【クルマいじりテクニカルガイド】KTCの新型ラチェットハンドル『ネプロスneXT・NBR390X』は軽く!強く!スタイリッシュ!【CarGoodsMagazine】

nepros neXT『NBR390X(価格:1万7380円/税込)』は、橋桁のような独特の構造をもって、必要強度を確保しつつ軽量化を推進。表面にはショットピーニング加工を施して硬度を上げ、タフさも確保。バランスや手に馴染む形状をも考慮するなど綿密な仕上げは全体に渡り、究極の使い良さを追求している。
慣れしたしんだ工具の形に、いま大きな変化が起きている。先鞭をつけたのは、かのKTC「ネプロス」シリーズ。より先進的なブランド「neXT」からの新作は、初見から衝撃だ!

「新化」するラチェットハンドルが異次元のステージを切り拓く!!

特長的な空洞のシルエットに、多くの人は目を留めるだろう。軽さと強さという、工具に求められる大命題をさらに究極レベルにまで高めるべく、KTCが新たに取り組んだのが「トポロジー最適化」であり、そのコンセプトが結実したのがこの製品となる。

世界最多のギアとなる90枚ギアを採用した『NBR390(右)』の発売が開始されたのは今から10年以上前の2012年のこと。ヘッドをコンパクトにしてより軽く・小さくを追及された進化版『NBR390A(中央)』が世に出たのは昨年のことだった。『NBR390X(左)』はその翌年に颯爽とデビュー。変遷で言うと、最初の2モデルが「深化」を図ったのに対し、今回のモデルは「新化」を果たしている。neXTモデルであることからも分かる通り、進化のベクトルが少々異なる。

トポロジー最適化とは、産学連携で実用化が進む先進分野の一つであり、構造最適化を図る上での最新手法と言われる。寸法効率化、形状効率化のさらに先を行くもので、力学的・数学的根拠に基づく条件のもと、剛性を落とさずに軽さを追及するという、先進の研究分野だそうだ。

プロジェクトスタートから発売にこぎ着けるまで7年を要した

製品化の第一弾として狙いを定めたのはラチェットハンドルだった。誰しもが持つメジャー工具であり、KTCツールでも一番の売れ筋でもある。画期的な取り組みのスタートとして、ここを避けては通れない。
2016年からプロジェクトはスタートし、最終設計図面が仕上がったのは今年のこと。実質7年あまりの期間を経ている。とはいえ、トポロジー最適化の研究を活かした産学連携の例として、この期間はとても短いそうで、日の目を見ずにボツになる例のほうが圧倒的に多いのが実際だそうだ。

その点KTCの場合は、製造部門を社内に持ち、モノ作りのエキスパートであることが奏功したのだろう。当然、製品化に対する障壁はいくつもあった。加工する部位が増えると、当然コストも増えるため、製造上の問題もクリアする必要があった。また従来の加工方法では難しい点も多かったため、鋳造や3Dプリンタによる手法も考えられたものの、そこはKTCの土台でもある鍛造が選択された。ポリシーであるとの考えだ。

指を掛けて使うことが多いヘッド部分は、力がうまく伝わるように各側面が平面に仕上げられる。それでいてエッジはない。

手法こそ目新しく斬新ながら目的そのものは変わらない

何より、一般的な製品では加工しやすい設計にすることもあるが、今回はそういったことを一切考えなかったそうだ。未来が掛かるチャレンジなだけに、そこに妥協はない。
一方で、変えてはいけないものもある。代々、ネプロスのラチェットハンドルは、ハンドル部の周長を、小学校にある鉄棒の太さに設定している。使い良さを追求する本製品にとって、この点は変えてはいない。

通常使用ではありえないような、しなりを伴う大きな負荷を掛けた試験でも、よりストレスを受けるのは孔が空いたグリップ部ではなく、ヘッド方面であることが分かる。万一の際にもハンドルが破断するようなことはなく、先にドライブがねじ切れる構造が取られている。

一見奇抜で、その手法こそ目新しいものになったものの、その目的は他の製品と同様であり、「軽くて・強くて・使いよい工具」にある。何を隠そう、これはKTCの社是でもあり、変革のチャンレジであっても創業から続くモノ作りの姿勢にブレはない。

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