新型アル/ヴェル 19インチタイヤのヴェルファイアは重量級ミニバンと思えぬハンドリング性能を手に入れた ターボとハイブリッド、どっちがいい?

新型アルファード/ヴェルファイアは、世界で通用するショーファーカーとしての資質をGA-Kプラットフォームの上に構築した。とくに、ヴェルファイアは、さらにボディ剛性を上げてきた。.4L 直4ターボエンジン搭載のヴェルファイアを中心に、その走りの実力をチェック。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)

2.4L直4ターボ+19インチタイヤは走り志向

今回のフルモデルチェンジで唯一19インチタイヤの採用と、2.4Lターボユニットを搭載するヴェルファイアは、アルファード同様にショーファーカーとしてのパッケージングを持ちつつも、走りの性能にもこだわっていることがわかる。新設計されたシャシーは、徹底したボディ強化が行なわれているにもかかわらず、さらにフロント前方の左右斜め方向にクロスバーを追加し補強を加えている。

全長×全幅×全高:4995mm×1850mm×1945mm ホイールベース:3000mm
トレッド:F1600mm/R1600mm
最小回転半径:5.9m 最低地上高:160mm
トヨタ新型ヴェルファイア Z Premier(FF)

最初に乗ったのはFF2.4Lターボユニット搭載モデル「ヴェルファイア Z Premier(FF)」だ。
ドライビングポジションは、全車共通でペダルやステアリングに対して、シートは真っ直ぐ対峙できるようにレイアウトされ、手を伸ばすとステアリングがピタリと手の中に収まる。脇を少し締めるぐらいのポジションとなり小径化された理由も良くわかる。

ベストポジションを得るためにシートは車両中央寄りに寄せられている印象でドアとの間隔は広め。小径化されたステアリングとの位置関係から肘を窓枠に乗せて運転するようなポジションはとりずらい。ステアリングの傾斜は立てられていることで、低重心モデル同様のドライビングポジションとなる。

新型アル/ヴェルはルーズなドライビングポジションを一切許してくれない。

もっとも全グレードに言えることだが、セカンドシートを中心にボディ挙動を安定化させているせいか、ドライバーも後ろ寄りにポジションを取るほど上下動が少なく一体感ある走りを一層味わえる。が、残念なことにテレスコピックは前方向への調整幅は大きいものの逆方向は小さく、後方寄りのポジションはとりずらい。理想の運転姿勢には一点の曇りもないが、ルーズなドライビングポジションを一切許してはくれない硬派ぶりだ。

19インチタイヤを履くヴェルファイアの走りは?

新型ヴェルファイアの走りはボディサイズの大きさを忘れさせる一体感がある。19インチながらもロープロファイルにありがちな上下方向の硬さや、旋回方向に対する非線形な立ち上がりはなく、操作に対しても動きが素直。アルファードの17、18インチ仕様ではステアリング操作に対して初期の動きこそ旋回方向とロール方向のバランスがとれているものの、荷重が加わってくるとロールの進行に合せてGを上手に抜くことで安定感をキープさせるが、手応えも甘くなる。

月販販売台数の目標は8500台(うちアルファード約70%・ヴェルファイア約30%)

これに対して19インチを履くヴェルファイアは初期は穏やかでロールを増すほどにGも手応えも増し、旋回力をキープする。リニアリティがある上に高G領域での操舵追従性も自然で落ち着いているし、ステアリングに伝わる反力もゴツゴツすることなくしっとりと粘り強い。これならベストポジションを得たドライバーは遠慮なく走りに集中でき、ロングドライビングはもちろん、ワインディングも楽しめる。

直進時の微小突起によるわずかな入力の硬さを除けば乗り心地を犠牲にすることなく、無駄な動きや減衰遅れがなく、重量級ミニバンと思えぬハンドリング性能を手に入れた。

旋回中の操舵追従の良さはタイヤの完成度の高さもあるが、それを可能にしてくれたのがもちろん、フロントに入れられたブレースの効果だろう。荷重を与えている状態でもボディの頼りなさは感じられず、ピタリと進路を決めてくれる。ただ、FFモデルに関しては逆にボディが硬すぎるのか、荷重に対して突っ張ってしまっているのか、細かな振動が伝わってくる。フロントフロア回りのわずかな震えが気になった。

ただし、2.4L直4ターボ(270ps/430Nm)は3000rpm以上回したうえでその伸びに期待しないと、良さが味わえない。2.5Lシリーズパラレルハイブリッドの組み合わせとの差は少なく、高回転まで回して8ATのメリハリを活かして初めて良さが感じられるレベルだ。もちろんFF/ノンハイブリッドによる軽量さゆえの良さもある。

2.5L・HEVモデルがお勧め

トヨタ・ヴェルファイア Executive Lounge(E-Four)
ボディカラーはブラック 車両価格:892万円

重量の増す2.5L・HEVモデル(ヴェルファイアの最上級モデル「Executive Lounge E-Four])に乗ると、ノイズも振動もピタリと収まり、セカンドシート以降がが持つ静粛性とフラット感がより味わえる。フロント周りが強化されたヴェルファイアにとっては、このHEVモデルこそが開発の中心的存在であったに違いない。

重量増によって強靱化されたボディとベストマッチングを見せたHEV・4WDモデルは無駄な振動を押さえ込んだばかりではなく、乗り味としても大きな効果を発揮した。リヤに駆動システムを積むことで重量バランスは向上し、前後方向の動きに無駄はないし、旋回方向の反応も良く感じられる。ステアリングの操作に対して、リヤがピタリとついてきてくれることで横揺れが残ることがなく、ひと回り小さなクルマに乗っているような感覚でドライブできる。

タイヤサイズは255/55R19 ダンロップSPスポーツマックス060

全車共通で快適性と安定性を両立させているなかで、ヴェルファイアは19インチタイヤの採用とボディ強化を加えた上で、サスペンションを専用セッティングし、ハンドリング性能をアップデート。結果、無駄な動きを削ぎ落したことで、アルファードが持つショーファーカーとしての魅力をそのままに、走りの性能を手に入れた。HEV・4WDモデルに限って言えば、セカンドシートに乗る人にとってもヴェルファイアのスッキリとした乗り味は悪くないはず。

パッケージングされた全体バランスで見ると、安定感、姿勢、旋回トレース性とも、HEVが良い。なかでも細かなバイブレーションを感じさせない質感の高いコンフォート性の差は明らかだ。ゆえにスペックだけ見れば期待の大きなターボモデルだったが、軍配は最新で緻密な制御による、トルクフィールと滑らかさで、2.5L・HEVが上。FFでぶん回し、走って初めてキャラが活きるのみ、と見た。

私が選ぶなら、遠慮なくドライブができて広大な快適空間が共有できるヴェルファイアを選ぶ。次回はロングドライブとともにセカンドシートの乗り味も確かめることにする。

トヨタ・ヴェルファイア Z Premier(FF)
全長×全幅×全高:4995mm×1850mm×1945mm
ホイールベース:3000mm
車重:2180kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R ダブルウィッシュボーン式
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ
型式:T24A-FTS
排気量:2393cc
ボア×ストローク:87.5mm×99.5mm
圧縮比:ー
最高出力:279ps(205kW)/6000rpm
最大トルク:430Nm/1700-3600rpm
燃料供給:DI+PFI(D-4ST)
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:75ℓ
トランスミッション:8AT(Direct Shift-8AT)
WLTCモード燃費:10.3km/ℓ
 市街地モード 7.1km/ℓ
 郊外モード 10.6km/ℓ
 高速道路モード 12.6km/ℓ

車両価格:655万5000円
トヨタ・ヴェルファイア Executive Lounge(E-Four)
全長×全幅×全高:4995mm×1850mm×1945mm
ホイールベース:3000mm
車重:2250kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R ダブルウィッシュボーン式
駆動方式:E-Four
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:A25A-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×100.4mm
圧縮比:ー
最高出力:190ps(140kW)/6000rpm
最大トルク:236Nm/4300-4500rpm
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:60ℓ
フロントモーター
5NM型交流同期モーター
 最高出力:182ps(134kW)
 最大トルク:270Nm
リヤモーター
4NM型交流同期モーター
 最高出力:54ps(40kW)
 最大トルク:121Nm
バッテリー:ニッケル水素電池
 電池容量:5Ah
トランスミッション:電気式無段変速機
WLTCモード燃費:17.5km/ℓ
 市街地モード 15.3km/ℓ
 郊外モード 19.0km/ℓ
 高速道路モード 17.6km/ℓ

車両価格:892万円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…