はどう?
300系のトピックスのひとつが、リヤゲートが跳ね上げ式になったこと。従来の上下2分割式と異なり、車内奥への荷物の出し入れがしやすくなった。また、サードシートが床下収納式になったことや、デッドスペースの縮小によって、セカンドシート使用時の荷室容積が大幅にアップしている。
サードシートは電動格納式で、荷室左側にあるスイッチによって、左右別々に操作ができる。収納時はヘッドレストの折り畳みも含めて全自動で、荷物を抱えているような状態にこそ便利だと言える。シートを戻す時も電動だが、ヘッドレストのみ手動で起こさなければならない。
セカンドシートはタンブル式で、レバー操作ひとつでスライド&跳ね上げが可能だ。さらにシートバックのみを平らにすることも可能で、2通りの使い方ができる。どちらのシートアレンジでも、フロア面が完全にフラットになることはなく、車中泊にはあまり向いていない。また、箱をフロア全体に並べるというのも向いていない。ただ、ラゲッジスペース自体が狭いわけではないので、使い勝手に困るようなことはなさそうだ。
小物収納スペースも十分に備わっており、ドリンクやスマホなどの置き場所に困ることはない。センタコンソールボックスの容量も十分で、フタは左右どちらからでも開け閉めできるようになっているのがいい。
Q:ランドクルーザー300の走り、どこが進化した?
14年ぶりのモデルチェンジということもあり、その進化は大きなものだ。例えば、車体の重量は200系よりも200kgも軽量化されたし、TNGAに基づく新プラットフォームの採用によって、剛性感やシャシーレイアウトも変わっている。
目玉は、リヤサスのダンパーのレイアウトが大幅に変更されたことだ。リジッド式サスペンションは構成部品が多いため、スペース的にレイアウトが限られてしまうものだが、ラダーフレームの形状を一部変えてまで、ダンパーを立てた取り付け配置にしている。従来の「ハ」の字配置では、フリクションロスがある上に、トラベル量も少なかった。立てた配置によって、路面追従性が向上し、快適性や操縦安定性が大幅にアップしている。
これにより、オフロードでのホイールアーティキュレーション(3輪が設置してトラクションを発揮できる性能)が向上し、車高調整がなくても優れた走破性を発揮できるようになった。
さらに、ダンパーは「AVS(アダプティブ・バリアブル・ステアリングシステム)」のよって減衰力が調整される。H4では「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」の4モードの調整が可能で、L4シフトするとオフロード用の制御になる。
Q:新しくなったエンジンはどんな印象?
300系は従来のパワーユニットを一新して、新たな走りを目指している。レクサス譲りの3.5リッターV6ツインターボガソリンエンジンに加えて、3.3リッターV6ツインターボディーゼルエンジンをラインナップ。100系以来のディーゼル復活となった。巷ではダウンサイジングエンジンがメインストリームになっているが、このエンジンも同様だ。コンパクト化によって生まれたスペースは、クラッシャブルゾーンや居住スペースなどに有効活用されている。
共にツインターボによる過給がなされているが、並列でプライマリー、セカンダリータービンが過給するのではなく、走行シーンに合わせてプライマリー、プライマリー+セカンダリーを使うシーケンシャルターボになっている。
ガソリンエンジンは低回転から過給するため、あまりターボエンジンであることを意識させない。どちらかというと2F型直6NAエンジンのように上まで気持ちよく回ってくれる。アクセルを勢いよく踏み込んでもそのフィーリングは変わらず、オンロードでの気持ちのよいレスポンスだけでなく、アクセルワークがデリケートになりがちなオフロードでもトルクが扱いやすい。
ディーゼルは、80系に搭載されていた1FZ-FE型を彷彿させるフィーリングで、トルクフルでいかにも頼り甲斐のある感じだ。難点は現代のクリーンディーゼルにしてはうるさいことだが、こういった部分もいかにも歴代ランドクルーザーのフィーリングを大切にしているように思える。
どちらを買うべきかという問題だが、非常に難しい。WLTCモードでガソリン車は7.9km/L(AX、GXは8km/ℓ)、一方のディーゼルは9.7km/Lと大幅な差があるわけではない。燃料費がリッターあたり30円ほどの差があるので、(ガソリンはプレミアム仕様)、車両価格の差である30万円を回収するには10000ℓ使った時、つまり実質的な燃費で6万kmほど走ったらということになる。それを回収する年月は年間総距離にもよるが、一般的な使い方だと4〜5年はかかりそうだ。
これは選択を決める重要な情報になるが、トヨタが決めた車両価格の残価率では、なんとガソリン車の方が高い。3年後の残価率がディーゼル車で67%に対して、ガソリン車は70%。5年後にはディーゼル車が53%で、ガソリン車は56%という残価率になっている。つまり、価格が安いガソリン車を買った方が、リセールバリューがいいというおかしなことになるのだ。これは中古車の海外への輸出を考慮したためだというが、ディーゼルの選択は然るべき理由が必要なのではないだろうか。
Q:新型ランクルの乗り心地ってどんな感じ?
快適やイージードライブを主眼にした300系だが、その乗り心地には様々な意見がある。まず日本独自の仕様であるZXは、20インチのタイヤを履いていることがポイントになる。開発陣によれば、ロードノイズの問題もあって、サイドウォールなどが柔らかめのタイヤを装着しているというが、そもそもハイトが低い上に全体に柔らかいタイヤを履いていることから、路面の細かい凹凸をよく拾う。
さらにリヤサスペンションだが、個人的にはそれほど気にならなかったが、高速道路などを走ると後輪に違和感を感じる人が周囲に何人かいた。これはダンパーの取り付け方を変えたことにより、よりサスペンションがよく動くようになったためと開発陣は分析している。18インチを履いたGR SPORTではそういった印象も薄まったが、いずれにせよ少し堅めの乗り心地の印象だったことは間違いない。一般的なシーンでは、コンフォートモードに入れっぱなしでもいいなと感じた。
これは後席に座ればより顕著になるはずで、スポーツモードで走ったら、僕は間違いなく酔うと思う。パッセンジャーのことを考えるなら、ZX、とくにディーゼルのチョイスはしない方がいいかもしれない。
Q:新型ランクル、買うならどのグレードがおすすめ?
予算がふんだんにあるなら、やはりGR SPORTのガソリンがベストチョイスなのではないだろうか。スタイルも走りもバランスが取れているし、悪路走破性の点でもアドバンテージがある。
デザイン的には標準シリーズも悪くない。個人的には、余計なものが付いていないGXやAXを狙うだろう。オフロードを走りたい、後からドレスアップするなら、なおさらGXがいい。
ZXを否定するつもりはないが、現段階では待ちたいところ。今後、足回りの見直しなども実施されるだろうし、どうせ2年近くは欲しくても買えない状況だ。4年後には間違いなくマイナーチェンジが実施されるので、それまでじっくりと待つのも悪くない選択だ。
「トヨタ・ランドクルーザー GR SPORT(ガソリン)」主要諸元
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4995×1990×1925mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2520kg
乗車定員:7名
最小回転半径:5.9m
燃料タンク容量:80L(無鉛プレミアム)
■エンジン
型式:V35A-FTS
形式:水冷V型6気筒ツインターボ
排気量:3444cc
ボア×ストローク:85.5mm×100.0mm
最高出力:305kW(415ps)/5200rpm
最大トルク:650Nm/2000-3600rpm
燃料供給方式:EFI(電子制御式燃料噴射装置)
■駆動系
トランスミッション:10速AT
駆動方式:4WD
■シャシー系
サスペンション形式:Fダブルウィッシュボーン式Rトレーリング車軸式
タイヤサイズ:265/65R18
■燃費
WLTCモード 7.9km/ℓ
市街地モード 5.3km/ℓ
郊外モード 8.2km/ℓ
高速道路モード 9.6km/ℓ
■車両本体価格
770万円
■オプション装備
タイヤ空気圧警報システム(TPWS) 2万2000円/T-Connectナビゲーションシステム 45万7600円/トノカバー(脱着・巻き取り式) 1万1000円/クールボックス 7万1500円/ルーフレール(ブラック) 3万3000円/リヤエンターテイメントシステム(後席11.6インチFHDディスプレイ×2+HDMI端子) 17万4900円/寒冷地仕様(LEDリヤフォグランプ、カメラ洗浄機能、ウインドシールドデアイサー、PTC[補助]ヒーターなど) 2万5300円/ヒッチメンバー 7万7000円/カメラ一体型ドライブレコーダー[販売店オプション] 2万1450円/GRフロアマット[販売店オプション] 4万1800円/GRラゲージマット[販売店オプション] 2万900円