雪国への帰省ドライブ、雪原や田園地帯の運転では『コリジョンコース現象』にも気をつけて走ろう!

(PHOTO:TOYOTA)
田園地帯や雪原の見通しのよい交差点で、お互いが見えていたはずなのに出合い頭に衝突事故…。そこには『コリジョンコース現象』が関与しているものも少なくないという。人気アニメにもトリックで使われたという、その現象はいったいどういうものなのだろう?

白昼、見通しの良い状態の方が『コリジョンコース現象』が起こりやすいという。(PHOTO:Daimler)

白昼、見通しのよい交差点なのに自動車同士が出合い頭に衝突事故を起こしてしまうことがあります。このような事故には『コリジョンコース現象』がかかわっているものも少なくないと言われています。では、この『コリジョンコース現象』とはいったい何なのでしょう?

「コリジョン(collision)」とは英語で「衝突」や「激突」という意味。「衝突(確定)コース」つまり「衝突するべくして衝突した」ということです。『コリジョンコース現象』とは「ドライバーが相手のクルマが近づいてきたことに気付かない、あるいは止まって見える現象」のことを言います。

では、相手のクルマが見えていたはずなのに、どうしてそんなことが起こってしまうのでしょう? それは主に人間の錯視や錯覚が引き起こしてしまうようです。

たとえば、上の図のように直角に交わる見通しのよい交差点に、同じ速度で同時に接近する2台のクルマがあったとします。図で仮に自分のクルマを赤いクルマ、相手のクルマ(交差車両)を青いクルマとし、相手のクルマは常に自分と同じ速度、つまり斜め45度の位置にあり続けるよう進み続けるとします。するとドライバーは接近してくるクルマを「止まっている」と誤って認識してしまい、注意を払わなくなってしまうのです。

(注:もちろん上図の例では青いクルマは「左方優先」を守るべきですが、ドライバーが錯視・錯覚により赤いクルマが「止まっているから大丈夫だろう」と勘違いしているため、そのまま直進を続けているものとして表現しています。また、赤いクルマは「左方優先なのだから、当然、相手が止まるだろう」と思っていると同時に、やはり錯視・錯覚で青いクルマが「止まっているから大丈夫だろう」と勘違いしていることを表現しています)。

人間の視野には物の色や形をはっきり認識できる“中心視野”と、色や形の違いや動かないものは認識し難い“周辺視野”があります。ドライバーは横から接近するクルマを“周辺視野”でとらえやすいため、交差車両が同じ速度・同じ角度で接近してくると、クルマが動いていないように見えてしまい、直前まで危険を認識できず衝突してしまうことがあるのです。

この現象は周囲に田畑が広がっているような見通しのよい交差点で白昼にもかかわらず起こりやすく、地理的条件から田園型交通事故、あるいは北海道東部の十勝地方で多発したことから十勝型交通事故などと呼ばれています。特に冬場、周囲が白一色の雪原状態となってしまい、まったく単調な風景の中を走らねばならない時には、この現象に注意したいものです。

JAFによれば、この現象に陥るのを回避するためには、走行中に頭や目線を左右へ向け、意識的に目線を違う方向に移すなどして対策するのが良いようです。また、フロントピラーの死角に相手のクルマが隠れてしまい、交差点に進入するまで気付かないこともありますので、交差点に接近したら必ず減速し、周囲の安全を確認して視界を変えることも有効です。

道路標識や減速帯などがある交差点では、特に交通ルールを厳守するよう心がけ、「相手のスピードが遅く見えるから、自分が先に交差点に進入してもよい」といった誤った優先意識を持たず、交差車両を確認してから通過するといったこともJAFでは推奨しています。雪道のドライブでは特に気を付けたいですね。余談ながらこの『コリジョンコース現象』は、アニメ版の『名探偵コナン』で、殺人事件のトリックに使われたこともあるそうです。

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