最後の“ラリーセリカ”! トヨタワークスのカストロールカラーが映える! ST205型セリカGT-FOURでレプリカライフを満喫!!【WRCレプリカのススメ】

ST185とST205の二世代のセリカGT-FOUR。どちらのレプリカもプロショップ「Prototype」による施工。
トヨタは1970年代から1990年代まで、WRCにおいて長くセリカを主戦マシンとしてきた。その“ラリーセリカ”の最後を飾ったのがST205型セリカGT-FOURだった。当時のワークスカラーであるカストロールカラーを纏い1994年と1995年の2年間を戦ったこのセリカは、レースゲーム「セガラリーチャンピオンシップ」の主役マシンの一方としても人気だ。そんなST205型セリカGT-FOURのワークス仕様レプリカを紹介しよう。
PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp

WRCのトップカテゴリーが度重なる重大事故によりそれまでのグループBから、当初予定されていたグループSもキャンセルされ、より市販車に近いグループAで争われることになったのが1987年シーズンから。
1986年のシーズン中に急遽なされたこの決定は参戦チームの次期主戦マシンの構想を根底から覆すことになった。トヨタは1986年に発売された4WDマシンのセリカGT-FOUR(ST165)を投入する予定としたが、その開発期間の中継ぎとしてスープラ(MA70)を投入した。

1987年からWRCのグループA戦線に投入されたスープラ(MA70)。トヨタワークス最後のFRマシンで、イベントを限定しつつ1989年まで使用した。
1988年に投入されたセリカGT-FOUR(ST165)は1990年にトヨタ(=日本車)初のWRCタイトル(ドライバーズチャンピオン)を獲得。

そのセリカは1990年にカルロス・サインツのドライブでドライバーズチャンピオンを獲得し、トヨタ初=日本初となるWRCの選手権タイトルを手にすることになった。
1991年には新型セリカGT-FOUR(ST185)を投入し、1992年にやはりカルロス・サインツがドライバーズチャンピオンに輝き、翌1993年にはマニュファクチャラーズチャンピオンも獲得して初のダブルタイトルを、さらに1994年はダブルタイトル連覇という偉業を成し遂げた。

1993年〜1994年のダブルタイトル連覇を成し遂げたトヨタワークス。1993年からメインスポンサーにカストローがつくのだが、そのためドライバーはレプソル(スペインのオイルメーカー)の支援を受けるカルロス・サインツが離脱し、ランチアワークスで活躍したユハ・カンクネンとディディエ・オリオール(写真)を起用。1993年はカンクネン、1994年はオリオールがドライバーズタイトルを獲得する。

1993年からトヨタワークスをカストロールがスポンサード。トヨタとカストロールの組み合わせはWRCから、その後のサーキットレースまで長く続くことになるのだが、それはまた別の物語。
トヨタは1994年のダブルタイトルを防衛する一方で、次期マシンである新型セリカGT-FOUR(ST205)を投入する(ただし、カンクネン車のみでチャンピオンを争うオリオールは信頼性の高いST185を継続使用)。

1994年から実戦投入されたST205型セリカGT-FOUR。当時のWRCマシンにあって最も大きく思いボディと、複雑精緻なスーパーストラットサスペンションが足を引っ張り、熟成されたコンポーネンツを小柄なマシンに搭載するフォード・エスコートRSコスワース4×4、スバル・インプレッサWRX、三菱ランサーエボリューション勢に対し苦戦を強いられることに……。

しかし、このセリカGT-FOUR(ST205)は、大型化したボディによる重量増と取り回しの悪さ、そして新機構のスーパーストラットサスペンションがラリーには不適だったことから、小型軽量なライバル達に対して大苦戦を強いられることになる。

最後の“ラリーセリカ”の光と影、評価の虚実を詳細に紹介した1冊。

とはいえ、トヨタのワークスカーとしてWRCを戦った最後のセリカであり、WRCのマシンが小型セダンやハッチバックに席巻されていく中で最後に残ったクーペということもあり、根強い人気があるのもまた事実。また、その人気の一端には「セガラリーチャンピオンシップ」があるのも間違いないだろう。

セリカ最後の4WD+ターボ

1986年にデビューしたST160系からセリカはそれまでのFRからFFへと転換。そのスポーツグレードとしてターボ+4WDで武装した「GT-FOUR」が設定され、WRCにもワークスマシンとして採用された。
そんなFFセリカとしての三代目(通算では六代目)がST200系で、やはり4WDターボのGT-FOURが設定された。

NAエンジンモデルは3S-FEと3S-GEを搭載したSS-IとSS-IIを設定(ST202)。
ターボエンジンの3S-GTEと4WDを組み合わせたGT-FOUR(ST205)。
GT-FOURはさらにWRCホモロゲーションモデルが限定発売された。

1997年にWRCでWRカー(ワールドラリーカー)規定がスタートしたことからセリカはWRCワークスマシンの任を解かれ、1999年にフルモデルチェンジしてST230系に移行した際に4WDターボは消滅。GT-FOURの名はかろうじて三代目カルディナの4WDターボモデル(T240W系)に受け継がれた。その後、GRヤリスが登場するまでトヨタに4WDターボのスポーツモデルは長らくラインナップされなかった。

七代目セリカ(ZZT230系)はFFのみで、ターボや4WDを設定しなかった。
T240W系のカルディナに設定されたGT-FOURはセリカ譲りの4WDターボ。
トヨタ久々の4WDターボスポーツとなったGRヤリス。

セリカGT-FOUR(ST205)1995年ラリー・オーストラリア仕様

恩田岳史さんが所有するセリカもそんなGT-FOUR(ST205)のWRCレプリカの1台。ベースはWRCホモロゲーションモデルの限定車「セリカGT-FOUR WRC」で、ハイマウント化された大型リヤスポイラーが外観上の最大の違いとなっている。

セリカGT-FOUR(ST205)のトヨタワークスレプリカ。1995年のWRCラリー・オーストラリア仕様だ。

このレプリカセリカは、トヨタワークスがWRCでST205型をメインに使用した1995年の第6戦ラリー・オーストラリア仕様で、ゼッケン2はこのラリーで3位に入ったユハ・カンクネン/ニッキー・グリスト組のもの。

このセリカは、恩田さんが長らく懇意にしているプロショップ「Prototype(プロトタイプ)」にたまたま入庫していたものを気に入って購入したという。
元々は1994年のWRC最終戦(第10戦)のRACラリー仕様(ゼッケン1、ユハ・カンクネン仕様)だったものを、ステッカーが傷んできたことから作り直したものだ。もちろん、新旧共に施行はプロトタイプによるもの。

レプリカ好きが集まる「プロトタイプ」。セリカとランサーエボリューションは店長とスタッフの愛車。
Prototype
所在地:埼玉県春日部市梅田本町2-37-5
営業時間:11:00~19:00
定休日:毎週水曜日、第一・三木曜日
電話/FAX:048-753-1240
http://www1.odn.ne.jp/prototype/

トヨタに日本メーカー初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらした名車! ST185型セリカGT-FOURをカストロールカラーに!!【WRCレプリカのススメ】

WRC(世界ラリー選手権)において日本メーカーとして初めてチャンピオンを獲得したのがトヨタだ。特に1988年から実戦に投入されたセリカGT-FOURのシリーズは、当時絶頂とも言えたランチアワークスのデルタと真っ向勝負を繰り広げ、ついに栄光の座を手に入れるに至った。それだけに印象深いグループAセリカのレプリカマシンを紹介しよう。 PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp

このレプリカの圧巻はやはりボンネット先端に鎮座する4灯ライトポッド。本物はバンパー部にもさらに2灯備わる6灯仕様だが、純正のフォグランプを生かした4灯としている。また、中央2灯の間にトヨタのエンブレムを配置するなど、オリジナルの工夫を施しつつレプリカの雰囲気を出している。

4灯ライトポッドを設置するため、ボンネットの開閉はボンネットピン仕様に変更されている。追加のステーやスプリングで、風圧を受けてボンネットが開いてしまわないようにしっかりと固定している。

また、エクステリアではルーフに2本の無線アンテナを立てているのが実に本物っぽさを演出している。実際に無線を搭載しているわけではないのであくまで飾りだが、こうしたこだわりが雰囲気を高めている。
他にもTTE(TOYOTA TEAM EUROPA)のロゴ入りカーボン調のエアロミラーを装着していたり、リヤスポイラーの裏側にもMarlboroのステッカーを貼ってあったりと芸が細かい。

ルーフに2本の無線アンテナを装着。
カーボン調のエアロミラー。
リヤスポイラー裏にMarlboroロゴ。

ホイールはワークスと同ブランド、セリカではおなじみのO・Zをセレクト。225/50R16サイズの横浜ゴム・アドバンAD08を組み合わせていた。ホイールは一時スピードラインを装着したこともあったが、今のO・Zに落ち着いたそうだ。
ブレーキディスクはフロントがTRD製のスリット入り、リヤがディクセルとなっている。
マフラーはプロトタイプオリジナルのワンオフ品を装着。楕円形状とプロトタイプロゴが特徴だ。

O・Zの16インチアルミホイールに225/50R16サイズのアドバンAD08を装着する。
プロトタイプオリジナルのワンオフマフラーを装着。楕円形状の出口とプロトタイプロゴが特徴。
エンジンルームは特にモディファイは施されておらずノーマル然とした様子。

ロールケージを組んだ2名乗車仕様

インテリアではメーターはキロメートル(280km/h)とマイル(180mile/h)併記のTTEロゴ入りフルスケールメーターを装着したほか、Defiの4連メーターをダッシュボードに設置、メーターやコンソール、ステアリングコラムのパネルをカーボンとするなどレーシーな雰囲気となっている。

ノーマルの雰囲気を残しつつ要所をカスタムしたインテリア。

ロールケージは前席のサイドバーに加え、後席は斜行バーを2本設置して2名乗車仕様に。運転席はレカロ、助手席はOMPのフルバケットシートを装着している。普段は使用しないが、どちらにもサベルトの4点式シートベルトを用意している。

フロントシートはどちらもフルバケットシートに。
ロールケージにはヘルメットハンモックを装着。

恩田さんのレプリカセリカ、これまで大きなトラブルはブレーキマスターが戻らなくなったくらい。こまめに動かしていくのが維持していくコツだそうだ。この日も、プロトタイプの店長に誘われてグループAレプリカマシンが集まるツーリングに馳せ参じた。

ちなみに、このセリカは縁あって2013年に発売されたプレイステーション3用レースゲーム『グランツーリスモ6』のTVCMに出演しているという。車列の後よりにチラリとライトポッドを装着したセリカが映っている。YouTubeなどでチェックしてみてはいかがだろうか?

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