往年のホットハッチの後継者「フォルクスワーゲン・ポロGTI」【最新スポーツカー 車種別解説 VOLKSWAGEN POLO GTI】

2018年のモデルチェンジから4年余り、2022年に「フォルクスワーゲン・ポロ GTI」がラインナップされた。「POLO」というブランドのイメージ通りあからさまにタフさを主張するモデルとはいえない。しかしフロントフェイスの赤いラインなど要所要所に「GTI」としてのプライドが垣間見られる。コンパクトなボディには専用のセッティングが施され、「ポロ」のサイズだからこそ意のままに操る楽しさを実現している。兄貴分の「ゴルフ GTI」よりも少しヤンチャな乗り味はダイレクトな感覚やキビキビした操作性に注目だ。
REPORT:=岡本幸一郎(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:神村 聖 

ゴルフGTIに肉薄する実力 25周年記念車の導入に期待!

ゴルフGTIの弟分であり、ポロのパフォーマンスモデルとして日本でも人気の高いポロGTIが大幅に進化して、2022年6月のベース車のマイナーチェンジに次いで同年秋に加わった。

エクステリア

スタイルでの高性能アピールはさり気ない。いかにもな空力パーツなどの追加はなく、ヘッドライト&グリルのレッドアクセントやフェンダーの赤バッジ、フロントバンパー開口部(ハニカムメッシュ&補助ランプ)、2 本出しマフラー程度だ。
コンパクトな車体に大きなエンジンを積むという「GTI」の方程式を継承。通常のポロが排気量1.0ℓのエンジンを積むのに対し、GTIは2.0ℓと2倍になっているのだ。しかも、マイナーチェンジ時に最高出力はそれまでの200㎰から207㎰へと引き上げられた。
標準タイヤサイズは215/45R17だが、撮影車両はメーカーオプションの215/40R18サイズを履く。一部をブラックに塗装することでスポークやリムを細く、径も大きく見せている。
荷室の使い勝手もハイレベル。床面は高さを上下調整できる仕掛けが組み込まれ、写真の状態よりも10㎝ほど下げることが可能。後席を畳まず中型スーツケースふたつが余裕をもって載る。

エクステリアはフロントグリルがハニカム形状となったほか、左右のヘッドライトをつなぐポジション灯とヘッドライト内部に赤いアクセントラインなどを配した、GTI専用のデザインとなった。インテリアは随所に赤いアクセントが施され、フロントシートは伝統のチェック柄としたファブリックのトップスポーツシートを装備するなど、GTIらしいスポーティなコクピットを演出している。マルチファンクションステアリングホイールやデジタルメータークラスターなどもGTI専用となっている。

インテリア

ダッシュボードからステアリングのステッチまで、レッドでコーディネートするのがGTIの証。ハンドルはマイナーチェンジで変更されていて、タッチ式のステアリングスイッチを組み合わせているのがポイントだ。センターディスプレイは9.2インチと大型サイズ。
メーターは10.25インチの全面液晶。アナログメーター風のデザインに加え、走行アシストの作動状況を中心とした表示や、地図を広範囲に映すレイアウトにも切り替えできる。
トランスミッションはデュアルクラッチ式。

エンジンはミラーサイクルを採用した従来とは別型式の、DNN型という2.0TSIに換装された。最高出力が7㎰向上するとともに、320Nmの最大トルクを1500〜4500rpmという従来よりも幅広い回転域で発生している。0-1000㎞/h加速はコンマ2秒の短縮となる6.5秒となった。参考まで、ゴルフGTIはそれぞれ245㎰/370Nm、6.2秒となっており、やや差が縮まったことになる。ところで、本稿執筆の少し前に欧州では生誕25周年記念車が発売されたので、おそらくそう遠くないうちに日本にも導入されることだろう。

数多の専用機構が織りなす宣伝通りの痛快な走り

「このサイズでなければ、楽しめない走りがある」という旨をカタログ等でも謳っているとおり、ドライブフィールは痛快そのものだ。発進からリニアに立ち上がるトルクを7速DCTがダイレクトに伝え、軽量な車体も効いて瞬発力は抜群だ。専用セッティングを施したシャシーには、ローダウンしたスポーツサスペンションや高速でのコーナリング時にトラクション性能を最適化してアンダーステアを軽減する電子制御式ディファレンシャルロック〝XDS〞が搭載されている。これらの相乗効果で、まさしく意のままの走りを実現している。

うれしい装備

走行モードを選んでステアリング、エンジン、ギヤの制御を切り替えられる。オプションの減衰力切り替え機能付きダンパー装着車は減衰力も2段階で切り替わる。
水温、ブースト圧、重力加速度などもセンターディスプレイに表示可能。
ステアリングには赤いアクセントとGTIバッジを添える。
グリルからヘッドライトにつながる赤いラインがGTIの証。

任意に選択できるドライビングプロファイル機能により、快適なドライブから刺激的な走りまで好みにあわせて楽しむことができる。ゴルフGTIに対しては、車体がずっとコンパクトで軽量であることはもちろん、リヤサスペンションがビーム式となっているのも大きな相違点となる。キャラクター的にも大人っぽさを増したゴルフGTIに対し、ポロGTIは、あえてちょっとヤンチャな雰囲気が残されていて、いわゆる往年のホットハッチのイメージに近いように感じられる。上質さや快適性、絶対的な走行性能を求めるならゴルフGTIだろうが、走りのダイレクト感や一体感ではポロGTIが上回り、キビキビ走れて楽しいように思えた。単なるスケールダウン版ではなさそうだ。

Country       Germany
Debut        2018年6月(マイナーチェンジ:22年11月)
車両本体価格      435万7000円 

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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