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最初の試乗車はNAのFFモデル「ファッションスタイル」
2021から2年連続で、国内で最も売れたクルマとなったホンダN-BOXがフルモデルチェンジを果たした。来年の春にはいよいよ「N-VAN e:」(エヌバン イー)がデビューを飾ると発表したホンダだが、その母屋となるN-BOX/N-BOXカスタムは地に足の付いたガソリンエンジンのままで、これまで同様自然吸気とターボの2本立てだ。
まず最初にステアリングを握ったのは、フィヨルドミスト・パールのボディカラーとカラードフルホイールキャップが可愛らしい、「ファッションスタイル」仕様のN-BOXだ。エンジンは58PS/65Nmの出力を発揮する660cc自然吸気の直列3気筒で、今回試乗したのはFWDモデルである。
タウンスピードではパワーも十分! パワートレインは優秀
いわゆる最もベーシックなN-BOXを走らせてまず感心したのは、第二世代となったパワートレインの優秀さだった。
街中ではアクセルの踏み始めからトルクがスマートに追従し、いったん惰性を付ければタイヤをうまく転がしてクルージングが可能だ。そしてときおりアクセルをちょい足しするだけで勢いが持続できるから、エンジンノイズが本当に気にならない。またクルマ自体の遮音性も頑張っており、ロードノイズは消し切れていないが中・高周波は上手に遮断している。
そしていざアクセルを深めに踏み込む場面でも、パワーの盛り上がり方がとてもリニアだ。いわゆるCVTの滑り感が少なく、キックダウン時でも車速よりエンジンが先に“ウワァーン”とうなることがない。もちろん全開率が高まればエンジンは叫ぶが、それもTPOに応じたキレのあるサウンドで不快ではない。だから高速道路でも、個人的にはパワー不足だとは感じなかった。
常識的に走る限りは、ターボいらずなのでは? と思えたほどだ。
ちなみに試乗車の車重は910kgと、先代と大きく変わらない。対する直列3気筒エンジンも先代を踏襲しており、その出力値は変わらない。つまりはエンジンとCVTの制御がさらに熟成したということである。そしてその燃費性能は、自然吸気モデルで先代の20.2km/ℓから21.6km/ℓまで向上した。対してターボモデルもごく僅かだが20.2km/ℓ→20.3km/ℓとなっている。
スピードを上げた時のハンドリングに物申す!
そんなN-BOXでちょっとだけ残念なのは、中速域以上でのハンドリングだ。
タウンスピードではその操舵応答性もほどよくリニアで、軽めの電動パワステと共にスイスイと気持ち良く走り回れる。しかし速度が上がるほどにそのリニアリティは薄れて行き、ざっくり70km/h以上の領域だと、狙った以上に舵角が大きくなってしまう。
ちなみにボディは側面衝突への対応からBピラー付け根の剛性を向上させ、そこにつながるルーフ部分のハイテン率(ハイテン鋼=高張力鋼板の使用比率)を上げたが、ボディ全体の剛性は先代モデルで良好だったことから、そのバランスを崩さず保つようにしたという。そして実際走らせても、剛性の不足を感じることはなかった。
自然吸気/ターボモデルともにスプリングやブッシュ類は一緒とのことだったから、原因はタイヤの剛性とダンパーのセッティングなのだと思う。
特に高速道路では、その若干の応答性の鈍さから車線変更やカーブを前もって先読みしてハンドルを切り始める必要があった。
軽スーパーハイトワゴンならではの難点は克服できるか?
またロールスピードが速い分だけホンダセンシングの操舵制御が細かく入り、カーブによってはフラフラするときがあった。
それもこれもスーパーハイトワゴンの屋根の高さ、カメラ位置の高さと重心の高さが原因だと思うのだが、後述するターボモデルはここが比較してかなりきちんと抑えられており、なおかつその操舵感も上質だった。タイヤ外径の違いがあるから一概には言えないが、もう少しだけダンパーはロールスピードを抑えた方がいいと思う。
その乗り心地はシートのふっかり具合も合わせて、前2座席に座る限り街中から高速巡航まで、このクラスとしてはとても優秀だ。刷新されたインテリアもすっきりとスタイリッシュだし、ハードプラスチック然としていてもシボや配色の良さからそれが安っぽく見えないのも素晴らしい。
ただ後部座席はやっぱりサスペンションの支持剛性やダンピングが不足気味で、のっぽなボディに軽自動車枠の限界を感じる。これだけ広くて快適な後部座席の居住空間が得られるクルマなのにと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。もしフィットがN-BOX同様にスーパーハイトワゴン形状となって、ひとクラス上の質感を出せるのだとしたら(フリードもあるが)、N-BOXはこれでよいと思えるのだけれど。
車名 | N-BOX |
グレード | N-BOXファッションスタイル |
全長×全幅×全高 | 3395mm×1475mm×1790mm(FF)/1815mm(4WD) |
ホイールベース | 2520mm |
最低地上高 | 145mm |
車両重量 | FF:910kg 4WD:980kg |
室内長×室内幅×室内高 | 2125mm×1350mm×1400mm |
エンジン | S07B型直列3気筒DOHC12バルブ i-VTEC |
排気量 | 658cc |
ボア×ストローク | 60.0mm×77.6mm |
圧縮比 | 12.0:1 |
燃料タンク | FF:27L 4WD:25L (レギュラーガソリン) |
最高出力 | 58ps/7300rpm |
最大トルク | 6.6kgm/4800rpm |
燃費(WLTCモード) | FF:21.6km/L 4WD:19.4km/L |
トランスミッション | CVT |
最小回転半半径 | FF:4.5m 4WD:4.8m |
ブレーキ | フロント:ベンチレーテッドディスク リヤ:ドラム |
サスペンション(前後) | FF:マクファーソンストラット/リジッド 4WD:マクファーソンストラット/ド・ディオン |
ホイール・タイヤ | 14インチスチールホイール(カラードフルホイールキャップ) 155/65R14 |
価格(税込) | FF:174万7900円 4WD:188万1000円 |