コンパクトなボディに魅力が詰まった万能モデル「トヨタ・シエンタ」【最新コンパクトカー 車種別解説 TOYOTA SIENTA】

2代目の登場以来平均月間販売台数トップ3をキープし続けている「トヨタ・シエンタ」。日本の日常生活にハマるサイズ感とデザイン、そして使い勝手はまさに「国民車」と言えるだろう。運転席からの視界は大きく広がり安心感は高く、ボディ剛性の高さもあってコーナリング時のロール感やハンドリングの感触は安定している。
REPORT:河村康彦(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:新 唯

運転しやすい絶妙なサイズ感、アイポイント高めで視界良好

トヨタの・・・と言うよりも「日本のミニバンの裾野を担うモデル」というフレーズで紹介しても、そのキャラクターを見事に言い表していると言えそうなのが、シエンタというモデル。

エクステリア

全体的にはスクエアなフォルムながら、角を丸くして親しみやすさも表現。「Z」系はBi-Beam LEDヘッドランプとLEDライン発光テールランプが備わり、少し趣の異なる外観を実現する。撮影車はオプションのアルミホイールを装着。最小回転半径は5.0m。

4.3mに満たない全長はもとより1.7mを割り込んでいわゆる〝5ナンバー枠〞へと留めた全幅も、日本の環境に強く配慮をしたことが伺えるもの。加えて、リヤドアをスライド式としたり3列シートを設定したりと、多くの日本のユーザーの好みをしっかり押さえている点からも、これぞ現代の〝国民車〞という印象が強く漂う1台であると、まずはそのように紹介することができそうだ。

最新モデルの登場は2022年で、〝TNGA〞と呼ばれる新しいプラットフォームを採用したことがメカニズム上の特徴。パワートレインにトヨタが誇るストロングハイブリッドシステムとともに、純ガソリンエンジン仕様も設定するのは従来と同様。が、1.5ℓのエンジンはハイブリッドシステムに組み込まれるものも含め3気筒の高効率な新世代のユニットへと完全に刷新され、4WD仕様は後輪の駆動をモーターで行なう〝E-FourE〞方式として、ハイブリッドバージョンのみに設定をされている。

乗降性

〝シカクマル〞をモチーフにしたというスタイリングは、ちょっと奇をてらったディテールが目に付いた従来型と比べると、より多くの人に抵抗なく受け入れられそうな仕上がり。一部に「某ヨーロッパ車と似ている」という指摘があってそんなコメントにも一理があると思えるのは確かだが、そうしたモデルと国内で遭遇する可能性はなかなか低いというのも事実だ。LEDがライン発光するテールランプや、大型のサイドプロテクションモールなどがむしろ個性的とも受け取れる。

インストルメントパネル

水平基調のインパネデザインに、「Z」系はファブリック巻きを採用。落ち着きのある雰囲気を演出する。「X」系を除いて8インチのディスプレイオーディオが標準装備され、写真の大画面10.5 インチ仕様は「Z 」系と「G 」系にオプション設定。

水平基調で上面を低くフラットにデザインしたダッシュボードやちょっと高めのアイポイントによって、ドライバー席へと乗り込んでまず感じられるのは各方向への抜群の視界の広がり。3列7人乗りモデルに大人が定員乗車すればさすがにそれなりの窮屈感は免れないものの、それを我慢すればこのコンパクトサイズのモデルで合法的にそれが可能になるというポテンシャルは、やはり大したものと感心せざるを得なくなる。

居住性

こうしたモデルゆえ、そこに高い〝走り〞の性能を期待する人は少ないだろうが、市街地から高速道路、そしてワインディングロードなどさまざまなシチュエーションを走行すると、動力性能にこそ見るべきポイントは多くはないが、ボディの剛性感もなかなか高く、コーナリング時にも過大なロール感やハンドリングの不自然さを伴わないシエンタの総合的な能力は、なかなか侮れないことを強く実感した。それでも、ふたつのパワートレインを乗り比べると、ハイブリッドバージョンの方により大きな余裕が感じられる。

うれしい装

7人乗りの場合は3列目シートを格納し、2 列目シートタンブルアップした状態、5人乗りであれば2列目シートを格納した状態でフラットフロアを実現。ひとりであれば車中泊にも対応できる広さだ。
月間販売台数   10975台(22年11月〜23年4月平均値)
現行型発表    22年8月
WLTCモード燃費  28.8km/l ※「HYBRID X」の5人乗り/FF車

ラゲッジルーム

ミニバンが気になりつつも日常のほとんどのシーンで乗るのはひとりかふたりという使い方をするユーザーにとって、見ても乗ってもそうした場面においてまったく不相応と捉えられることのないこうしたモデルへの引き合いは、この先も途切れることはなさそうだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.150「2023-2024 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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