目次
■新開発エンジンを搭載して低燃費をアピール
2014年(平成26)年4月21日、トヨタは2010年にデビューした3代目「ヴィッツ」のマイナーチェンジを実施した。ホンダ「フィット」などライバルの出現で人気が下降気味となったため、新開発の低燃費エンジンへの換装や内外装の変更などで形勢挽回を図ったのだ。

グローバルコンパクトカーとして大ヒットしたヴィッツ
「スターレット」の後継であるヴィッツは、プラットフォームや主要コンポーネントすべてを一新した新世代コンパクトカーであり、グローバルカーとして1999年に誕生した。

従来のコンパクトカーが採用していたシンプルな2ボックススタイルではなく、丸みを帯びた世界に通用する欧州車風のハッチバックスタイルを採用。ロングホイールベース化することで広い室内空間を実現し、さらにワンランク上のインテリアで上質感をアピールした。
パワートレインは、小型・軽量化を図った最高出力70psの1.0L直4 DOHC VVT-i(可変タイミング機構)エンジンと、5速MTと電子制御式4速ATの組み合わせ。さらに世界戦略車に相応しいように走行性能や安全性能も高められ、海外では「ヤリス」と名乗った。
ヴィッツは、それまでのコントパクトカーのイメージを一掃して、すべてにおいてワンアランク上の革新的なコンパクトカーとして世界中で大ヒット。発売当初から月販1万台を越え、初年度はカローラに続く15万台を達成し、日本と欧州でカー・オブ・ザ・イヤーをW受賞した。
ライバル出現でヴィッツ人気が下降
好調な滑り出しに成功したヴィッツだが、2001年にホンダから「フィット」が発売され、ヴィッツを上回る大ヒットを記録。以降は両車の激しいトップ争いが繰り広げられることになった。

フィットの最大の特徴は、コンパクトカーでありながら圧倒的なスペースユーティリティを実現したこと。通常は後席下に配置する燃料タンクを、前席下の車両中央に配置したセンタータンクレイアウトを採用して、ワンクラス上の低床の広い室内空間を生み出したのだ。

さらに2000年代中盤になると、日産自動車の「マーチ」や「ノート」、マツダ「デミオ」なども登場して、コンパクトカー市場の競争はますます激化。2005年に登場した2代目ヴィッツは、初代から引き継いだ人気を維持したが、2010年に登場した3代目から、徐々にフィットやノートに押され気味の状況が続いた。

また2011年には、自社のハイブリッド専用車「アクア」が誕生して、ヴィッツ・ユーザーの一部がアクアに流れることになり、これもヴィッツ人気にとっては逆風になってしまった。
高効率エンジンを搭載して大規模なMCを敢行

人気が下降した3代目ヴィッツの人気挽回を図るため、発売から3年目の2014年4月のこの日、3代目ヴィッツは大規模なMCを敢行した。フロントデザインは当時のトヨタ車の特徴である“キーンルック”を採用、内装もスポーティさや上質感を追求してインパネ類も刷新されたが、MCの目玉は何といっても燃費を追求した新エンジンの搭載である。

1.0Lと1.5Lエンジンも改良されたが、注目は新開発の最高出力99ps/最大トルク12.3kgmを発揮する1.3L直4 DOHCエンジンである。ハイブリッドカーで採用されているアトキンソンサイクルに加え、高圧縮比13.5、筒内流動の強化、クールドEGR、VVT-iE(連続電動バルブタイミング機構)などを採用。燃焼改善と各種損失の低減などで、JC08燃費はそれまでの21.8km/Lから25.0km/Lへと大幅に向上、ライバルのフィット24.4km/Lを上回った。

車両価格は、注目の1.3Lエンジン車の標準グレードが145.0万、1.5Lエンジン車174.0万円に設定された。
2017年には、ついにハイブリッドを追加して商品力の強化を図ったヴィッツ。結果として誕生以降後半は人気が下降したものの、長くベスト10に食い込む堅調な販売を続けた。そして、2020年に車名を海外名「ヤリス」に統一してバトンタッチ、そのヤリスは2025年現在もコンパクトカートップの座に君臨する大ヒットを続けている。

・・・・・・・・・
2008年に起きたリーマンショックは、自動車メーカーにも大きな影響を与えた。この頃の開発の最重要命題はコストダウンで、2010年にデビューした3代目ヴィッツもいろいろな面でコストカットが強いられたクルマだったことが想像できる。2014年に行なわれたマイナーチェンジは、その巻き返しだったのだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。