【新型プジョー408を○△✕で判定】◯はサイズと個性的なデザイン!「×」は運転席のアレだった。

中国やマレーシア、アルゼンチンなど新興国向けに投入されてきたプジョー408は、3代目になり、欧州や日本などを含めた世界戦略車といえるモデルになった。初代、2代目までの典型的なセダンから、セダンとファストバック、SUVを融合させたような新種のクロスオーバーモデルとして誕生。SUV、クロスオーバーブームに押され、世界的にセダン市場が縮小する中、スタイリングに新鮮味をもたらすこうしたクロスオーバーモデルは増えつつある。ただのデザインコンシャスなモデルなのか、実力派なのか、プジョー408の○△×を探ってみた。

TEXT&PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

【新型408のココが◯】日本で扱いやすいサイズと外装デザイン

近年のプジョーのデザイン・アイデンティティであるライオンの“牙”を感じさせるフロントマスク

4ドアファストバックを謳うプジョー408は、「EMP2.version3」というべきプラットフォームをベースに仕立てられている。308や3008、5008などのほかシトロエンやDS各モデルでお馴染みのモジュラープラットフォームだ。

ボディサイズは、全長4700×全幅1850×全高1500mmと、確かに真性SUVを名乗るには低く抑えられている。SUVシリーズである「4008」を名乗るには確かに全高が低すぎるし、全高を高くして明らかにSUV化すると、3008と5008とカニバルこともありそうだ。

308の次のモデルを単なるセダンやハッチバック、SUVとせずに4ドアファストバックとしたのは、あらゆる隙間(ニッチ)埋めるように新種を送り出してきたメルセデス・ベンツやBMW(SAC=スポーツ アクティビティ クーペ)などのクロスオーバーSUV戦略の影響もゼロではなかったのだろう。

プジョー408の全高はSUVほど高くなく、4ドアファストバックを謳う。

なお、2列シートSUVのプジョー3008は、全長4450×全幅1840×全高1630mm、3列シートSUVのプジョー5008は、全長4640×1840×全高1650mmで、5008と比べても新型408は、60mmも長くなっている。

ホイールベースの長さは、5008が2840mm、408が2790mm、3008が2675mmという順。最小回転半径は、408と3008が5.6m、ロングホイールベースの5008が5.8となっている。

新型408の全長4700×全幅1850×全高1500mmというサイズは、日本の道路事情、駐車場事情であまりストレスなく扱える限界くらいの大きさではないだろうか。デザインが好みで、駐車場事情などにマッチすれば食指を動かす人も出てくるはず。

テールランプにはライオンの“爪”をイメージした3本のLEDランプ。

伸びやかで低く抑えられたフォルムと、プジョーの最新デザイン言語に基づく意匠が408最大のアピールポイントだ。デザインはどんなに大衆受けしようが、多くの支持を集めようが、ある程度好みが生じるのは間違いなく、「○△×」の評価ポイントにはなり得ないものの、筆者が取り上げる「○△×」には、少なからず主観も入り込んでいる。

そこで、「個人的には」、ボディサイズに対して、フロントマスクのインパクトが強すぎる308よりもフォルム全体の調和が取れているように感じられた。よりシームレスで先進的な雰囲気を色濃く漂わせる408の顔つき、大きく寝かされたテールゲートやサイドまで大きく回り込むように配置されたリヤコンビランプを中心とした、前後に薄く感じられるリヤビューも洗練されているように思える。最新のフレームレスグリルを含めたディテールも考えると、まずはエクステリアデザインは「○」としたい。

【新型408のココが△】その全長は、デザインのための長さなのか?

プジョー408 全長×全幅×全高(mm):4700×1850×1500 ホイールベース(mm):2790 最低地上高(mm):170

「△」は、全長が4.7mに達している割にキャビンが広く感じられないこと。これはもちろん、全高を抑えたこともある。また、プジョーお馴染みのi-Cockpitは、運転時の人馬一体感にも寄与する包まれ感の高さにも寄与しているのだが、i-Cockpitの例に漏れず、開放感よりもパーソナル感を抱かせる前後席になっている。

一方で、3008よりもホイールベースを長くした恩恵は、後席フットスペースに表れていて、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後方に座っても足を伸ばしてリラックスできる。ただし、全高を低く抑えたことで、前後席の着座感覚はセダンよりも少し高めという程度で、頭上まわりの余裕はあまりない。とはいえ、身長175cmの乗員が4人座っても窮屈な思いをせずにすむはずだ。

ラゲッジスペースの広さは、通常時(5名乗車時)で最大536L、後席を前倒しすると最大で1611Lまで広がるため「○」としたい。全長の長さは、全高の低さを補ってあまりあり、荷室容量に寄与しているはず。後席を前倒しした際の段差はかなり大きめに残るが、開口部も大きく、4人での数泊の旅行はもちろん、2人であればキャンプなどのレジャー用途にも十分使えそうだ。

【新型408のココが×】プジョーiCockpitのあの問題…。

インテリアは最新のプジョー流のものが採用されている。i-Cockpitに関しては個人で好みが分かれるところだ。

筆者が乗ったのは、直列3気筒の1.2Lガソリンターボと8速ATの組み合わせになる純ガソリンエンジン車で、1.6Lガソリンとモーターを組み合わせるPHEVはまだ未経験だが、「EMP2」プラットフォームらしく、芯のあるしなやかを味わえる乗り心地と操縦安定性の高さはやはり美点だ。

「×」を付けるとすると、小気味よいフットワークを演出している小径ステアリングも含めたi-Cockpitの設計。ペダルとテレスコピック機構などにより、前後方向のドライビングポジションはスムーズに決まるものの、チルト機構で上下の位置がなかなか決まらない。初期のi-Cockpitは、メーターと干渉しないように、上側の可動域を制限していたのだが、途中からメーターとの干渉には目をつむり、大きく上下するようになっている(上にも上がるようになった)。408に限らないものの、メーター表示の干渉具合を探りながら、メーターの視認性を妥協する(諦める)作業は残念ながら「×」となるだろう。

プジョー408 デザインが気に入ってi-Cockpitが合うなら、選んで後悔なし(でも、クラウンクロスオーバーも買える価格)

プジョーの新種、新型408は「セダンの品格とクーペの美しさにSUVの快適性を融合させたファストバックモデル」だ。このコンセプト、どこかで聞いたことがあるような……そうだ、クラウンクロスオーバーだ。時代の変化が生み出した新種の実力は?

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…