プリウスならPHEVを選ぶ。日常走行の大半を静かで滑らか、パワフルなEV走行でこなせるから

プリウス PHEV Z 車両価格:460万円
歴代最高にカッコいいトヨタ・プリウスの最上級モデルがPHEV Zだ。13.6kWhの大容量バッテリーで87kmをEV走行できる。そこから先は世界最高のハイブリッドシステムが始動する。ハイブリッドモデルとの価格差は90万円。とはいえ、その差額は補助金でかなりカバーできる。となれば、選ぶべきはPHEVだろう。3日間、プリウスPHEVと生活をともにしてみた。

先代より3倍売れてる新型プリウス

車両価格:460万円 オプション:ソーラー充電システム28万6000円、ITS Connect2万7500円、デジタルインナーミラー/デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能/周辺車両接近時サポート(録画機能)ドライブレコーダー8万9100円、デジタルキー3万3000円、フロアマット(ラグジュアリータイプ販売店オプション)3万4100円 オプション込み価格506万9700円

今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠に輝いたトヨタ・プリウス。販売も好調で、2023年1-11月の国内販売台数は9万1927台。これに12月の台数が上乗せされるから、10万台/年は超えそうだ。前年2022年の年間販売台数は3万2675台だから、ざっと3倍の売れ行きだ。5代目プリウス、ヒット作と言えそうだ。

ヒットの理由のひとつは、デザインにある。歴代プリウスでもっともスタイリッシュなエクステリアは、いつの間にか単なるエコカー、ハイブリッド車の代表モデルとなっていたプリウスのイメージを一新させた。カッコいいプリウス。それが成功の秘密だ。

全長×全幅×全高:4600mm×1780mm×1430mm ホイールベース:2750mm 最小回転半径:5.4m
トレッド:F1560mm/R1570mm 最低地上高:150mm
車両重量1590kg 前軸軸重910kg 後軸軸重680kg

もちろん、格好だけではない。二周目に入ったTNGA GA-Cプラットフォームを使ったシャシー性能は、格段に進化している……というのは、サーキットで開催された試乗会で体験済みだった。イヤーカーを獲ったタイミングで、数日間借り出してその素の実力を試してみることにした。

試すなら、PHEVモデルである。なぜなら、試乗会のときの印象が圧倒的に良かったから。そして、価格だ。
ハイブリッドモデルのZ(FF):370万円
PHEVのZ(FF):460万円

差額の90万円は、補助金で賄える。
国のCEV補助金55万円
東京都の補助金(個人)45万円
再生可能エネルギー電力導入による上乗せ補助額15万円

最大115万円だから、補助金受給後の価格は逆転するのだ。

EV走行距離は87km。自宅に充電設備があれば、ほとんどBEVのように運用ができ、ロングドライブになれば、世界一のハイブリッドシステム、THSⅡ(いまはシリーズパラレルハイブリッドと呼ぶ)がある。

簡単に言えば、自分でプリウスを買うならPHEVを選ぶだろうということで、PHEVを借り出したわけだ。

EV走行、実際は何km走れる?

東京・九段下で借り出したプリウスPHEVは、(おそらく)フル充電でEV走行距離は82kmと出ていた。ドライブモードは「NORMAL」。首都高に乗り大黒PAを回って自宅まで走って、72.1km走行してバッテリー残量がゼロになりエンジンが始動した。

エンジンがかかると、「あ、エンジンかかったな」とはっきりわかる。エンジンがかかっているときは、エンジンの存在感は小さくない(つまり、けっこううるさい)。

ただし、EV走行時のフィールは素晴らしい。静かで滑らか。そしてパワフル。BEVが備える美点をすべてある。

自宅ガレージで充電。電力消費率m(参考値WTCモード) 7.46km/kWh(市街地モード8.85km/kWh 郊外モード8.13km/kWh 高速道路モード6.62km/kWh)
充電リッドは右リヤ
プリウスPHEVは急速充電に対応しない。見識あり、でGOOD。

自宅に戻って200V(15A)で普通充電した。バッテリー容量は13.6kWhだから、もし本当に空(ということはないのだが)だったとしても、5時間もあれば満充電になる。

翌朝、メーターを見ると満充電でEV走行距離は「89km」と出ていた(モード電費のEV走行距離が「87km」)。この日もエアコンを普通に使って走って73kmがEV走行できた。だいたい72-74km程度EV走行できると思えばよさそうだ。

新型プリウスと聞くと、「前方視界が良くないらしいですね、Aピラーが寝ているから」という声を複数聞いた。が、前方視界は悪くない。確かにクルマの最先端がどこにあるかは、ドライバーからは見えない。が、ボディサイズはCセグ(全長×全幅×全高:4600mm×1780mm×1430mm)だから、持て余すことはないし、駐車や狭い道ではセンサーとカメラがある。特段、気になることはなかった。

Aピラーの角度が極端に寝ていることと全高が低めなことで、乗り降りするときに頭をぶつけそうという懸念はあるけれど……。

エンジン 2.0L直4DOHC(M20A-FXS) 最高出力:152ps(112kW)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4400-5200rpm フロントモーター:1VM型交流同期モーター 最高出力:163ps(120kW) 最大トルク:208Nm 燃料タンク容量:40L 電池容量:13.6kWh
給油口は左リヤ側
右リヤ側には普通充電リッド

ハイブリッドからBEVへの移行期間を支えるのがPHEV、と言われてきたが、PHEVの存在は今後、もっと大きくなっていくのではないか、と思う。BEVより圧倒的に電池容量が少ない(プリウスPHEVが13.6kWh、bZ4Xが71.4kWh)からプライスタグも重量も軽くできる。車重が軽ければ当然走りも良くなる。長距離は、エンジンがあるから安心。プリウスPHEVに乗ると、その良さがよくわかる。

2017年にデビューした先代のプリウスPHVは、8.8kWhの電池容量でEV走行距離は68.2km、価格は422万2800円(最上級グレードのAプレミアム)だった。このときの月販目標台数は、2500台だった。

新型は450台/月と控え目だ。PHEVの普及に対して慎重な見方をしているのかもしれない。が、繰り返すが、次の条件をクリアする人はプリウスを買うならPHEVをお勧めする。

・自宅に200V普通充電の設備がある
・降雪地域に住んでいない(プリウスPHEVには4WDの設定がないから)

今回、3日間で277.5km走行した。そのうちの約200kmはEV走行だった。EV走行の平均電費は7.5km/kWh。残りはハイブリッド走行(WLTCモード26.0km/L)だ。

200km分のEV走行時の電気代は?

リヤシート
フロントシートはスポーティなデザイン
ソーラー充電システム28万6000円 太陽光を効率よく電力に変換し、1年間でEV走行1,200km分に相当する電力を生み出すというがガレージに屋根がある場合は、あまり効果的ではないような……。

では、電気代はいくらになるのか? 現在、東京電力のプレミアムLプランだと1kWh=39.7円だ。1kWhで7.5km走れるということは、5.3円/km(1km走るのに5.3円かかる)。

これはどう考えればいいのか? 資源エネルギー庁の2023年12月27日発表のデータでは
レギュラーガソリン:175円/L
軽油:154.5円/Lだからレギュラーガソリン車なら33km/L ディーゼル車だったら29.2km/Lの燃費と同等だ。

プリウスのサイズのクルマでこの燃費で走れるクルマはおそらくないだろうから、経済性という点でもプリウスPHEVは高い性能を持っているわけだ。

プリウスPHEVを選ぶ理由は、もちろん経済性だけではない。というより、ハイブリッドモデルよりもパワフルでスポーティな走りだ(フロントモーターはPHEVが163ps/208Nmなのに対してHEVは113ps/206Nm)。

タイヤ:F&R195/50R19
銘柄はヨコハマBluEarth GTを履く。
リヤサスペンションはダブルウィッシュボーン式
フロントサスペンションはFマクファーソンストラット式

トヨタは、PHEVにハイブリッドより明らかにスポーティでプレミアムな味付けを施している。新型クラウンスポーツでも同様だ。なぜか? 前述したように、補助金を受ければハイブリッドモデルとPHEVの価格差は縮まる。しかし、補助金はいつかなくなる。補助金なしでもPHEVを選ぶ理由がなければいけない。ハイブリッドとBEVの”谷”に掛ける橋としてPHEVの魅力が経済性やテールパイプエミッションゼロ(で毎日のルーティンがこなせる)だけでは、物足りない。ハイブリッドにもBEVにもない、PHEVならではの美点を磨き強調しなくてはいけない。プリウスPHEVは、その意味でも意欲作だ。選ぶ価値があるプリウスである。

ただし、エンジンがかかったときは、もう少し静かで振動がないとうれしい。なにせ、エンジンがかかったら、バッテリー分重い(プリウスの場合は150kg)ハイブリッド車になってしまうのだから。

車両重量はFF同士でPHEVが1570kgに対してHEVは1420kg。150kg重い。
プリウスPHEV Z 
全長×全幅×全高:4600mm×1780mm×1430mm
ホイールベース:2750mm
車両重量:1590kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:FF
エンジン
2.0L直4DOHC(M20A-FXS)
最高出力:152ps(112kW)/6000rpm
最大トルク:188Nm/4400-5200rpm
フロントモーター:1VM型交流同期モーター
最高出力:163ps(120kW)
最大トルク:208Nm
燃料タンク容量:40L
電池容量:13.6kWh
EV走行換算距離:87km
WLTCモード燃費:26.0km/L
 市街地モード23.7km/L
 郊外路モード28.7km/L
 高速道路モード25.5km/L
車両価格:460万円
オプション:ソーラー充電システム28万6000円、ITS Connect2万7500円、デジタルインナーミラー/デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能/周辺車両接近時サポート(録画機能)ドライブレコーダー8万9100円、デジタルキー3万3000円、フロアマット(ラグジュアリータイプ販売店オプション)3万4100円
オプション込み価格506万9700円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…