4月に行なわれたプロトタイプモデルの試乗会では、サーキットという限られた環境ではあったものの、新旧乗り比べてみるとその差は実に大きかった。滑らかさを増したステアフィール、振動が軽減されたエンジンや駆動システム。何よりも静けさに関してはスバルらしからぬ洗練度で単体試乗でも感心した。
今回新型レイバックのデビューを前に、このことを思い出し、改めて新型インプレッサの実力を確認してみることにした。試乗車は前回のプロトタイプと同じモーターアシスト付きのe-BOXER・ST-Hの4WDモデルだ。
インプレッサのラインアップからセダンのG4とMT仕様がなくなり、エンジンも2.0Lに一本化。モーターアシストなしとありの2タイプ3グレードに集約された。全グレードで4WDとFFモデルが選べる。
街中に初めて出てみると、やはり静粛性の高さに間違いはなかった。サーキットでは耳に付いたリニアトロニックの摺動音だったが、短時間の加速状態ではまったく気にならず、意図して回転上昇を続けても音の変化は少なく、CVTであることはわかりにくい。路面から受ける走行音もフラットなサーキット同様にしっかりと遮断されているし、振動が元になる音の発生も抑えられていることが確認できた。
このあたりはスバルの新世代シャシーであるSGPのさらなる進化と、各部の剛性アップの効果が大きいだろう。ボディフレームが重なる部分に使用されてる構造用接着剤の長さを4倍以上に延長したことや、ルーフ回りには高減衰密着技術を用いることで、細かな振動を元から封じ込めた印象だ。
大きな入力に対しては、当然のことながらボディがシェイクされるようなことは感じられないものの、路面変化に対しては思いのほか伝わりやすかった。215/50R17サイズのタイヤが生むしっかり感がそのまま上下方向に移行し、すぐさま減衰。ひと言でいえばダイレクトでスポーティさが感じられる乗り味だ。
コーナーではこのしっかり感が真価を発揮し、荷重がかかってからの安心感がある。なかでも少し前までは固く感じられた乗り味も、ズシリと安定感を増し、ボディのしっかり感を実感。路面が大きくうねっていても進路がピタリと定まっているし、荒れていてもステアリングが煽られるようなことがない。パワーステアリングのデュアルピニオン化による効果も大きいに違いない。
聞くところによると正式にはアナウンスされていないが、ホイールとサスペンションを結合するハブのボルト間隔が上級モデル同様にサイズアップされたという。外から見ればホイールナットの対角間隔の幅が広くなることで、大きな面積で路面からの入力を受け止めることができ、ゆがみが生じにくくなる。
足元からボディまで大きく手が加えられたことで、サーキット同様、一般道でも期待通りの走りを見せてくれた。
全面刷新しているボディフォルムも、ちょっと見だけでは大きな違いがないことから、話題に上りづらいものの、子細を確認し、試乗してみれば目に見えない部分の進化は大きく、スバルが目指す安定感とハンドリング性能は大幅に向上。同時に静粛性を増したことで、ひとクラス上の乗り味を生み出した。
新登場のレヴォーグ・レイバックも気になるが、スタンダードモデルであるインプレッサの地味ながらも芯を捉えたクルマ作りもまた、注目に値すると言えるだろう。
SUBARU インプレッサST-H 全長×全幅×全高:4475mm×1780mm×1515mm ホイールベース:2670mm 車重:1580kg サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式 駆動方式:4WD エンジン 形式:水平対向4気筒DOHC+モーター 型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000pm 最大トルク:188Nm/4000rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48ℓ モーター:MA1型交流同期モーター 最高出力:13.6ps(10kW) 最大トルク:65Nm トランスミッション:リニアトロニックCVT 燃費:WLTCモード 16.0m/ℓ 市街地モード12.8km/ℓ 郊外モード:16.4km/ℓ 高速道路:17.6km/ℓ 車両本体価格:324万5000円