ホンダ・シビック タイプR|話題のクルマに乗ってオイシイモノを食べに行こう!

今度のタイプRったら、ス・バ・ラ・シ・イ! シビックタイプRの生まれ故郷へひとっ走り|アナログ派・ヒトシ君 × 助手75の言いたい放題本音インプレ

相変わらずナニをしているのかわからないふたり組。CIVIC TYPE Rを持ち出して……?
アナログ派自動車評論家・瀬在仁志(ヒトシ君)を講師に、助手の75(ナコ)と話題のクルマに乗ってオイシイモノを食べに行くという単なる食いしん坊企画。第13弾は泣く子も黙るホンダ・シビック タイプR。「Type R」のバッヂを付けたモデルは、もちろん屈指のスポーツモデル。滅茶苦茶速いけど乗り心地最悪? なんてことになったらどうしよう。果たして、楽しいドライブとなりますでしょうか?


講師:瀬在仁志(Hitoshi SEZAI)
助手:生江凪子(Naco NAMAE)

スポーツ派ドライバー代表のヒトシ君(自動車評論家・瀨在仁志さん)と、日産GT-Rマニア(ただし持っていないくて恋い焦がれているだけ)の編集部75(ナコ)にとって、ホンダ・シビック タイプRといえば、やはり特別であり、気になる存在。早朝にもかかわらずチャンピオンシップホワイトのタイプRを前に盛り上がるふたり。

ヒトシ君:タイプRは歴代モデルをすべて試乗してきたけど、今度のは群を抜いて良いね。
助手75:そうね。いままでのシビック タイプRより、佇まいが大人っぽくていいわ。ホンダって「タイプR」のなかに「タイプS」っていうものあるじゃない? ホラ、NSX Type Sとか。
ヒトシ君:うん、わかりやすく言うと、タイプRは、サーキット最速。タイプSは、ワインディング志向ってこと。
助手75:じゃあ、新型シビック タイプRは、サーキット最速ってわけね。そういえば、ニュルブルクリンク北コースの市販車FF最速の座を奪還したそうよ。宿命のライバル、ルノー・メガーヌR.S.から。
ヒトシ君:それはグッドニュースだね。

ヒトシ君「この大げさなリヤウィングがなぁ……」助手75「ナニ言ってんのよ! これがカッコいいんじゃないの」
ヒトシ君「でも、後方視界にはまったく影響がないところはすごいよね。空力的にも効きそうだし」
ワケもなくワクワクしてしまう3本出しのマフラー。センターのエキゾーストエンドは、低回転域では左右のメインパイプと合わせて開口面積を増やすことで音圧を向上させ、高回転域では負圧効果で不快なこもり音を低減させているのだ。

助手75:とはいえ、ドライブに行くのに、あんまりレーシーなのは困るのよねぇ。乗り心地が最悪ってことはなっていない? ソコントコ、どーよ。
ヒトシ君:まぁ走り出してみようよ。今回は目的地を決めているんだ。埼玉県大里郡寄居町だよ。
助手75:聞いたことあるわね。そこ、どこ? ん?
ヒトシ君:ホンダが誇る最新工場だよ。寄居工場。正確には埼玉製作所だな。つまり、シビック タイプRの生まれ故郷ってわけよ。前型のシビック タイプRは英国製だったんだけど、新型は日本製になったからね。

100km/h巡航は6速で2250rpm、120km/hだと2700rpmになる。

ふたりを乗せたシビック タイプRは(正確には撮影スタッフをいれて3名)、都内を抜けて関越自動車道に入った。K20C型2.0L直4ターボは快音を響かせる。

ヒトシ君:シビック タイプRは、先々代から2.0Lターボエンジンになって、切れ味といった点ではそれまでの自然吸気のタイプRとは異なっていたんだ。ターボエンジンのドカンときてストンと落ちるパワーフィールは当初馴染めなかったし、先代モデルでも段付き加速感がどうしても気になった。リミッターの効きが急だったり、エンジンのパワーフィール自体も少々粗かった。ドライバーに結構腕を要求されたしな。だから、なんでいまさらトランスミッションがDCTじゃなくてMTなのよ! って言ったもんだよ。

助手75:先々代って2015年登場のモデルね。それにしても、アナタ、今回はよくしゃべるじゃない。
ヒトシ君:今回のタイプRもエンジンの生産はアメリカなんだ。開発当初は、日本からの改良要求にどこまで応えてもらえるとわからなかったそうなんだ。でも、乗ってみて驚いた。レブリミット付近のパワーの急な落ち込みはなくなり、リミッターがかかった時の息切れ感が消えて、ドライバーに余裕が与えられるよ。ひと言で言うなら、リミッターが穏やかに効いてくれることで、ドライバーのシフトワークが楽になり、誰でもギリギリまで回せる楽しみが増したね。しかも、エンジン自体のザラついた吹け上がり感や振動が感じられにくくなって、加速フィールが格段にアップ。いいよぉ、これ。

タイプRは、嵐山小川ICを下りて一般道へ。

助手75:このあたり、心なしかホンダ車が多いわね。
ヒトシ君:心なし、じゃなくて圧倒的に多いね。さすが寄居!
助手75:おっ、ここが寄居工場ね。新しくて綺麗。早速なかに進入してみましょう!

「ホンダ私有地につき関係者以外立ち入り禁止」!(当たり前である……)
恨めしそうに寄居工場を見つめるふたり。

ヒトシ君:「ホンダ私有地につき関係者以外立ち入り禁止」って書いてあるよ。
助手75:なんかさ、タイプRオーナーってことで、関係者でよくない? え? ダメ? 本当のオーナーじゃないし? チェッ……残念。
ヒトシ君:せっかくだから記念撮影だな。
助手75:アナタ、なんだかあんまり残念そうじゃないわね? なんかあるわね、白状しなさい!
ヒトシ君:じつはオレ、この工場のなか、見学させてもらったことあってさ。今回は外からしか眺められなかったけど、見るからにきれいで近未来的な外観は最新工場といった感じでしょ。もちろん、ホンダにとって最も新しい工場であることに違いないけど、一歩足を踏み入れたらさらに驚くんだよ。人が少なくて清潔。それでいながら手作業の工程にはたっぷりと熟練工が配置されて手作り感もある。このメリハリのある作業工程から、最新のシビックと、このタイプRは製造されているんだ。
助手75:私も見たーい。なんで、ヒトシ君だけ。私も見たい見たいっ!
ヒトシ君:(丸無視)フツーのシビックが評判よいのも、Made in Japanの本領発揮の結果だね。

寄居工場訪問(正確には、寄居工場門前訪問)を終えたふたり。時間はまだ9時半過ぎ。朝が早かったので、すでにお腹が鳴っている。向かった先は、大好きな道の駅。今回訪ねたのは「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」だ。

「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」に到着! ここがまた、すっばらしい道の駅だったのですよ!
「道の駅」の概念を覆す広大な庭園があるのだ。取材日はもうサクラが散ってしまっていたが、これはシーズン中最高のお花見スポットなことは間違いなし。

この道の駅、通りから見るより奥が深い。紙漉きの体験ができたり、素晴らしい庭があったり、もちろん、お土産や朝採れの新鮮な野菜も買える。庭の奥には「細川紙紙すき家屋」が。これも一見の価値あり。家屋の建築年は17世紀末。つまり300年以上前(つまり江戸中期)というから驚き。わざわざ見に行く価値ありの道の駅である。

そんな見所満載のこの道の駅で、一番の目的になりそうなのがこちら! まぼろしの魚イワナ塩焼! 1匹500円。お値打ちです。炭火で焼くのに独自のノウハウがあるそうで、朝獲りのイワナを使うため「頭から全部食べられる! 頭が一番美味いよ!」なんですって。(イワナ屋さん)

助手75:発見! イワナの塩焼き! 美味い! 間違いなく美味い!

そう言うと「おじさん! 3匹!」とさっさと注文。とにかく鼻の効く75、オイシイモノを見つけるアンテナの高さは会社イチ。食べることへのフットワークの軽さも、仕事に回せばどれだけスゴイか……と思うほどである。
朝獲れのイワナを炭火でじっくり焼くことで、頭から尻尾まですべて食べられる。しかも、川臭さは一切なし。最初は、一口ずつ食べればいいんじゃない? と言っていたヒトシ君も「コレ、美味い!」とすぐに完食。

助手75:このイワナを食べるためだけにわざわざ足を運ぶ、大アリ。いや、本当に、騙されたと思って食べに行って欲しいなぁ。さて、小腹も満たしたことだし、せっかくだから秩父神社にお参りしていきましょう。

真っ赤なインテリアが眩しい! 真っ赤でも子どもっぽくならないところは、シンプルなインテリアの賜。さすが。専用のバケットシートが乗り心地の良さにひと役買っている。

ヒトシ君:いいね。75は乗る前は、「タイプRだから乗り心地が固くて悪いんじゃないか」って思ってたよね? 実際どう?
助手75:これが、悪くないのよ。というか、イイわね。
ヒトシ君:ボディがしっかりと作り込まれていることはもちろんだけど、脚がいいんだよな。
助手75:ワタシのこと?
ヒトシ君:(ガン無視※2回目)リヤがしっかりとしているから、前後に揺れたりすることが少ないよね。4輪同時に上下するような感じで、ショックがあってもボディが一体となってフラットなまま衝撃を吸収するでしょ。普通は船のように前後に動いたりするけど、タイプRは常に箱(ボディ)がまっすぐに上下しているよね。サスペンションが前後ともきれいにストロークしている証ね。4輪でショックを吸収するから力は分散する。カドがないことも大きいね。265/30R19なんていうとんでもなく幅広タイヤを履いているのに、乗り心地が良く感じられるんだ。
助手75:無視かよっ。カドがあるわね。チィッ。
ヒトシ君:(さらに無視※3度目)詳しくはオレのインプレで話すけど、凝った作りのフロントサスはもちろん、リヤサスなど各部の剛性アップはもちろん、ブッシュといわれる関節部分の部材や形状にこだわることで、路面からのインパクトをスムースにしかも後味すっきりに吸収させたね。これらがまたサーキットで効くんだ。小さな入力から大きな入力まですべてにわたって上手に受け止める作り。イコール、こちらの力も、ドライバーの意思ね、も寸分もれなく伝えてくれる。だから正確で無駄なく力を伝達してくれることで、ドライバーは気持ちよく。走りではパワーをすべて伝達させることでサーキットタイムもロスがない。だから、抜群に乗りやすくて速いクルマに仕上がったってことだよね。

エンジン 形式:直列4気筒DOHCターボ 型式:K20C 排気量:1995cc ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm 圧縮比:9.8 最高出力:330ps(243kW)/6500rpm 最大トルク:420Nm/2600-4000rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:47ℓ

助手75:ふーん。で、これナンボよ? もとい、何馬力よ?
ヒトシ君:330ps。大体、300psを超える大パワーをフロント2輪だけで受け持っているんだから、すごいよね。普通なら、このパワーはヨンクですよ。4輪で路面へ伝達するのが普通。それをフロント2輪で可能にしたのだからさすがホンダらしいね。

タイプRは、秩父の峠にさしかかる。道幅は広くないが、交通量も少ないのでリラックスしてドライブできた。

秩父神社へ向かう峠で美しい花が咲いているところでパチリ。

ヒトシ君:ダンパーも電子制御で固めたり柔らかくできたりもする。これね、モード切替で(といいながらスポーツモード、さらに+Rモードに切り替える)、ほら、こんなにも脚が硬くなるね。さすがゴツゴツしてステアリングも重い。パワーも出る。75はこれがきっとお気に入りだろうね。ドライバーは攻めるほどに操作系の重さが気になる。でもこれが、サーキットでは効くんだな。これが。やっぱりベースのシャシーがしっかりしているから先代よりもずっとハード寄りに攻めてるよね。それでも隣に乗る限りは収まりが早くなって揺り返しが感じにくくなる以外、硬すぎるといった感は少ないでしょ。あくまでもダンパーの効きを強めただけで、カドが感じにくいのは基本変わらないからね。
助手75:確かに変わった。でも、どのモードも不快じゃないわ。

ヒトシ君:加えて、シフトフィールがいい。ゲート感は増してタイトでクイックな操作量になっているのに、軽くてスムーズ。振動や硬さがなくてスパッと入る。エンジンとミッションの連係プレーが良くなって、操作感が抜群に向上。75がMTに不慣れでもこれなら楽々ドライブできるよ。さぁ、ドライブしてみようか!

助手75:……無言……あ! 秩父神社だ!

現存する社殿は徳川家康が寄進したものだそう。ふたりがナニをお祈りしたのかは不明だが、私利私欲にまみれたお願いをしていることだろう……。

秩父神社は、秩父地方の総鎮守である三峯神社と宝登山神社とならんで秩父三社の一社。
「秩父神社の創建は、平安初期の典籍『先代旧事紀-国造本紀-』によれば、第十代崇神天皇の御代に知知夫国の初代国造に任命された八意思兼命の十世の子孫である知知夫彦命が、祖神をお祀りしたことに始まるとされており、武蔵国成立以前より栄えた知知夫国の総鎮守として現在に至っています」(秩父神社のHPより)

助手75:今日は寝坊して非常食をバッグに入れ忘れたのよ。ああ、お腹が空いた……。乗っていてちゃんとお腹が空くクルマはいいクルマ。キモチ悪くなるクルマは乗り味ダメなクルマ。これ、75メーター。かなり正確。
ヒトシ君:うんうん、食事ね。どこにい……

(ヒトシ君の携帯にナニヤラ連絡が入る)

ヒトシ君:あ、あああああぁ! ヤバイ。今日締切の原稿、忘れてた! すぐに帰って書かないと。ごめん、急いで帰る。今日はメシ抜き。次、美味しいモノ、ご馳走するから、ね。お願い!

助手75:ええええええっ!「話題のクルマに乗ってオイシイモノを食べに行くという単なる食いしん坊企画」第13回目にして、な、な、な、なんと! ご飯抜き? 次は絶対にオイシイモノにありついてやる〜〜〜〜〜〜〜っ!

「みずほの里のすまんじゅう 茶まんじゅう」で、ぎりぎりお饅頭を頬張って東京に戻るふたり。ヒトシ君は溶かした黒糖を練り込んだ生地で餡を包んだ昔ながらの炭酸まんじゅう“茶まんじゅう”、ハラヘリすぎて真顔の75はパンのように発酵させた生地を蒸かしたモチモチ食感の“すまんじゅう(高菜)”をいただきます。美味しい!(各120円。すまんじゅうはつぶ餡もあります)。

ヒトシ君:運転するだけなら75にとっても楽ちん。助手席に乗っているぶんにはパワフルさやしっかり感を感じつつも、硬さはお気に入りの領域だし、揺れが少ないから好みでしょ。街乗りではとにかく乗り心地が良いから、あとはクラッチワークの手間だけね。あ、クラッチペダルも軽いから平気か。ぜひ、今度は75のドライブでワインディングも行ってみましょう。きっと楽しめると思いますよ(少し低姿勢なヒトシ君)。
助手75:そんなことより、次はアナタの奢りだからね。わかってるんでしょうね。
腹ぺこで不機嫌になりつつある助手75を乗せてシビック タイプRは、都心へ向かうのであった……。

今回のドライブは約200km走って、燃費は10.4km/L

「歴代最高のシビックタイプRだよね」と語り合うヒトシ君と助手75。

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著者プロフィール

生江 凪子 近影

生江 凪子

クルマ酔い防止で車外のクルマを見て育ち、気づいたときには取得した幼稚園免許/保育士資格を使うことな…