新型ホンダN-BOXで横浜の街と高速道路を走ってみた! 街乗りならターボはいらない? “走り”好きから見たN-BOXのインプレッションは!?

今、日本で一番売れているクルマがホンダN-BOX。2011年の初代デビュー以来、2世代に渡って人気を集めてきた軽スーパーハイトワゴンだ。その人気モデルが三代目へとフルモデルチェンジされた。早速、横浜の街を舞台に山田弘樹氏がテストドライブ! 走りに一家言あり!の山田弘樹からみたN-BOXのインプレッションは如何に!?
REPORT:山田弘樹(YAMADA Kouki)/PHOTO:MotorFan.jp

最初の試乗車はNAのFFモデル「ファッションスタイル」

2021から2年連続で、国内で最も売れたクルマとなったホンダN-BOXがフルモデルチェンジを果たした。来年の春にはいよいよ「N-VAN e:」(エヌバン イー)がデビューを飾ると発表したホンダだが、その母屋となるN-BOX/N-BOXカスタムは地に足の付いたガソリンエンジンのままで、これまで同様自然吸気とターボの2本立てだ。

N-BOX
N-BOXカスタム

まず最初にステアリングを握ったのは、フィヨルドミスト・パールのボディカラーとカラードフルホイールキャップが可愛らしい、「ファッションスタイル」仕様のN-BOXだ。エンジンは58PS/65Nmの出力を発揮する660cc自然吸気の直列3気筒で、今回試乗したのはFWDモデルである。

N-BOX「ファッションスタイル」(フィヨルドミスト・パール)

【新型モデルは“買い”か?】N-BOXフルモデルチェンジ、旧型オーナーは買い替えるべきか?

日本一売れているクルマ「N-BOX」が3代目へとフルモデルチェンジ、10月6日より発売開始となった。売れているクルマのモデルチェンジは難しいといわれるが、はたして新型N-BOXのスタイリングはキープコンセプト、パワートレインも基本はそのままに洗練させるという内容になった。フル液晶メーターやコネクテッド機能など進化している面もあるが、非常に手堅いモデルチェンジになったといえる。では、旧型N-BOXのオーナーは新型への乗り換えを検討する必要はないのか? 気になるファクターに絞って、考察してみよう。 REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:本田技研工業(Honda)

タウンスピードではパワーも十分! パワートレインは優秀

いわゆる最もベーシックなN-BOXを走らせてまず感心したのは、第二世代となったパワートレインの優秀さだった。
街中ではアクセルの踏み始めからトルクがスマートに追従し、いったん惰性を付ければタイヤをうまく転がしてクルージングが可能だ。そしてときおりアクセルをちょい足しするだけで勢いが持続できるから、エンジンノイズが本当に気にならない。またクルマ自体の遮音性も頑張っており、ロードノイズは消し切れていないが中・高周波は上手に遮断している。

横浜・みなとみらいの街中での走行。

そしていざアクセルを深めに踏み込む場面でも、パワーの盛り上がり方がとてもリニアだ。いわゆるCVTの滑り感が少なく、キックダウン時でも車速よりエンジンが先に“ウワァーン”とうなることがない。もちろん全開率が高まればエンジンは叫ぶが、それもTPOに応じたキレのあるサウンドで不快ではない。だから高速道路でも、個人的にはパワー不足だとは感じなかった。
常識的に走る限りは、ターボいらずなのでは? と思えたほどだ。

高速道路はみなとみらいを起点にK1横羽線、K3狩場戦、B湾岸線で大黒パーキングエリアを往復。

ちなみに試乗車の車重は910kgと、先代と大きく変わらない。対する直列3気筒エンジンも先代を踏襲しており、その出力値は変わらない。つまりはエンジンとCVTの制御がさらに熟成したということである。そしてその燃費性能は、自然吸気モデルで先代の20.2km/ℓから21.6km/ℓまで向上した。対してターボモデルもごく僅かだが20.2km/ℓ→20.3km/ℓとなっている。

新型N-BOXの選択肢は「カスタムターボの一択!」といえるワケは?

2023年秋のフルモデルチェンジが予告されているN-BOX。軽自動車のみならず、国内ではもっとも新車が売れているビッグネームだけにフルモデルチェンジへの注目度は高い。N-BOXが属する軽スーパーハイトワゴン・カテゴリーでは最近増えているSUVテイストのグレードを置かず、標準系とカスタム系という2本柱で勝負。従来モデルに対して、シートバリエーションを絞るなどシンプルにユーザーが選びやすい構成となっているようだ。はたして、おすすめは標準系か、カスタム系か。自動車コラムニストが「自分が購入するなら」という視点で考えてみた。 REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:本田技研工業(Honda)

スピードを上げた時のハンドリングに物申す!

タウンスピードではリニアな応答性で気持ちよく走ることができる。

そんなN-BOXでちょっとだけ残念なのは、中速域以上でのハンドリングだ。
タウンスピードではその操舵応答性もほどよくリニアで、軽めの電動パワステと共にスイスイと気持ち良く走り回れる。しかし速度が上がるほどにそのリニアリティは薄れて行き、ざっくり70km/h以上の領域だと、狙った以上に舵角が大きくなってしまう。

大黒パーキングエリア周辺のループ路での様子。

ちなみにボディは側面衝突への対応からBピラー付け根の剛性を向上させ、そこにつながるルーフ部分のハイテン率(ハイテン鋼=高張力鋼板の使用比率)を上げたが、ボディ全体の剛性は先代モデルで良好だったことから、そのバランスを崩さず保つようにしたという。そして実際走らせても、剛性の不足を感じることはなかった。

K1横羽線からK3狩場線への合流。

自然吸気/ターボモデルともにスプリングやブッシュ類は一緒とのことだったから、原因はタイヤの剛性とダンパーのセッティングなのだと思う。
特に高速道路では、その若干の応答性の鈍さから車線変更やカーブを前もって先読みしてハンドルを切り始める必要があった。

軽スーパーハイトワゴンならではの難点は克服できるか?

またロールスピードが速い分だけホンダセンシングの操舵制御が細かく入り、カーブによってはフラフラするときがあった。
それもこれもスーパーハイトワゴンの屋根の高さ、カメラ位置の高さと重心の高さが原因だと思うのだが、後述するターボモデルはここが比較してかなりきちんと抑えられており、なおかつその操舵感も上質だった。タイヤ外径の違いがあるから一概には言えないが、もう少しだけダンパーはロールスピードを抑えた方がいいと思う。

大黒パーキングエリア周辺のループ路。こちらは登り勾配の時。

その乗り心地はシートのふっかり具合も合わせて、前2座席に座る限り街中から高速巡航まで、このクラスとしてはとても優秀だ。刷新されたインテリアもすっきりとスタイリッシュだし、ハードプラスチック然としていてもシボや配色の良さからそれが安っぽく見えないのも素晴らしい。

N-BOX「ファッションスタイル」の前席。シンプルでオーソドックスなレイアウト。
N-BOX「ファッションスタイル」の前席シート。
N-BOX「ファッションスタイル」の後席とシート。

ただ後部座席はやっぱりサスペンションの支持剛性やダンピングが不足気味で、のっぽなボディに軽自動車枠の限界を感じる。これだけ広くて快適な後部座席の居住空間が得られるクルマなのにと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。もしフィットがN-BOX同様にスーパーハイトワゴン形状となって、ひとクラス上の質感を出せるのだとしたら(フリードもあるが)、N-BOXはこれでよいと思えるのだけれど。

N-BOX「ファッションスタイル」(オータムイエロー・パール)

新型N-BOXは値段も装備も普通車なみ!?同門フィットを蹴散らしてしまうのか?

2023年秋にホンダN-BOXが3代目へとフルモデルチェンジを果たす。超人気モデルだけにキープコンセプトせざるを得ない状況にあることは想像に難くない。実際、公開されている3代目N-BOXのスタイリングには『代わり映えがしない』という評価も多いようだ。そうしたスタイリングに思いが込められているように新型N-BOXは「日本でもっとも売れているクルマ」の座を維持できるのだろうか。そのためにはコンパクトカーを超える魅力を持っていることが必須といえる。ここではホンダのコンパクトカー「フィット」とN-BOXを比べてみよう。 REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:本田技研工業(Honda)

車名N-BOX
グレードN-BOXファッションスタイル
全長×全幅×全高3395mm×1475mm×1790mm(FF)/1815mm(4WD)
ホイールベース2520mm
最低地上高145mm
車両重量FF:910kg
4WD:980kg
室内長×室内幅×室内高2125mm×1350mm×1400mm
エンジンS07B型直列3気筒DOHC12バルブ i-VTEC
排気量658cc
ボア×ストローク60.0mm×77.6mm
圧縮比12.0:1
燃料タンクFF:27L
4WD:25L
(レギュラーガソリン)
最高出力58ps/7300rpm
最大トルク6.6kgm/4800rpm
燃費(WLTCモード)FF:21.6km/L
4WD:19.4km/L
トランスミッションCVT
最小回転半半径FF:4.5m
4WD:4.8m
ブレーキフロント:ベンチレーテッドディスク
リヤ:ドラム
サスペンション(前後)FF:マクファーソンストラット/リジッド
4WD:マクファーソンストラット/ド・ディオン
ホイール・タイヤ14インチスチールホイール(カラードフルホイールキャップ)
155/65R14
価格(税込)FF:174万7900円
4WD:188万1000円

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…