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UDトラックスのフラッグシップトラクター「クオンGW(6×4)」は、排気量13L(1万3000cc)の直列6気筒SOHCインタークーラーターボディーゼルを搭載し、最高出力530ps(390kW)/1431~1700rpm、最大トルク2601Nm/990~1431rpmを発揮するモンスター。クルマの概要や詳細は前編をご覧いただくとして、いよいよその圧倒的なスペックを体感する!
トランスミッションはマニュアルモード付き12速AT!
いよいよクオンGWの試乗に挑む。まずはトラクターヘッドだけで未舗装路を走行する。採石場など土木工事の現場などが想定される走行シーンだ。エンジンを始動し、ギアをD(ドライブ)に入れる。基本的な操作は、当たり前だが、乗用車と同じ。トランスミッションはシングルクラッチの12速AMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション=セミオートマ)「ESCOT-Ⅶ」を組み合わせる。
アクセルを踏み込むと、巨大なクオンは軽々と動き出す。因みにトラクターヘッドだけでも9210㎏もあるのに、さすが13Lエンジンだと感心させられる。AMTの変速もトルコンATのように自然だ。
ブレーキが強力なエアブレーキであることや大きなステアリングの捌きなど、運転には少し慣れが必要と感じたが、運転自体は全く難しくない。
強力なパワーステアリングとブレーキのアシスト
四輪駆動でオフロードでも安心の走り
ステアリング操作を容易にする秘密兵器が「UDアクティブステアリング」だ。電動アシスト付き油圧式パワーステアリングなのだが、1秒間に約2000回もの頻度でセンサーが情報を収集し電子制御ユニットが最適なアシストを行うというもので、低速での軽やかなステアリングフィールや高速域での直進安定性を確保する。今回のような未舗装路では、路面の凹凸を自動補正することで、不快な車体の揺れやステアリングの振動を軽減してくれる。
さらに段差や上り坂では、後部の4輪駆動とデフロックが活かせので、どんな道もどんとこい! という仕様なのだ。
補助ブレーキ(流体式リターダー)の仕様体験も行い、走行中にアクセルオフの状態で補助ブレーキを作動。減速感はエンジンブレーキと同じだが、より性能が高いために強力だった。
因みにシミュレーションでは、碓氷峠を下る際、フットブレーキの操作が流体式リターダー付き車だと5回の操作で済むのに、非搭載車だと41回にも上ったというから、流体式リターダーの恩恵の大きさが分かる。
連結総重量40トンをものともしない加速力とスムーズさに驚嘆
続いて牽引走行も体験した。今度のコースは舗装路となり、一般道や高速道路に近い環境だ。試乗車は、20tの荷物を積載したトレーラー付のクオンGWで、連結車両総重量はなんと40tにもなる。
再び、クオンGWのコクピットに乗り、ゆっくりと走り出す。その発進は、かなりスムーズ。正直、拍子抜けしてしまったほどだ。そこから指定走行速度の60km/hまで軽々と加速していく。信じられないことだが、あまりにも運転が楽なので、後部にあるトレーラーと20tの荷物の存在を忘れてしまったほど。
運転中に、助手席にいるサポート役のUDトラックスの担当者に「後ろに20tも積んでいるなんて信じられないでしょ」と言われたことで我に返り、急に運転が怖くなったほど。それくらいドライバーの負担を軽減してくれる運転のしやすさが実現されている。
また駐車時にもステアリングアシストは有効で、自動センタリング機能があるため、ステアリング戻しの際は軽く手を添えておくだけで良いのは、ステアリング操作に必死にならずに済みドライバーの余裕にも繋がっていると感じた。
クオンGWは運転しやすいトラクターだと思う。しかし、乗用車や小型トラックしか乗ったことのない筆者からみれば、一般道で牽引走行をすることは、やはり大変なことだ。トラクターの乗車位置が高いので、視界が良く周囲の状況も掴みやすい。
ただ後方のトレーラーの動きは、ミラーでしか確認できない。これは大きな不安でもあった。また大型車のため、ドライバーより後方にタイヤがある構造特有の車体の動きや、牽引するトレーラーのワンテンポ遅れる動きを意識した運転が必要なことにも緊張した。特に後退時は、いわゆる首振り運転が必要なため、トラクターヘッドを進行方向とは異なる向きにしなくてはならないシーンもあり、トラクターによるけん引走行は、優れた空間認識力と高度な運転技術が必要であることを改めて実感した。
先進技術で負担軽減! 物流業界での活躍に期待
なんとか無事に、クオンGWの試乗を終えることができたが、最新トラックは積極的に先進機能を取り入れ、ドライバーの負担軽減を図っていることが理解できた。しかし、同時にあれだけ巨大なトラクターでトレーラーをけん引して走るドライバーの苦労も見えてきた。
皆さんもご存じの通り、物流業界は人手不足の中で物流量が増加するという大きな問題を抱えている。働き方改革でドライバーの就業時間もより厳しくなるため、大型トラクターの活躍にも期待が高まる。
日本で生まれ育ったトラクター「クオン」の新シリーズ投入が現場の力となることを期待しつつ、日常で頑張るトラックたちへの気遣いの大切さも感じた試乗体験であった。