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ピックアップトラックベースのタフSUV
いすゞMU-Xは、同社のピックアップトラック「D-MAX」と基本を共有するラダーフレーム構造を持つ本格SUVだ。初代は2013年にデビュー。現行型は、2020年に発表された二代目で、2023年10月に改良を受けたばかりだ。
その名の呼び方は、「ミューエックス」と、かつて日本でも活躍したコンパクトSUV「MU(ミュー)」の後継とも思えるもの。ただ、その名に込められた意味は若干異なる。日本でも販売されていた「MU」は、英語の「mysterious(ミステリアス)」と「Utility(ユーテリティ)」を組み合わせた造語であり、スペシャルティなSUVであることを予感させるものであった。
それに対して、「MU-X」は、「Multi Utility」の頭文字を取ってものに、シートアレンジによりフレキシブルな乗車人数の対応可能な機能性に加え、早い(エキスプレス)や極限(エクストリーム)なクルマという意味が「X」に込められているという。
ちょっと現実的な名前となったようにも思えるが、響きやラダーフレーム構造のSUVという共通点があるのだから、MUの系譜といっても良いのではないだろうか。
MU-XもSUVのひとつであることは間違いないのだが、厳密に言うとPPV(Passenger Pickup Vehicle)と呼ばれるカテゴリーになる。その意味するところは、ピックアップトラックベースの乗用モデルであり、他社ではトヨタがハイラックスベースの「フォーチュナー」、三菱がトライトンベースの「パジェロスポーツ」、日産がナバラベースの「テラ」を展開している。
ただ乗用モデルとして展開されるため、高い悪路走破性を含めた基本性能はD-MAX譲りだが、快適性や高級感にも注力しているのが特徴のひとつ。このため、単なるSUV仕様ではなく、フロントマスクも変更するなど、明確な差別化も図られている。
まずサイズを比べてみよう。D-MAXの最上級仕様V-CROSS(ダブルキャブ)との比較だ。
車名 | D-MAX | MU-X |
グレード | V-CROSS 4×4 3.0Ddi M 4ドアAT | 4×4アルティメット ファントムコレクション AT |
全長 | 5280mm | 4850mm |
全幅 | 1870mm | 1870mm |
全高 | 1810mm | 1875mm |
ホイールベース | 3125mm | 2855mm |
最低地上高 | 240mm | 235mm |
乗車定員 | 5人 | 7人 |
上記にあるように、ホイールベースを含め、ボディサイズが専用化されるほか、トランスミッションもATのみとなる。さらにリヤサスペンションも、D-MAXがリーフスプリングなのに対して、MU-Xでは5リンク式にアップデートされているので、はっきりとした乗り心地の違いも感じられそうだ。
乗用車らしい充実した装備にアップデート
今回の改良では、フロントグリル内フィンのクロームブラック化や新デザインのアルミホイール、新ボディカラーの採用など外観上の差別化は小変更に留められている。
新機能としては、オートマチックテールゲートの開閉をステップセンサーが検知し、歩み寄るだけで開閉できる「スマートテールゲートエンドキャップ」を採用。
さらにインフォメーションシステムのアップデートやマキアートブラウンの内装色の新設、さらにシートにCOOLMAXテクノロジーを取り入れたシートなどが挙げられる。このCOOLMAX機能は、シート表皮の熱の蓄積を軽減させることができるもので、乗車中の快適性を高めることができる。
装備も充実しており、ステレオカメラやミリ波レーダーなどのセンシング機能による先進安全運転支援機能を始め、オートエアコン、7インチもしくは9インチタッチスクリーン式インフォメーションシステム、USBソケット、最大150Wの220Vコンセント、電動パーキングブレーキ、3列7人乗り仕様のレザーシート(合成皮革)などを備える。
ディーゼルターボエンジンは1.9Lと3.0Lを用意
パワーユニットは、全車直列4気筒クリーンディーゼルターボを搭載し、パドルシフト付の6速ATを組み合わせる。
RWD専用となる1.9Lエンジンは、最高出力150ps・最大トルク350Nm、RWDと4WDのいずれも選択可能な3.0Lエンジンは、最高出力190ps・最大トルク450Nmをそれぞれ発揮する。因みに、渡河水深は800mmという本格派らしい一面もある。
より豪華になったディティール&ユーティリティ
それでは詳細を見ていこう。兄弟車であるため、内外装デザインは、ピックアップトラックD-MAXと共通となる部分もあるが、基本的にはより豪華仕様だ。このため、形状が同じダッシュボードパネルも加飾パネルなどで上級化が図られている。
特にシートデザインは専用化されており、最大7人乗りを可能とし、ラゲッジスペースの拡大が可能な自在なシートアレンジを可能としている。
室内空間も広く、フロントとセカンドは足元にもゆとりがある。正直、3列目は足元空間こそタイトだが、実用的なシートに仕上げられている。
ラゲッジスペースは、3列目使用時こそ小ぶりだが、3列目を格納すると十分な広さが確保できる。5名乗車仕様ならば、アウトドアに必要な荷物もしっかりと収まりそうだ。後席の中央席前には、USBソケットに加え、ACコンセントも確保されているので、特に現場でノートPCを使うビジネスマンなどに重宝されるだろう。
ピックアップトラックベースSUVの日本導入はあるのか?
D-MAX譲りのタフなデザインは、素直にカッコイイ。日本の街乗りSUVや豪華な本格SUVとも異なる魅力がある。日本車でいえば、ランドクルーザープラド的だが、それよりも若々しくスポーティに仕上げられている点に好感が持てる。かつての日産ハイラックスサーフやニッサンテラノなどを思い起こさせてくれる雰囲気なのだ。日本で購入できれば喜ばれそうなのだが、国産他社を含め、現時点でのPPV系SUVの導入がないのが非常に残念だ。
タイでの標準車価格だが、117万4000バーツ(4×2 1.9 アクティブ)~165万9000バーツ(4×4 3.0アルティメット)となっており、日本円だと約486万円~約687万円となり、意外と高価。もちろん、D-MAXシリーズ中では最も高いレンジに位置している。装備が充実しているのも納得だ。