意外と見えてくるアキュラ・インテグラのコンセプトやカタチ

ティザーから見えたアキュラ・インテグラのデザインを考える

2022年に北米発売とされるアキュラ・インテグラだが、フロント周りのスケッチに続き、このほどリヤ周りのスケッチが公表された。これで5ドアハッチバックであることがわかったのだが、実はそれだけではない、色々なことが見えてきたと思う。

初代インテグラはスポーティながら実用的なところが魅力

タイプRのあまりにも強い存在感などによって、今でこそハイパフォーマンスカーの代表のように語られるインテグラ。しかし、1985年の初代登場当初はそこまで過激ではなかった。エンジンは1.6LのDOHCにキャブ仕様とPGM-FI仕様の2種類。ハイエンドのモデルはNAながらゼロヨン加速で16秒を切る俊足だった。それでいて価格は130-160万円と手頃。デザイン品質が明らかに一格上のものでありながら、ベースモデルがそこまで安価であることで大きな注目を集めた。

北米の初代アキュラ・インテグラの5ドアモデル(1986)、日本ではホンダ・クイントインテグラを名乗る。プレリュードのようなスペシャルティカー的装いで、扱いやすさも十分。

初代は日本名で”クイントインテグラ”と呼ばれるように、クイントの2代目というのが正式な立ち位置。しかし初代クイントが、生活感のある5ドアハッチバックであったことからあまり好評は得られず、この2代目では徹底して生活感を排除した。それがあのスタイリッシュな形を生んだのだ。若い2人のためのアクティブなモデルでありながら、洗練されていて、さらに便利…という形を実現した。

当初は3ドアハッチバックで登場し、5ドアHB、セダンとラインナップを増やしたが、スポーティであることと同時に、扱いやすさや、使える車としての成り立ちも重視された。

大きなハッチバックは、三次元曲面のキャノピーのようなハッチゲートを持ち、広々とした後方視界を確保。リトラクタブルヘッドライトを採用するなど、スタリッシュさを重視しながらも、扱いやすさもしっかりと確保したのだ。

ハッチバックは必須の装備

5ドアハッチバックであることを予告。大きく開くリヤゲートはインテグラらしさ。初代に立ち返ったコンセプトと見た。

そして今回、5代目として登場となる新型インテグラだが、今回のティザーによって5ドアハッチバックであることか判明。そのスケッチをみることで、初代モデルに対するリスペクトが大いに感じられる。つまりは、もういちど初代のコンセプトに立ち返ったということが言えるのではないだろうか。

アキュラ・インテグラのロゴ。

そうしてみていくと、直近のマッチョな4代目よりも初代のテイストに近いものを感じることができる。またポイントとなるのがリヤゲートで、リヤウインドウは、平面に近いのではないかというほどのフラットさが面白い。さらに良くスケッチをみてみると、ウインドウこそ左右に回り込んではいないがリヤゲートはリヤピラー外側にまで回り込んでいる。

リヤピラーを太くするが、それを上回る大きなハッチゲートも採用。
スタイリッシュで扱いやすいを具現化。

この狙いは、太いリヤピラーによる力強いフォルムを造形したい意図に加えて、大きく開くリヤゲートを取り付けたいという思いの表れだ。これこそが扱いやすさ、使い勝手の良かった初代へのリスペクトと言えるだろう。

メカと有機の合体した新たな造形か?

フロント周りは、NSXにも採用されるアキュラアイデンティティを表現した造形。さらにシャープさを強調している。気になるのはバンパーから左右フェンダーに伸びるラインだ。このラインがここで終わるわけはなく、サイドへと回っていくのだが、さてどのようなキャラクターに進んでいくのだろうか?

極めてシャープな面構成を多用するフロント周り。バンパーからのキャラクターラインは、この先後方に進んでどうなっていくのか?

ヒントがあるとすれば、次に公表されたリヤ周りのスケッチだ。サイドウインドウの後端から、前方に向けてシャープなラインが走る。そしてその下にはテールエンドからふくよかなフェンダーラインを造形し、その山裾にあたる変曲部分がやがてシャープなラインに移行するような予感…で深いシャドウが入り造形が隠される。

おそらくはテールエンドからリヤフェンダーへと渡る山裾部分が、フロントエンドラインに呼応するという流れではないだろうか。とはいえ、ストレートに繋がるというよりは、フロントからホイールアーチを越えてフロントフェンダー後方までつながるラインが徐々に消え、リヤドアあたりに生まれリヤフェンダーの山裾につながっていくような感じ?…だろうか?

インテグラのリアフェンダー周りは、デザイン上の大きなポイントだろう。全体としてどんな表現となるのか楽しみだ。

ディテールがどうなるのかわからないが、前と後ろで、「シャープなラインを生む面造形」と、「有機的な面造形」の配分を変えているように思う。フロントのメカニカルなシャープな印象から、リヤ周りでは有機的な柔らかさへと帰着。リヤフェンダーの面がリヤエンドへと流れていく情景は、砂浜の引き潮が形造った砂地のような滑らかさとたおやかなダイナミズも感じさせる。

長いリヤサイドウインドウが2ドア的なスタイリッシュさ!?

そしてフロント同様にリヤバンパーには力強いラインが左右に伸びる。しかし面白いのは、このラインはコンビランプで消えることだ。実際にはフェンダーの峰へとつながるが、消す=繋がって行かないことによって、フロントから変貌してくる面の流れが有機的になりながら、発散することなく、ここで「止め」を迎える。デイライトとリヤランプで用いられている、アキュラのデイライトとリヤコンビのライティング造形の存在感も高め、さらにリヤ周りの面構成を甘いだけで終わらせない杭のような役割にもなっているように感じる。

そしてもう一つ注目していただきたいのが、リヤクォーターウインドウだ。いわゆるシックスライトを採用するが、スケッチによればリヤドア後方のCピラーは3枚目のリヤクオーターウインドウの内側に隠されている。これによって、リヤウインドウエリアは大きな横長に見えて、全体のフォルムとして2ドアクーペ的造形を表現しているように見える。ヴェゼルのもつ2ドア感をさらに進めた形なのだと思う。ただ、わからないのが、サッシレスなのか、サッシがあるのか? ということだ。あるいはウインドウ周りは、イメージスケッチとして詳細が書かれていないのかもしれない。 

サイドウインドウ。リヤ部分が連なって見えるように、Cピラーが内側に隠されている。明らかにリヤドアの存在を感じさせない、2ドアクーペ的表現のための手法だ。

こうして見ると、アキュラのデザインもこのインテグラから次のステージに入っていくように感じられる。よりシンプルであり情熱的、そしてメカニカルな魅力。そんなものが表現されてくるのではないかと思う。ぜひワクワクしながら、その登場を待ってみたい。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…