ドラレコ? カーナビ? 音声操作だけで様々なサポートを受けられる革新のドライブサポーター・パイオニア『NP1』を使ってみた【カー電の現在地 2023・夏 CarGoodsMagazine】

他のどんなジャンルの電子機器とは違うパイオニアの『NP1』が市場に出てからだいぶ経つ。アップデートによりさらに利点を増す実機の旨みを、自腹購入のうえで実使用テストにトライ。まずは、その初見の感想を報告しよう。

運転時の不安を会話のやり取りでマルチにフォローしてくれる頼れる味方

ドライブレコーダーでもあり、そしてカーナビでもあればWi-Fiルーター代わりにもなる。『NP1』はその多機能さゆえに、どう表するのかが難しい。
最もしっくり来るのが「ドライブサポーター」だろうか。ドライバーにとってよりストレスのない方法で各種アシストしてくれる点で、エリートという言葉を足してもいいかもしれない。
最大の注目点は、音声だけでコミュニケーションできる点だろう。画面を注視する必要もなく、コマンドタッチも不要となれば、目と手は運転だけに集中でき、運転時のストレスを大きく軽減してくれる。

本体にはディスプレイが設けられず、各種設定や詳細確認は連携するスマホアプリから行う仕組み。インターフェイスは整理分担されている。
その多才な機能のなかでも、主たる用途はドライブレコーダーとされる場合も多いだろう。ここにおいて、大きなアドバンテージとなるのがクラウドへの動画保存だ。常時通信のLTE通信機能を利用することで、microSDカードへの通常録画のみならず、イベント動画はクラウドにも保存される。取り逃しの心配もなければ、映像確認もスマホからチェックできるので、一般的なデータと同様にその管理体制もよりスマートに行える。

Pioneer『NP1(ベーシックプラン価格:6万5780円/通信+サービス利用料1年分)』
2年目以降は年額1万5840円の通信+サービス利用料が別途必要になり、Wi-Fi機能はオプション。当初より3年分の通信+サービス利用料をセットにしたバリュープランは9万3500円。それとは別に、通信+サービス利用料1年分を24回払いで分割するベーシックプランや、お試しプランとして4400円で10日間試用できるサービスも用意されている。

複数カメラによるセパレート型が趨勢のドラレコ市場のなか、オールインワンの一体型ボディは特異に見えるものの、前後方向のカメラをそれぞれ備えることで、側面はもちろん、車内越しの後方まで守備範囲とする。ここでも、その手法はいたってスマートだ。

独自ぶりをさらに補足するなら、アップデートにおける機能追加が著しい点にも注目したい。直近のアップデートにおいては、駐車時の様子を離れた場所からスマホで確認できる新機能が追加されている。入手できる情報は、映像はもちろん位置情報に速度まで多岐に渡る。

前後ともにフルHD画質で記録される映像のうち、イベント録画は本体内のSDカードだけでなく、クラウド上でも保存され、スマホ内の専用アプリから手軽に再生できる。

つまり、充分以上の多彩な機能に、さらにカーセキュリティ機能も追加されたことになる。しかもその恩恵は、既に購入後のユーザーも無償で受けられる。そもそもデビュー当初より、後々のアップデートでさらに機能拡充できる旨がアナウンスされていた。その一つがこの大型アップデート。これを契機に、購入がぐっと現実的になった人も多いに違いない。

シンプルに見えて奥深い、簡単操作に隠された高い実力

くぐもった中年の声は条件的にもかなり悪いと自覚していたものの、ほぼミスなくキーワードを拾ってくれる。発せられる音声案内も聞きやすい。恒常的にラジオを流す車内にあっては多様な人の声が入り乱れる。その環境をものともせずはっきりとコミュニケーションできる点は驚きでもあった。発話者にフォーカスする集音技術や、小型スピーカーでもブーストを効かせる施策など、まさに名うての音響メーカーであるがゆえのパフォーマンスだろう。

ナビ機能についても驚きは大きい。何よりの驚きは精度だ。衛星測位システムではグロナス・ガリレオ・みちびきも利用し、これに加えて6軸のモーションセンサーからの情報や通信によるGPS技術まで活用されている。車速を取らない簡易取り付けながらも、ここまでの精度が出せるのは驚きだ。

本体サイズは幅118mm、高さは75mm、奥行きは93mmと、薄型で奥行きのある平べったいものとなる。本体向かって右側には操作ボタンが用意されるものの、主な操作は会話から完結できる。

音声のやり取りだけでルート案内してくれるとはいうものの、当初は懐疑的でもあり、スマホアプリと並行してチェックしていた。ただ使用回数を重ねるほどに、ほぼスマホ画面を見る必要もなくなった。信頼に足ると判断できたためだ。
情報が欲しいタイミングで案内を寄こし、それが過分に感じることもない。判断材料にはマップマッチングの結果や画像解析情報なども踏まえられるという。だからこそ、このルート案内は高品位とも言い替えられる。

そもそも複数カメラを使うシステム化されたモデルとは違ってオールインワンのマルチ型だけに、ドライブレコーダー機能にはそれほど多くを期待していなかったが、撮影範囲もその画質も期待通りと言える。パイオニアで定評のあるナイトサイト機能で暗いシーンにも強く、車内越しの後方アングルも、有事の際の証明記録として充分有益と判断した。

専用アプリでは、ルート案内時にコマ図式のナビ画面を表示できる。シンプルな案内ながら、導き出される案内は高度に情報を検証した高品位データとなる。信頼性も高い。

ここでも、ハイライトは音声コントロールとクラウド機能と言えるだろう。ヒヤッとするシーンほどに、手動操作の余裕はない。目と手は運転に集中すべきだからこそ、声でコントロールできる余裕は強く感じられる。また、こんな時こそ撮り漏れが一番怖い。クラウドで保存されるアドバンテージは、所有してこそより痛感できる点だ。

主だったものでも、これだけの気付きと発見があるカー用品は珍しい。言及すべき点はまだまだあるが、それもまた現状での機能においてというただし書きがつく。その他のレポートは今後に譲るとして、その根幹たるポイントだけを見ても、いかに深みのある商品かがよく分かる。

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