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スバルらしさを打ち出す独自のセッティング
一昨年前に二世代目に進化したBRZは、初代同様に商品企画とデザインはトヨタが担当し、開発と生産はスバルが行なっている。生産の主体がスバルだけあり、FRのスポーツカーとしては世界的に稀な水平対向エンジンを搭載しているのが特徴だ。排気量は初代では2.0ℓだったが、現行型では2.4ℓにスケールアップされた。これにより弱点でもあった低回転域のトルクの細さや、トルクの谷間によるレスポンスの鈍さが大幅に改善され、街なかからスポーツ走行時までストレスを感じることなく楽しめるようになった。
エクステリア
ボディの基礎となるプラットフォームやサスペンション形式は初代から踏襲されているが、構造の見直しや補強部材の追加などが行なわれ、ボディ剛性を強化した。トヨタのGR86とはサスペンションのスプリングやダンパーの減衰力、スタビライザー、フロントサスペンションハウジングのナックル、パワーステアリングとMT車のスロットル制御などが差別化されている。
インテリア
ミッションも初代同様に6速MTと6速ATを設定。6速ATには現行型発売当初から、プリクラッシュブレーキやACCなどが搭載されるアイサイトが標準装備されていたが、この秋の改良時からは遂に6速MTにもアイサイトが装備される。MTはACCの作動領域が2速以上で30㎞/h以上に制限されるなど、ATよりも機能的には少し劣るが、安全性と安心感は大幅に向上するはずだ。
2.4ℓ化がもたらした走りの味わいの深さ
BRZの走りの魅力は、やはり水平対向エンジンだ。高回転域までスムーズに吹け上がる回転フィールは水平対向でしか味わえない爽快感がある。排気量が2.4ℓになったことで回転が重くなるかと懸念されたが、そんな心配は無用だった。トルクアップによってレスポンスが良くなり、初代よりも全域で加速性能を磨き上げ、コーナリング中にアクセルを使った姿勢のコントロールもしやすくなった。もちろん実用域の乗りやすさも改善されており、MT車で少しシフトダウンをサボっても走ることができる柔軟性も手に入れた。ATでもスポーツモードでは高回転が維持されるため、意外なほどにスポーツドライビングが楽しめる。
うれしい装備
BRZは重心の低い水平対向エンジンをフロントミッドシップに搭載しているので重量バランスが良く、回頭性と旋回時の安定性に優れる。さらに加速時や減速時に荷重移動が適切に行なわれるので、タイヤの性能をフルに引き出せる。FRでここまで適切に荷重移動が行なえて、自在に挙動を変えることができるスポーツカーは他にはないだろう。足まわりの違いによりBRZはGR86よりも操舵時の反応がマイルドでリヤの接地感も高く感じられる。スロットルレスポンスもGR86 より穏やかで、僅かだが乗り心地も良いから、大人のスポーツカーといえるだろう。もう一度スポーツカーに乗ってみたいと思っている、ベテランドライバーにもBRZはお薦めだ。
Country Japan Debut 2021年7月(一部改良:22年5月) 車両本体価格 308万円~343万2000円
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。