目次
ルーツは軍用四輪駆動車
ランドクルーザープラドが14年ぶりにフルモデルチェンジし、新たにランドクルーザー250として発表された。同時によりヘビーデューティ志向のロングセラーモデルのランドクルーザー70も発表された。
発表会の場にはトヨタBJから始まる歴代のランドクルーザーシリーズも展示されていた。
トヨタの四輪駆動車の歴史は戦時中まで遡り、旧日本陸軍に納入された四式小型貨物車はフィリピンで鹵獲した米軍のバンタム・ジープをコピーして設計された。戦後、警察予備隊(後の自衛隊の前身の一つ)への納入を意図して企画されたジープBJはそれと直接的なつながりはないものの、技術的には大いに参考になったという。
四輪駆動車の大きな需要である軽軍用車がこのジャンルのクルマの始まりであるのはすでに多方面で語られており、その代名詞的な存在が「ジープ」であることもよく知られている。ジープは車名でありブランド名であり、ほとんどこの四輪駆動車の一般名詞でもある。トヨタBJ型からしてトヨタ・ジープBJ型と呼ばれたくらいである。
そのジープの直系の末裔のひとつがジープ・ラングラーだ。先代のランドクルーザープラドよりも質実剛健に回帰したランドクルーザー250は、昨今では少数派となったオフロード色の強いSUVとして、まさにこのラングラーと双璧をなす存在なのだ。
エクステリアとボディサイズ
大きく見えるラングラーだが、実はランドクルーザー250の方がひと回り大きい。特にラングラーの全長は今時珍しい大きなフロントバンパーと、リヤゲートに装着されたスペアタイヤで、数字以上にボディが小さい。そのため、キャビンスペースもおそらくランドクルーザー250の方が広いと思われる。
一方でラングラーはホイールベースが3mオーバーとかなり大きく、それが6.2mという最小回転半径の大きさにもつながっている。ランドクルーザー250の最小回転半径は未公表だが、2850mmのホイールベースはシャシーが共通のランドクルーザー300と共通。タイヤサイズは異なるが、ランドクルーザー300の5.9mという最小回転半径に近い数字になるのではないだろうか。いずれにせよ、ランドクルーザー250はラングラーより若干小回りがききそうだ。
最低地上高はラングラーが200mmと、オフロード系SUVとしては標準的な数字であり、先代が220mm、ランドクルーザー300が225mmという数字から推測されるランドクルーザー250の最低地上高(220mm以上?)の方がやや高くなりそうだ。
全幅も約100mm近くランドクルーザー250の方が大きい。ラングラーのPHEVモデルと比べても50mm大きい。特にラングラーはフェンダーの張り出しが大きいため、明確な数字は公開されていないが、おそらくキャビンスペースには数字以上の差を感じるのではないだろうか。
車名 | ランドクルーザー250 | ジープ・ラングラー(PHEV) |
全長 | 4925mm | 4870mm |
全幅 | 1980mm | 1895mm(1930mm) |
全高 | 1870mm(シャークフィンアンテナ除く) | 1845mm〜1855mm |
ホイールベース | 2850mm | 3010mm |
最低地上高 | 未発表 | 200mm |
最小回転半径 | 未発表 | 6.2m |
ホイール・タイヤ | 265/70R18 | 255/70R18 255/75R17 |
車重 | 未発表 | 1960kg〜2030kg(2350kg) |
タイヤはどちらも70扁平の18インチを採用しており、ラングラーが255幅としてやや狭いのは、オフロードでの接地圧を確保するためだろうか。ただし、255/70R18を履くのはUnlimited Saharaで、Rubiconは255/75R17とさらにゴムハイトのある設定となっており、さらなるオフロード性能を追求したサイズになっている。
展示車両のタイヤがそのまま生産車に採用されるとは限らないが、ランドクルーザー250はトーヨータイヤのオープンカントリーA/Tを装着しておりブロックパターンからしてオフロードを感じさせるが、逆にラングラーの撮影車両はオープンカントリーA/Tに比べるとオンロード寄りのブロックパターンをもつブリヂストンのデューラーH/Tを装着していた。
パワートレーンとスペック
日本で販売されるラングラーはエンジンを2.0直4ターボが基本になっており、時折限定車に異なるエンジンが設定される一方、ランドクルーザー250は2.7L直4ガソリンエンジンと2.8L直4ターボディーゼルが設定され、エンジンラインアップはまったく異なっている。
いずれもラダーフレームに縦置きレイアウトで搭載されるFRベースの4WDで、ヘビーデューティ(ランドクルーザー250はライトデューティを謳うが)の定番の、オフロード走行を堰堤とした頑丈さと実用性を重視した内容だ。
4WDシステムはどちらもフルタイム4WDで、4WDは複数のモード(4H/4L)が用意されるのも同様だが、2WDモード(2H)はラングラーにしかない。
もちろん、デフロックも両車とも可能だが、ランドクルーザー250は前後デフそれぞれを個別にロックする一方、ラングラーはリヤのみか前後両方をロックするといった違いもある。
また、全6種類も用意された様々な路面状況に応じた走行モードの豊富さはランドクルーザー250の大きな魅力となるだろう。
車名 | ランドクルーザー250 | ランドクルーザー250 | ジープ・ラングラー(PHEV) |
エンジン形式 | 1GD-FTV 直列4気筒DOHC16バルブ インタークーラーターボディーゼル | 2TR-FE 直列4気筒DOHC16バルブ | N(6) 直列4気筒DOHC16バルブターボ |
ボア×ストローク | 92.0mm×103.6mm | 95.0×95.0mm | 84.0mm×90.0mm |
排気量 | 2754cc | 2693cc | 1995cc |
最高出力 | 204ps | 163ps | 272ps/5250rpm |
最大トルク | 50.98kgm(※) | 25.08kgm(※) | 40.8kgm/3000rpm |
燃料噴射装置 | 未発表 | 未発表 | 電子制御燃料噴射 |
燃料タンク | 未発表 | 未発表 | 81L(65L) |
燃料 | 軽油 | 未発表 | レギュラーガソリン |
トランスミッション | Direct Shift-8AT | 6 Super-ECT | 8速AT |
駆動方式 | 4WD | 4WD | 4WD |
サスペンション | F:ダブルウィッシュボーン R:トレーリングリンク | F:ダブルウィッシュボーン R:トレーリングリンク | 前後コイルリジッド |
(※)トルクは編集部換算値
ラングラーの2.0L直4ターボに近いのは、ランドクルーザー250では中近東や東欧への展開が予定されているT24A-FTS型2.4Lガソリンターボが最も近いエンジンなのだが、残念ながらこれは日本への導入がアナウンスされなかった。
エンジン形式:T24A-FTS型2.4Lガソリンターボ 最高出力:281ps 最大トルク:43.85kgm(※) トランスミッション:Direct Shift-8AT(8速AT) 仕向地:中近東・東欧・ほか (※)トルクは編集部換算値
また、ラングラーにはプラグインハイブリッド車が追加され、2.0Lガソリンターボ車のエンジンに2つのモーター(とリチウムイオンバッテリー)を追加している。EV走行モードを備え走行可能距離は最大42kmほどとされている。
ジープ・ラングラー Unlimited Rbicon 4xe ・P1モーター(交流同期電動機) 最高出力:63ps 最大トルク:5.5kgm ・P2モーター(交流同期電動機) 最高出力: 145ps 最大トルク: 26.0kgm ・電池 種類:リチウムイオン 電圧:3.7V 容量:49.5Ah 総電力量:15.46kWh
ランドクルーザー250の北米・中国仕様には上記のT24A-FTS型2.4Lガソリンターボをベースとしたハイブリッドモデルが用意され、これがラングラーの4xeのライバルになるだろう。
エンジン形式:T24A-FTS型2.4Lガソリンターボハイブリッド 最高出力:330ps 最大トルク:64.24kgm(※) トランスミッション:Direct Shift-8AT(8速AT) 仕向地:北米・中国・ほか (※)トルクは編集部換算値
インテリアとユーティリティ
ランドクルーザー250はダッシュボード両端のエアコン吹き出し口を円形にするなど、意外とラングラーと似た雰囲気がある。基本的にブラックに統一されたインテリアカラーといい、ダッシュボードの高さからはみ出さない液晶モニター、車体の傾斜を把握しやすい水平基調のデザインなど、オフロード車としての使い勝手を考慮したデザインと言えるだろう。
一方で、ラングラーはデザインに古さを感じさせるものの、それがオフロード車としてのテイストをより一層高めている印象もある。特に4WDの切り替えが、ランドクルーザー250がスイッチであるのに対し、ラングラーは懐かしさすら感じるレバーによるマニュアル操作なのがその好例だ。
とはいえ、メーターリングやエアコン吹き出し口、ステアリングスポーク、ドアオープナーなどにめっき加飾を施し、車両価格なりに高級感を演出しているのが、虚飾を排し実用一辺倒に感じるランドクルーザーとの違いにもなっている。
そのメーターはフル液晶であるランドクルーザー250に対し、中央に各種情報を表示するカラー液晶モニターこそ配しているものの左右のタコメーターとスピードメーターは文字盤と指針の組み合わせであるラングラーは、流石に今となっては時代を感じる。しかし、こういった点もその変わらぬルックスと合わせてラングラーが支持されるポイントなのかもしれない。
ランドクルーザー250のインテリア仕様についてはまだ詳細不明だが、ブラックアウトされたインテリアなどはとてもコンサバティブな印象だ。ラングラーも同様にブラック基調のインテリアだが、レザーシートを装備するなどここも価格相応の豪華装備となっている。
最大の違いは、ランドクルーザーが7名乗車なのに対し、ラングラーは5名乗車である点。先代のプラドやランドクルーザー300には5名乗車モデルがあるが、ランドクルーザー250に5名乗車モデルは用意されるだろうか?
グレードと価格は?
ランドクルーザー250の価格は未発表ながら、先代のランドクルーザー・プラドが367万6000円〜554万3000円。上位モデルであるランドクルーザー300が510万円〜800万円。ラングラーはランドクルーザー300のトップグレードよりもスターティングプラスが高いのだ。
どのようなグレード展開と価格設定になるかは未知数ながら、ランドクルーザー300よりは低い価格帯に設定されるのは間違いないだろう。
Saharaに対しRubiconはよりオフロード志向を高めたグレード。ホイールサイズはSaharaの18インチに対し17インチに、タイヤもSaharaの70扁平に対し75扁平とななる。そのため車高も1845mmから1855mmに若干高くなっている。さらに副変速機のギヤ比もローギヤード化され、本格的なオフロード走行にも備える。
また、そのUnlimited RbiconをベースにPHEVとしたUnlimited Rbicon 4xeもラインアップに加えられている。
グレード | 価格 |
Unlimited Sahara 2.0L | 870万円 |
Unlimited Lubicon 2.0L | 905万円 |
Unlimited Lubicon 4xe | 1030万円 |
輸入車であり、ここのところ車両価格の上昇が続いているラングラーだけに、おそらく価格面ではランドクルーザー250との競合はないと思われる。しかし、オフロード車も高級モデルはよりラグジュアリーな方向に進む一方、ラングラーの質実剛健さは、ランドクルーザー250と近い路線であることは間違いない。
日本への導入は今のところ予定されていないが、ランドクルーザー250の2.4Lガソリンターボとそのハイブリッドは北米市場においてUnlimited Lubiconシリーズのライバルになるのではないだろうか?