10月28日、ジャパンモビリティショー(旧:東京モーターショー)が一般公開日を迎えた。それに先駆け、プレスデーとされた25日には、主要自動車メーカーなどがプレスブリーフィングを実施。多くのコンセプトカーが公開された。
三菱もこの日、電動クロスオーバーMPV(マルチパーパスビークル)、「D:X Concept」を世界初披露した。
このクルマは「未来のデリカ」をイメージして製作されたことが明言されている。車名のDはdiscover(発見する)、Xはexperience(経験)を意味しているというが、現行デリカシリーズのD:5、D:2にちなんだかたちでもあるだろう。
D:X Conceptは、現行デリカD:5のDNAをしっかり受け継いでいる。
広い室内空間はもちろん、それを支える環状骨格構造リブボーンフレームも強化されている。
車両前部からボディを横断するように続くサイドウィンドウグラフィックと太いDピラーはデリカらしさを表現。また、オーバーフェンダーや前後スキッドプレート、サイドステッププロテクター、大径タイヤは外観の力強さとともに走破性を向上させている。
前後のTシェイプランプは車両のワイド感を強調しつつ、先進的な雰囲気を醸し出している。またヘッドランプにはプロジェクションレーザーライトが採用された。
パワートレインは三菱が得意とするプラグインハイブリッドで、環境性能と航続距離を両立。駆動系には三菱独自のS-AWCが投入され、幅広い状況に快適かつ確実に対応する。
インテリアには、通常車体の死角になる前方エリアの視界を補完するシースルーボンネットや、シート全体が上下動したり回転するパノラミックシートを投入。さらに目的地までのルート情報や天候情報を提供するなどしてドライバーをサポートする音声対話式AIコンシェルジュもインストールされるなど、“未来のモビリティ”を感じさせる装備も盛り込まれた。
ディスプレイモデルを見てみると、現行デリカD:5よりもボディサイズが大きいようにも感じた。しかし、ボディサイズやパワーユニットの出力など、もろもろのスペックは非公開。また、このたび公開されたD:X Conceptはあくまでスタディモデルという立ち位置なので、「これが発売される」ということはない。
現行デリカD:5がデビューしたのは2007年。顔つきなどが刷新されたビッグマイナーチェンジモデルが発売されたのは2019年なので、そろそろ新型の登場を期待する人も増えてくる頃だと言える。
加えて、三菱の加藤隆雄 代表執行役社長兼最高経営責任者は先日、当サイトによる取材に対し、ジャパンモビリティショーで“面影がハッキリと見えるようなクルマ”を公開することを示唆していた。
プラグインハイブリッドや電動4WDシステムなど、既存の技術も盛り込まれたD:X Concept。これがそのまま市販化される可能性はないにしても、新型デリカの登場にどうしても期待してしまう状況である。
そこで、三菱ブースでのスタッフに尋ねてみたところ「現時点ではお話できることは何もありません(苦笑)」と、一刀両断された。
その一方で、SUVとミニバンの要素を高次元でバランスさせた車種というのはデリカ以外に存在しないこともあり、次期モデルへの期待感の高さについては認識しているようだ。また、日本やASEAN地域など、三菱が重視するマーケットのD:X Conceptへの反響は大きく、「元気な三菱が戻ってきた」と大変歓迎されているという。
ちなみに、D:X Conceptに投入されている新要素については当然開発が進んでいる様子。
前席下部に備え付けた大型ディスプレイに、車体前方にカメラで捉えた映像や前輪の切れ角などを表示するシースルーボンネットは、アラウンドビューモニターの延長線上にある技術であり、2030年には実際に市販車に投入したい考えであるという。
パノラミックシートについても同様で、D:X Conceptは全席独立の6シーターとなったが、ベンチシート化も可能性があるという。
三菱は現在ラインナップの電動化の過程にあり、今後はすべての車種がHEV、PHEV、BEVのいずれかになる。現状のデリカはディーゼルエンジン車のみ。ブランドを代表する車種だからこそ、今の形態を保ったままいつまでも販売を続けるということもないだろう。そして、D:X Conceptの存在は、三菱は今後“デリカ”というクルマに電動化し、存続させていく強い意志があることを感じさせるものだった。
この数年で勢いを取り戻しつつある三菱。間違いなく今後の動向に注目すべき一社だろう。