【マイナーチェンジしたフォルクスワーゲン・パサート】娘の彼氏に乗ってもらいたいクルマのナンバー1!?

フォルクスワーゲン パサート
VWパサート
2015年の登場以来、7年目にしてマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン・パサート。最新の運転支援システムを手に入れて、前後デザインをリフレッシュ、さらにディーゼルエンジンのトランスミッションを7速に多段化するなど随所に改良の手が入っている。
PHOTO&TEXT●長野達郎(NAGANO Tatsuo)

運転支援システムもインフォテイメントシステムも最新世代に

自分の娘が「結婚したい人がいる」と言って彼氏を自宅に招くことになった際、父親としてはその彼氏がどんなクルマに乗っているかは重要なポイントとなる。

もしボロボロの軽自動車に乗ってやってきたら、「おいおい、君は娘を本当に養っていけるのかね!?」と彼氏の甲斐性を疑うことになるだろう。

もし高級スーパーカーに乗ってやってきたら、1回運転させてもらいたいと思いつつ、「怪しい商売でもやっているんじゃないだろうな!?」と彼氏の素性が心配になるだろう。

では、フォルクスワーゲン・パサートに乗ってやってきたらどうだろうか。「うん、なかなかしっかりしてそうな男じゃないか」と、きっと彼氏に好印象を抱くはずだ。なんならちょっと涙目になりながら、「娘をよろしく頼むぞ」と2人の門出を祝福してしまうことだろう。

娘も息子もいない私はそんな妄想を頭の中で繰り広げていた。パサートに乗っている人の中に、悪い人はいないような気がする。パサートがあおり運転をしている姿が、あなたには想像できるでしょうか。

そんな「誠実」の2文字を体現しているかのようなパサートだが、4月にマイナーチェンジを受けたモデルに試乗する機会があった。現行型は2015年の登場だったので、7年目を迎えてのマイナーチェンジである。

前後デザインをリフレッシュ。VWのエンブレムも新デザインに

フォルクスワーゲン パサート
フォルクスワーゲン・パサート TDI エレガンス アドバンス(534万9000円)
フォルクスワーゲン パサート
セダンのほかヴァリアント、オールトラックもランナップする。

マイナーチェンジで変更されたのは、フロント&リヤバンパーとラジエターグリルだ。さらにフォルクスワーゲンのエンブレムもシンプルな新デザインのものに変更され、リヤではモデル名が中央に移設されている。

フォルクスワーゲン パサート
グリルのラインが3本から2本になったほか、バンパーの開口部も凝った形状に変更された新型。
フォルクスワーゲン パサート
「PASSAT」のロゴが中央のエンブレム下に移動したのが新型の特徴。テールライトの光り方やマフラーエンドのクロームの形状も変わっている。

今回試乗したのはセダン。売れ筋はヴァリアントの方だと思うが、控えめなセダンのルックスにも好感が持てる。若い頃はとんこつラーメンに目がなかったが、最近は塩ラーメンもいいなと思えるようになってきた私。クルマのデザインもこってり系が主流の今日この頃だが、そんなご時世だからこそ、パサートセダンのクリーンなスタイルが新鮮に感じられるというものだ。

パサートセダンのボディサイズは、全長4790mm×全幅1830mm×全高1470mm。マイチェン前のモデルと比べると、前後デザインの変更に伴い5mmほど長くなった。

フォルクスワーゲン パサート
全長4790mm×全幅1830mm×全高1470mmというスリーサイズのパサート。いわゆるDセグメントに位置し、輸入車ではBMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラス、日本車ではトヨタ・カムリやホンダ・アコードなどが同じくらいのボディサイズとなる。

室内は、そうしたスリーサイズから想像するよりもずいぶんと広く感じられる。後席に座ると、足元スペースはゆとりがたっぷり。BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスとほぼ同じボディサイズのパサートだが、スペース効率に優れるFFベースのモデルということもあり、室内空間の広さではリードしている。

フォルクスワーゲン パサート
後席は天井も足元も余裕たっぷり。
フォルクスワーゲン パサート
上級グレードの「エレガンス アドバンス」にはナパレザーシートが標準装備。

広いといえば、パサートはラゲッジスペースも広大だ。今回試乗したセダンでは通常時に586L、後席をすべて倒すと1152Lに拡大される。後席の背もたれは荷室側からレバー操作で簡単に倒せたり、中央部にはトランクスルー機構も設けられていたり、さらには電動トランクリッドも装備していたりと、至れり尽くせりだ。

フォルクスワーゲン パサート
特に奥行きに余裕がある荷室。トランクリッドは足を出し入れするだけで開閉可能な電動式を全車に標準装備する。

インテリアでは、ティグアンやアルテオンにも搭載されている最新世代のインフォテイメントシステムが採用されたのが目を引く。また、3ゾーンのフルオートエアコンは、タッチ&スライドで操作が可能になった。これも最近のフォルクスワーゲン車では定番の装備だ。細かいところでは、ダッシュパネル中央上部のアナログ時計は廃止され、バックライト付きのパサートロゴが配置された。

フォルクスワーゲン パサートのインパネ
液晶デジタルメーター「Digital Cock Pit Pro」や最新世代インフォテイメントシステムを採用する新型パサート。「トラベルアシスト」の起動ボタンが備わるステアリングホイールも新デザインで、VWのロゴも新しい。
フォルクスワーゲン パサート
フルデジタルメーターは速度計&回転計のほか、表示切り替えが可能。

フォルクスワーゲン パサート
このように全面に地図を表示させることもできるし、中央のみ地図にすることもできる。
フォルクスワーゲン パサート
タッチ操作でコントロールする空調パネル。スライドすると、一気に温度を上げ下げできる。
フォルクスワーゲン パサート
これまでアナログ時計が鎮座していたダッシュパネル中央に収まるのは、バックライト付きのパサートロゴ。

7速に多段化されて魅力を増した2.0Lディーゼル。図太いトルクが頼もしい

新型パサートに搭載されるのは1.5L直列4気筒ガソリンターボエンジンと、2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンの2種類だ。

フォルクスワーゲン パサート
2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力:140kW(190ps)/3500-4000rpm、最大トルク:400Nm/1900-3300rpmを発生。新型ではトランスミッションが新たに7速DSGになった。
フォルクスワーゲン パサート
カバーを外すとご覧の通り。

ガソリンターボエンジンは、これまで1.4L直列4気筒(150ps/250Nm)と2.0L直列4気筒(220ps/350Nm)の2種類がラインナップしていたが、それが1.5L直列4気筒(150ps/250Nm)に一本化された。

190ps/400Nmを発生するディーゼルターボエンジンに変更はないが、組み合わされるトランスミッションがガソリン車同様の7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)に変更されたのがトピックだ(これまでは6速DSGだった)。

試乗車は、2.0Lディーゼルターボを搭載した最上級グレード「TDI エレガンス アドバンス」。走り始めると、やはりトルクフルなディーゼルは街乗りにピッタリだと再認識させられた。新採用の7速DSGのシフトチェンジも小気味よく、スムーズな加速を後押ししてくれる。軽快なガソリンターボも魅力的だが、自分が選ぶならやっぱりディーゼルだ。

フォルクスワーゲン パサート
WLTCモード燃費は、1.5Lガソリンターボが15.1km/Lなのに対して、2.0Lディーゼルターボは16.4km/L。ハイオクと軽油の価格差も考えると、2.0Lディーゼルターボがますます魅力的に感じられる。

最新運転支援システム「トラフィックアシスト」は全車に標準

新型の変更点の目玉の一つは、最新の運転支援システムである「トラフィックアシスト」が全車に標準設定されたこと。これは設定した車速の範囲内(0〜210km/h。最低設定速度は30km/h)で先行車に追従走行してくれるアクティブクルーズコントロールと、車線を維持するようにステアリング操作を支援してくれるレーンキープアシストシステムが一体となったもの。これがあるとないとでは、高速道路などで長距離を走行する際の疲労度が段違いだ。

トラフィックアシストでいいなと思うのは、操作が簡単なこと。ステアリングに設けられた起動スイッチを押すだけでシステムが作動してくれるのだ。他メーカーのシステムでは、起動スイッチを押した上でさらにセットボタンを押す必要があるものが多い。

新型パサートはインフォテイメントシステムも常時コネクテッドの新世代のものを採用する。窓の閉め忘れや車両の駐車位置などをスマホで確認できるだけでなく、車両のドアの解錠・施錠もスマホで操作できるようになった。

また、今回の試乗は昼間だったのでその恩恵にあずかることはできなかったが、LEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」も全車に標準装備される。フロントカメラで対向車や先行車を検知すると、ヘッドライト内のLEDを個別に制御して最適な配光を実現してくれるという。

フォルクスワーゲン パサート
写真のボディカラーはパイライトシルバーメタリック(銀)。そのほか、新色のアクアマリンブルーメタリック(青)、オリックスホワイトマザーオブパールエフェクト(白)、ディープブラックパールエフェクト(黒)の計4色がそろう。もう少し選択肢が多いとうれしいのだが。

新型パサートセダンの価格は、429万9000円〜534万9000円。また、ヴァリアント(449万9000円〜584万9000円)のほか、クロスオーバーSUVのテイストを備えたオールトラック(552万9000円〜604万9000円)もラインナップする。

新型ゴルフの陰に隠れがちではあるが、デジタル化が進んだゴルフよりもパサートはなじみやすく、また室内の広さはゴルフを確実に上回っている。使い勝手の良いセダンを探している方、もしくは結婚の申し込みに行こうと思っている方(?)は、パサートを一度チェックしておいて損はない。

「フォルクスワーゲン・パサート TDI エレガンス アドバンス」主要諸元

■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4790×1830×1470mm
ホイールベース:2790mm
車両重量:1560kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
燃料タンク容量:66L(軽油)
■エンジン
型式:DFH
形式:水冷直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0mm×95.5mm
最高出力:140kW(190ps)/3500-4000rpm
最大トルク:400Nm/1900-3300rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
■駆動系
トランスミッション:7速AT
駆動方式:FF
■シャシー系
サスペンション形式:Fマクファーソンストラット式R4リンク
タイヤサイズ:235/45R18
■燃費
WLTCモード 16.4km/ℓ
 市街地モード 12.7km/ℓ
 郊外モード 16.1km/ℓ
 高速道路モード 18.9km/ℓ
■車両本体価格
534万9000円
■オプション装備
フロアマット(テキスタイル)3万3000円

VWアルテオン・シューティングブレーク

VWアルテオン・シューティングブレーク パサート・ヴァリアントではなくアルテオンを選ぶ理由は?

マイナーチェンジを受けたタイミングで日本にもアルテオンのシューティングブレークが導入された。VWブランドらしくない(!?)色気のあるアルテオン・シューティングブレーク。その存在理由を試乗して確かめた。 TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

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著者プロフィール

長野 達郎 近影

長野 達郎

1975年生まれ。小学生の頃、兄が購入していた『カーグラフィック』誌の影響により、クルマへの興味が芽生…