フェラーリが58年ぶり10度目のル・マン総合優勝!トヨタとの“一騎打ち”を制す

フェラーリ499P
2023年のル・マン24時間で総合優勝を果たした51号車フェラーリ499P
新たな技術規則車両の受け入れが始まったことで、総合優勝を争うマシンの数が激増した2023年のル・マン24時間レース。初開催から100周年の節目となった今年、“新時代ル・マン”の初年度大会を制したのは50年ぶりに最高峰クラスに戻ってきたフェラーリだった。

6月10~11日、第91回ル・マン24時間レース(以下ル・マン)が開催され、フェラーリAFコルサの51号車フェラーリ499P(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョヴィナッツィ組)が優勝を飾った。

フェラーリ499P
決勝は2番グリッドからスタートした51号車フェラーリ。序盤からトヨタなどとバトルを展開した。

初開催から100年目となったル・マン。今年から最高峰ハイパーカークラスにLMH車両のほかLMDh車両も参加できるようになったことで、ポルシェとキャデラックがFIA世界耐久選手権(WEC)に参入するなど、ル・マンにおける同クラスのエントリー数は16台まで増加、総合優勝争いが激化した。
フェラーリも今年、LMH車両の499PをWECに投入。デビュー戦となった今季開幕戦セブリングから見せてきた499Pのスピードはル・マンでも変わらず、予選では昨年までル・マン5連覇を達成していたトヨタを抑えてフロントロウを独占した。

2023年ル・マン24時間スタート
花形とも言える最高峰のハイパーカークラスでもオープニングラップは超接近戦が展開された。

フェラーリとトヨタの一騎打ち

10日にスタートした決勝は、雨に見舞われたこともあってアクシデントが続発する波乱の展開となった。そんななか、フェラーリ勢はトヨタを筆頭に同クラスのライバルたちと激しい首位争いを展開。夜明け頃はTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の8号車トヨタGR010 HYBRID(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組)がトップに立っていたが、8号車トヨタはリヤタイヤのパンクに対応するためピットに入ったことで、51号車フェラーリがトップに浮上した。
この2台はスタートから20時間過ぎの時点でギャップはわずか数秒という接近戦を展開。しかし、レースも残り2時間ほどとなったところで、トヨタ8号車が痛恨のコースオフ。バリアにヒットして車両にダメージを負い、緊急ピットインを行なったことで、首位51号車フェラーリには楽な展開となり、そのまま栄光のトップチェッカーを受けた。

2023年のル・マン24時間を制した51号車のドライバーたち
総合優勝を飾った51号車のドライバー。左からカラド、ピエール・グイディ、ジョヴィナッツィ。

フェラーリのル・マン制覇は、1965年以来58年ぶり10度目。また、クラス優勝はこれまでに29度果たしている。
フェラーリ会長のジョン・エルカンは、記念すべき勝利に「フェラーリの皆に捧げたい、忘れがたい一日になった」と声明を発表した。
「50年もの時を経て我々は耐久レースの最高峰で戦うべく戻ってきた。このレースは我々の物語、そしてモータースポーツ全体の中心に位置するものだ。ル・マンの表彰台の中央にイタリアを戻し、世界で最も偉大なレースの100周年を可能な限り最高のかたちで祝えたことを誇りに思う」

8号車トヨタGR010 HYBRID
トヨタとフェラーリはコース上でポジション争って接近戦を繰り広げた。

「我々のレースではありませんでした」と可夢偉

総合2位はトヨタ8号車。6連覇をかけ100周年記念大会に臨んだトヨタ勢は、直前の性能調整変更により最も重い37kgものウエイトを課されながらも終盤まで接戦を繰り広げた。同3位にはキャデラック・レーシングの2号車キャデラックVシリーズR(アール・バンバー/アレックス・リン/リチャード・ウェストブルック組)がつけた。TGRの7号車トヨタGR010 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)は、日付が変わった頃、80km/h制限となるスローゾーンへと向かう直前に他クラスのマシンに接触され、リタイアを喫した。

7号車トヨタのドライバーとTGRチーム代表を兼務する可夢偉は「残念ながら、このル・マン100周年記念大会は我々のレースではありませんでした。7号車は私がドライブしているときに信じられないような不運に見舞われてしまいました」とチームを通じてコメント。

2023年のル・マン24時間で2位表彰台を獲得した8号車トヨタのドライバーたち
トヨタは8号車が2位表彰台を獲得。左からチーム代表も務める可夢偉、平川、ハートレー、ブエミ。

「8号車は最後まで全力で戦い、2位でフィニッシュしてくれました。チームとしてできることはすべてやりましたし、クルマから最大限のパフォーマンスを引き出し、ドライバーもベストを尽くしてくれました。このル・マン100周年記念大会では、チームが今までにないほど団結して、皆で勝利を目指し、ともにレースを楽しみました。この無念を晴らすためにも、もっと強くなって戻ってこなくてはなりません。応援してくれたすべての方々に感謝いたします。本当にたくさんのメッセージをいただき、皆様の大きな支えがあることを感じました。これからもまた一緒に戦いましょう」

7号車トヨタGR010 HYBRID
7号車トヨタは夜間走行中に他車との接触によりストップ。103周を走ったところでリタイアとなった。

LMP2クラスはインターユーロポル・コンペティションの34号車オレカ07ギブソン(ヤコブ・スミエコウスキー/アルベルト・コスタ/ファビオ・シェーラー組)が、LMGTE Amクラスではコルベット・レーシングの33号車シボレー・コルベットC8.R(ニッキー・キャツバーグ/ベン・キーティング/ニコラ・バローネ)が、それぞれクラス優勝を飾っている。

ポルシェ963
ル・マンの最高峰クラスに戻ってきたポルシェは5号車の総合16位(クラス9位)が最高位。プジョーは93号車の総合8位が最高位だった。

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著者プロフィール

上坂元 宏樹 近影

上坂元 宏樹

メジャーリーグなどアメリカンスポーツ関連ニュースの翻訳業務を経験した後、2016年10月にモータースポー…