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自衛隊新戦力図鑑
砲塔左側のモジュラー装甲。装甲自体はこの外装ブロックの内部にあるという。外装ブロックは脱着できる仕組みだ。外装ブロックの表面にはパネル状の構造があって、いくつかは用具などの収納を兼ねている。外板表面にある多数のフックはカモフラージュ用偽装網などを取り付けるためのもの。

10式戦車には複合装甲が採用されている。複合装甲とは素材の異なる防御板を何枚も重ね合わせて作られるものを指す。鋼板だけの装甲よりも高い防御力を示すものだ。一般的には鋼板とセラミックを何層にも重ねて作られるといわれているが、その素材や防御板の厚さ、それらを組み合わせた数、総合的な厚さなどは当然だが公表されない。だから防御力を推し量るのは難儀だ。これは筆者の想像だが、戦車は自らの主砲から射撃した砲弾の打撃に耐える防御力を少なくとも備えているはずだと思う。

ただしこれは徹甲弾での想像の話で、榴弾や多目的弾、対戦車榴弾や対戦車ミサイルなどの携行型対戦車兵器、地雷やIED(即席爆発装置)などに対しての防御力は不明だ。いわゆる対戦車兵器の脅威は大きい。諸国軍の戦車などには追加装甲やさまざまなオプションが取り付けられている例も多い。

砲塔右側のモジュラー装甲を俯瞰する。砲身基部の防盾以後の脱着式外装ブロックの配列だ。
履帯(キャタピラ)を覆うスカートも防御力の一部だ。さらに下方へ延長されているのはラバー製スカートで、これは主に走行時の保護用装備とされるもので装甲材ではない。

10式の複合装甲の特徴は「モジュラー(モジュール、Module)装甲」であることだ。モジュールとは構成部品が交換可能なことを意味する言葉だ。つまり10式の装甲は取り外しができて交換可能ということ。たとえば被弾した場合にその部分の装甲を交換できる。あるいは将来に新型装甲が開発された場合にはその新装甲へ付け替える(装甲換装)こともできるという。

10式を眺めていると、砲塔の側面や前面は区分された箱形や多面形の構造物が寄せ集まって構成されているように見える。この外から見える部分、ここでは外装ブロックと呼んでみるが、これはモジュラー装甲そのものではないというのだ。

先に紹介したように複合装甲とは異素材の防御板を重ね合わせた構造で、成形や加工が難しい。だから装甲構造物としてまず箱型で作り、ブロックを組み立てるように取り付けることにして製造しやすくしているという。しかし箱型装甲材をそのまま取り付けたのでは、個別の大きさから構造や能力が露見してしまうはず。

砲塔前部左右に設置された76mm発煙弾発射機。スモークを発生させ相手の視界を奪い攻撃を回避する。
砲塔の四隅にはレーザー検知器が設置される。相手の測距レーザー波や対戦車ミサイル誘導用レーザー波を検知するといわれ、全周囲を走査可能だというが性能の詳細は当然非公表。

そしてモジュラー装甲は外装式と内装式に大別される。外装式は基本的に装甲材を車体外側に装着する。10式は外装式になる。内装式は装甲材を内蔵する方式で、他の戦車で採用されているという。砲塔前面に帆布等で覆われた部分がある場合、その内側には複合装甲が内装されているはずだ。

つまり10式の複合装甲・モジュール装甲は外装ブロックの奥にあると考えられる。外から眺めているだけでは内蔵された装甲の厚さはわからない。また箱型の外装ブロックの外板(表面板)には戦車の防御力といえるような力はない。砲塔側面の外装ブロックのいくつかは用具などの収納スペースを兼ねているそうだ。外装ブロックの表面にはパネル状の構造があって、これはその収納部の扉だという。 

砲塔後部にはバスケットと呼ばれる荷室(荷台)がある。スコップやハンマー等の器具は後部車体に取り付けられている。

陸上自衛隊:最新世代戦車「10式戦車」の性能①、ヒトマルの機動力に注目する

これまで90式戦車、74式戦車を紹介してきたが、今回から10式戦車を見てみよう。装備された2010年度にちなみ名称は「10(ヒトマル)式戦車」と呼ばれる。開発は防衛省技術研究本部(現・防衛装備庁)が2002年から09年まで行い、製造は三菱重工。最新世代の戦車として登場して以来、主力戦車のひとつとなっている。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

陸上自衛隊:最新世代戦車「10式戦車」の性能②、ヒトマルの火力に注目する

10式戦車の「攻・走・守」それぞれの性能に注目するなかで、今回は「火力」を見てみる。攻勢などの力となる主砲は44口径120mm滑腔砲。これは防衛省技術研究本部(当時)と日本製鋼所が共同開発したものだ。90式戦車の主砲との差異やその威力などを見聞してみた。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

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