変わらないことの価値を体現し続けてきた「フィアット500 」。現行モデルはすでに15年の息の長さを誇る。ひと目で注目を集めるサイズとデザインの愛らしさは、ファンを長らく虜にしている大きな要素。また懐かしさを感じる乗り味もキュートなキャラクターを際立たせている。“変わらない”とはいえインパネのタッチパネルやBluetooth搭載など、現代のツールにも対応。「チンクエチェント」のスタイリングと今時の機能を併せ持った最強のロングライフモデルと言えるだろう。
REPORT:佐野弘宗(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:菅原樹里亜
2種類のエンジンとRMT 特徴的な乗り味があえて魅力
このネオレトロデザインの元ネタとなったのは1957年に発売された「ヌオーバ500」である。
エクステリア
同車は77年までの20年という長寿を誇った歴史的名車だが、現代の500も、振り返ってみれば2008年の日本発売から15年も経過していることに驚く。長寿が名車の条件なら、このクルマも名車の資格は十分だ。
インストルメントパネル
すでに後継車となる新型500eも登場しているが、新型は将来を見据えた電気自動車。なのでフィアットとしては「ガソリン車も売れる間は売る」との心意気で、こうして従来型500も継続生産されている。というわけで、すっかり熟成の域に達している500のラインナップは、エンジンが1.2ℓ4気筒と0.9ℓ2気筒直噴ターボ(通称ツインエア)で、変速機はともに2ペダル5速MTのみ。ちなみに、自然吸気に換算すると1.4〜1.6ℓ相当の性能を絞り出すツインエアの方が上級エンジンの扱いで、価格も高い。
居住性
走りもいい意味で(!)古臭い。サスストロークははっきり短く、荒れた路面では上下動が出るし、もともと静かでないのに、ツインエアは低速での振動がそれなりに強い(代わりに高回転になると粒ぞろいとなって鋭く吹ける!)。とはいえ、変なクセもなく、小さくて小回りがきくし、なにより全身から発散されるキュートなキャラは、日常生活を楽しくしてくれる相棒というほかない。
うれしい装備
「1.2 CULT」は電動パワステのアシスト量を可変化させたCITYモードを搭載。狭い路地を走ったり、駐車場での切り返しが楽になる。
7インチタッチパネルのオーディオ(Uconnect)は、ラジオチューナーとBluetoothを搭載。スマホのハンズフリー通話や音楽再生に対応する。
月間販売台数 NO DATA
現行型発表 08年2月(新グレード追加 21年10月)
WLTCモード燃費 19.2km/l ※「ツインエア」系
ラゲッジルーム
通常時
後列格納時
後席シートは「TWINAIR DOLCEVITA」のみ5対5分割可倒式で、その他は一体可倒式。荷物が載せられる高さはトノカバーが備わる位置(約550㎜)までで、通常時の荷室は広くはない。ただ、通常1~2名、たまにフル乗車なら荷室は十分に実用的。
クルマなんて新しいだけが価値じゃない……。フィアット500で街なかを軽快に駆けまわっていると、心の底からそう思えてくる。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.150「2023-2024 コンパクトカーのすべて」の再構成です。
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