117クーペを超えるハイパフォーマンスモデルを企画
今でこそトラックメーカーに特化したいすゞ自動車だが、この時代にはハイパフォーマンスカーなども手がける乗用車メーカーだった。
1963年には、ベレットというモデルを発表。DOHCエンジンを搭載し、4輪独立懸架を採用。日本車初のディスクブレーキも採用するなど、徹底したスポーツモデルもラインナップ。そして2年前の1968年には、117クーペというハイエンドのクーペを発表。ご存知の方も多いが、デザインはジョルジェット・ジウジアーロが担当した。
そんな流れの中で、東京モーターショーに登場したのが117クーペのエンジンをミッドに搭載した、ベレットMX1600だ。初登場となったのは1969年の第16回東京モーターショー。そしてその翌年の1970年にも同名で登場したのだが、その仕様は大きく進化していた。
スチール製だったボディはグラスファイバー製となり、リヤウインドウにはルーバー式が採用されるなど、さらにスーパーカー的な仕立てとなっていた。
加えて驚くのが1969年に発表された時点で、早ければその翌年(1970年)には市販化されるとのアナウンスがあったことだ。つまり、単なるコンセプトカーではなく、市販を見据えたプロトタイプだったのだ。1970年の大幅なリファインはさらなる性能向上を見据えたものだったと推察されるが、諸般の事情で販売は断念された。
特に1970年のモデルを見るにあたり、そのスタイリングは秀逸であり、市販化されれば歴史に大きく名を残す存在になったことは間違いない。また、その後に登場するジェミニやピアッツァなどの運命も、よくも悪くも、いすゞ自動車の歴史は大きく変わっただろう、と思われる。