エコと走りは両立するのか? 環境性能に優れたミシュランタイヤ『eプライマシー』と『パイロットスポーツEV』をクラウンとアイオニック5で試してみた!

GKNドライブジャパン(栃木県栃木市)のテストコースで、ミシュランが主催する「サステナブル試乗会」が開催された。この試乗会はいわゆる新製品のテストドライブではなく、既存の製品を試乗することでミシュランの考える、「これからのタイヤの在り方」を理解することが狙いだ。
PHOTO:ミシュラン(MICHELIN)/MotorFan.jp

ちなみにミシュランはそのコミットメントとして、「2050年までにすべてのタイヤを持続可能なタイヤにする」と発表している。

ミシュランのHV・EV専用タイヤ『eプライマシー』と『パイロットスポーツEV』。

タイヤの素材といえば主原料となる天然ゴムを筆頭に、合成ゴム、金属、繊維、カーボンブラックやシリカといった「強化材」、樹脂(可塑剤:かそざい)、硫黄(ゴムに弾性や耐熱性を与えるために硫黄を加えること)などが挙げられるが、ミシュランいわくこれはごくごく代表的なもの。現在のタイヤにはおよそ200種類以上の素材が使われており、2050年までにこれを再生能可能素材やリサイクル素材と置き換えることで、タイヤにサステナビリティ(持続可能性)を与えるという。

参考までに言うとミシュランは2022年時点で、既にタイヤの原材料においてその約30%を、天然素材もしくはリサイクル素材に置き換えている。

テストコース(GKNドライブジャパン)に用意されたミシュランタイヤ装着のテスト車両。

今回用意されたメニューは、コースの両側にあるバンクを使った高速周回路での「快適性およびハンドリング性能」の確認と、ウェット路面を使った「ブレーキング比較」および「ハンドリング比較」の3つだ。それぞれに現行ミシュラン製品を履かせて、その性能を体験した。

21インチの大径タイヤ……クラウンクロスオーバー×eプライマシー

クラウンに純正採用されたeプライマシー。225/45R21という大径サイズだ。

高速周回路での「快適性・ハンドリング性能」確認では、まず新型クラウンクロスオーバー(2.5ハイブリッド)とミシュラン『e・PRIMACY(イー・プライマシー)』の組み合わせを試した。ご存じ両者は、純正採用の間柄だ。

eプライマシー
eプライマシー
eプライマシー

さてクラウンクロスオーバーといえば性能というよりデザイン性の追求から、「21インチ」の大径タイヤを純正採用したことが話題になった。そしてこの「見た目最優先」なチョイスに対してミシュランは、相反する低燃費性能並びに静粛性、そして耐摩耗性といった条件を合わせ込んできたわけだが、果たしてテストコースで試乗したその印象は、拍子抜けするほど快適だった。

テスト車両として用意されたクラウンクロスオーバー。

静粛性も乗り心地も文句なし! 動きも素直で軽快だが手応えやや薄い

時速100km/hで走らせた高速周回路でまず感じたのは、静粛性の高さだ。そもそもクラウンは現代的なハイブリッド4WDであり静粛性が高いのだが、なんせタイヤは21インチだ。そして逆を返せばこうした車両側の静粛性に負けないくらいタイヤ側でも、ノイズが抑えられていた。

クラウンクロスオーバーで周回路を走る筆者。
周回路では曲率の異なる2つのバンクがある。

具体的にはタイヤが路面を打ちつけるロードノイズが目立たず、空気が溝を通り抜ける時の高周波が、きちんとカットされている。
もちろん室内が、防音室のように静かだというのではない。しかしその音量・音圧は小さく、一定して低い。ここにはタイヤの接地面における溝比率を一定にする、「サイレントリブテクノロジー」が効いていると思われる。

高い静粛性に対して、乗り心地も非常によい。低転がり抵抗タイヤということを意識させないくらい路面をしっとりつかんで、足周りとの剛性バランスも合っている。テストコースは路面状況がかなり整っていて、これを全て鵜呑みにはできない。しかし筆者がデビュー当時に乗ったときより各部もこなれているようで、全体的にはとても快適な乗り味と乗り心地が得られていた。

直線ではレーンチェンジでクルマの動きやタイヤのグリップをチェック。

逆に直線路でレーンチェンジを行い、ふたつのバンクを通り過ぎた印象としては、もう少しだけ剛性感が欲しいと感じた。現状でも操舵に対する反応は素直で、軽いタッチでラインを変えることができている。バンクでも荷重が掛かった領域では、タイヤがシッカリと車体を支えてくれるのだが、ちょっと軽やか過ぎるのだ。

たとえばバンクの進入では、タイヤに荷重が乗り切るまでの過渡領域で、やや手応えが薄い。そして踏ん張り感が少し弱い。
ここにはクラウン クロスオーバーのEPS特性(電動パワステ)も関係しているのかもしれない。もう少し操舵初期の安定感が出せると、安心して高速コーナーにアプローチできると感じた。

クラウンクロスオーバーによる周回路走行の様子はこちら。

アイオニック5×パイロットスポーツEVはリニアな挙動が気持ち良い

ヒョンデ・アイオニック5はスポーツタイヤ『パイロットスポーツ』を装着する。

驚いたのは、ヒョンデ・IONIQ(アイオニック)5と『PILOT SPORT EV(パイロット スポーツ イーブイ)』の組み合わせだった。こちらも標準装着タイヤ(サイズは255/45ZR17)だが、その操作性が抜群だったのだ。

パイロットスポーツEV
パイロットスポーツEV
パイロットスポーツEV

操舵時のグリップの立ち上がり方は、急すぎず遅すぎず、惚れぼれするほどリニア。そして立ち上がったコーナリングフォースも、入力した荷重にわかりやすく比例している感じがする。

もちろんここには、ピュアEVであるアイオニック5の低重心さや、シャシー性能の高さも効いているが、なによりタイヤが路面を捉える感じが素晴らしい。きっとこのタイヤなら、多くのドライバーが自分の技量に合わせて気持ち良く走れるだろう。

対して乗り心地は、確かにE・プライマシーの方がしなやか。しかしその剛性の高さが、突き上げ感には転じていなかった。
同じくロードノイズも、大きく差が付いているようには思えなかった。

アイオニック5で周回路をドライブする筆者。
バンクに進入するアイオニック5。

HV・EV専用タイヤとして環境性能だけでなくコンフォートもスポーツも◎

クラウンクロスオーバー×eプライマシー

総じて言えるのは、eプライマシーとパイロットスポーツEVが、双方共にEVやハイブリッド車用タイヤとして転がり抵抗で高ランクを付けながらも、プライマシーはプライマシーとして、パイロットスポーツはパイロットスポーツとしての性能を発揮していたことだ。

アイオニック5×パイロットスポーツEV

どちらもこれからの自動車が必要とする環境性能を標準装備しているから、あとはコンフォートを取るか、スポーツ性を取るかで選べばよいだろう。

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…