WRCのワークスマシンの強烈なGを体感! ヒョンデi20 N Rally1×ティエリー・ヌービル選手

WRCラリージャパンの週末の直後、愛知県蒲郡市にあるサーキット、スパ西浦にラリージャパンを戦ったヒョンデi20 N Rally1 Hybridが現れた。なんと、ドライバーのティエリー・ヌービル選手の姿も! ヒョンデのエースドライバーがドライブするワークスマシンに同乗できる幸運な機会を得た。公道最速のWRCマシンの実力の一端を垣間見た。

なぜ「N」か?

11月21日、スパ西浦サーキットにヒョンデのモータースポーツ車両と「Nモデル」が集結した。

11月16-19日に開催された世界ラリー選手権(WRC)ラリージャパンは、トヨタの1-2-3で幕を閉じた。前年のウィナー、ヒョンデのティエリー・ヌービル選手は、デイ2のアクシデントで後退。残念ながら13位に終わった。

とはいえ、2023年のドライバーランキングでは3位。第6戦(ラリー・イタリア)第12戦セントラル・ヨーロピアンラリーの2勝を挙げている。

最終戦が終わった後に日本のサーキットにヌービル選手とワークスマシン(当然、ヒョンデモータースポーツのメンバーも一緒だ)が現れたのは、ヒョンデの「Nブランド」のプロモーションのためである。

ヒョンデのNブランドは、モータースポーツを起点するとヒョンデもスポーツを代表するブランドだ。WRCを戦う「i20 N Rally1 Hybrid」にある「N」は、Nブランドを意味している。

世界に名だたる自動車ブランドは、例外なくモータースポーツ、ハイパフォーマンスブランドを有している。

メルセデス・ベンツなら「AMG」、BMWなら「M」トヨタなら「GR」や「F」、日産なら「NISMO」、ホンダなら「Type R」。ヒョンデにおけるそれが「N」なのだ。

Thierry Neuville(ティエリー・ヌービル) 1988年ベルギー生まれ
2009年WRCデビュー、2012年からはシトロエンジュニアからフル参戦、2013年にMスポーツへ移籍、2014年にヒョンデへ移籍しWRC初勝利

なぜ「N」か?

Nは、開発拠点である韓国・南陽(Namyang)のNとニュルブルクリンクのNに由来する。南陽で開発されてニュルブルクリンクで鍛えられたのが「N」というわけだ。

2024年に日本に導入されるヒョンデのNは、BEVのIONIQ5の「N」。こちらも試乗できたので、近いうちにレポートする。

さて、今回同乗する機会を頂いたのは、ラリージャパンを戦ったマシンそのものだ。

Hyundai i20 N Rally1 Hybrid
Hyundai i20 N Rally1 Hybrid
全長×全幅×全高:4100mm×1875mm×-mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1260kg(最低重量)
エンジン:1.6L直4直噴ターボ
排気量:1600cc
ボア×ストローク:83.0mm×73.8mm
最高出力:380hp(280kW)+134hp Hybrid Power
最大トルク:450Nm(エンジン)/180Nm(ハイブリッドユニット)
エアリストリクター:36mm(FIA規定による)
トランスミッション:5速マニュアル
駆動方式:4WD/機械式デファレンシャル×2
クラッチ:セラメタリック・ツインディスク
サスペンション:F&R マクファーソンストラット式
ステアリング:油圧式ラック&ピニオン
ブレーキ:ターマック用370mm/グラベル用300mm
タイヤ:ミシュラン

ラリージャパンのSS11&12 OKAZAKIで同乗させていただいたマシンは、Rally1に切り替わる前のi20クーペWRCだったが(したがってハイブリッドシステム非搭載)、今度は、バリバリの現役ワークスマシンだ。マシンサイドには「FORUM8 RALLY JAPAN HY」のステッカーが貼ってあった。

マシンは、ヒョンデモータースポーツのスタッフが完璧に仕上げてくれている。

ティエリー・ヌービル選手

エースドライバーのヌービル選手は、穏やかで知的、それでいてフレンドリーな雰囲気をまとうナイスガイだ。

コドライバーシートに身を沈めて、ガッチリとシートベルトで締め上げられると、ヌービル選手は親指を立てたあと、ギヤをエンゲージしてアクセルをON。強烈な加速をしながらコースイン。すぐにコーナーが迫る。速い!

コース幅の広いサーキットだから、もう自由自在だ。ビックリするくらい大胆に縁石に乗り、アクセルワークでノーズの向きを自在に変える。タイトターンではパーキングブレーキできっかけを作ってドリフト。

アクセルワークやシフトワークをしっかり見つめておこう、と思ってはみたものの、またしてもそんな余裕はなし。現代WRCのワークスマシンのボディはどんなときもミシリとも言わない。サスペンションがよく動くし、路面のいいサーキットだから乗り心地は快適だ。それでも周囲を見る余裕がないのは、強烈なGがかかるから。加速~減速~横G~加速……そのどれもが味わったことがないほどすごい。

ラリーカーのタクシーライドを終えたヌービル選手は、IONIQ5 Nをじつに楽しそうにドライブしていた。こちらも、自由自在にドリフト。いつまでもドライバーズシートから降りてこないヌービル選手が印象的だった。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…