プジョーに新たなラインナップが加わった。408だ。クルマ好きなら車名の数字でおわかりのように、308と508の間を埋めるモデルになる。
プジョーは第二次世界大戦前から、中央にゼロを挟んだ3桁数字を車名とするラインナップを構築していた。400番台のプジョーも戦前から存在しており、戦後初のモデルになった403のカブリオレは、『刑事コロンボ』でコロンボ警部の愛車になったことでも知られている。
日本でポピュラーになったのはこのクラス初の前輪駆動車だった405からで、続いてピニンファリーナの手になる美しいクーペが用意された406、ワゴンのブレークがSWと名を変えた407も輸入された。ただし2010年に先代508にバトンタッチしてからは400番台は空席だったので、13年ぶりの復活ということになる。
408の最大の特徴はファストバックとクロスオーバーを融合させたスタイリングだ。現行プジョーでは508に続くファストバックスタイルに、クロスオーバーのテイストをミックスしたようなフォルムで、欧州ブランドを中心に採用例が増えているクーペSUVの一種と言えるかもしれない。
しかしながら、センターにライオンのエンブレムを配したフレームレスのグリル、ライオンの牙をモチーフにしたLEDデイタイムランニングランプ、ライオンの爪をイメージした3本のLEDリアコンビランプなどのディテールは、まぎれもないプジョーだ。
全部で4色あるボディカラーのうち、鮮やかなオブセッションブルーをイメージカラーに持ってきたことも、プジョーらしさのアピールに効いていると感じている。
ボディサイズは、全長は日本の5ナンバー枠上限にもなる4700mm、全幅は一部のタワーパーキングのリミットである1850mm、全高は多くのタワーパーキングに余裕で収まる1500mmと、日本の道路事情に合わせてきたような数字となっている。
他のプジョーとの比較では、長さは308SWと508の中間、幅は308/308SWと同じで、日本の道でも不満なく取り回すことができそうだ。
そのうえでホイールベースは508と10mmしか違わない2790mmと、かなり長めであり、全車に装着される19インチの大径ホイールのおかげもあって、170mmの最低地上高を確保しつつ、安定感のあるフォルムを実現することに成功している。
ブラック基調のインテリアは、最近のプジョー各車が採用するi-コクピット、つまり小径ステアリング遠くに置かれたデジタルメーター、センターの10インチタッチスクリーンなどからなるインターフェイスを採用。鋭角的なラインでモダンな雰囲気をアピールしている。
流麗なプロポーションを持ちながら十分なスペースを確保していることも408のアピールポイント。ラゲッジスペース容積は5名乗車時でも最大536リッター、後席を倒すと最大で1611リッターものスペースを実現する。この数字、ひとまわり大柄な508に匹敵するものだ。
パワーユニットは、1.2リッター直列3気筒ターボのガソリンと、1.6リッター直列4気筒ターボにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)の2種類を用意。いずれも8速ATを介して前輪を駆動する。PHEVの電動走行可能距離はWLTCモードで66km。燃費はガソリン車がリッター16.7km、PHEV17.1kmだ。
運転支援機能では、ストップ&ゴー機能付きアクティブクルーズコントロール、車線内でのポジションも維持できるレーンポジショニングアシスト、駐車や狭い路地で走行時の安全をサポートする360°ビジョンなどを装備している。
グレードはガソリン車がアリュール(受注生産)とGT、PHEVはGTのみだが、発売記念の特別仕様車GTファーストエディションが80台用意される。
ガソリン車が429万円〜、PHEVが629万円〜という価格を含めて、プジョー408は日本車のCMではないけれど、「ちょうどいいプジョー」という感じがする。カッコよさと使いやすさを両立しているし、幅広いユーザーに受け入れられるフランス車の1台になりそうだ。
WRITER:森口将之 1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。欧州車、なかでもフランス車を得意としており、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。日本自動車ジャーナリスト協会、日仏メディア交流協会、日本デザイン機構、各会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著作に『パリ流 環境社会への挑戦(鹿島出版会)』など。