最新オールシーズンタイヤ、TOYO TIRES「セルシアス」を試す オールシーズンタイヤのスノー性能は満足できるか?

最近、注目度を上げてきたタイヤに「オールシーズンタイヤ」がある。最新のオールシーズンタイヤ、トーヨータイヤ「セルシアス」は、雪道もドライもウエットもかなりのレベルでこなせるオールラウンダーだ。ドライ/ウエット路面での性能はすでに確認済み。では、肝心のスノー路面での走りはどうだろうか?
BMW320dに履いたトーヨータイヤのオールシーズンタイヤ、「セルシアス」。

オールシーズンタイヤは、ドライ/ウエットの通常の路面だけでなく冬期の雪道まで走行できる全天候型タイヤだ。近年、非降雪地域に住むドライバーからの注目を集めている。

東京を含む関東南部、東海・近畿・中国地方の都市部では、雪に見舞われるのは、年に数回程度。そのためにスタッドレスへ履き替えるのはコストも手間も嵩んでしまう。そこでオールシーズンタイヤの出番、というわけだ。

東京に住む筆者もオールシーズンタイヤを選んだひとりだ。マイカー、BMW320d(2018年式F30型セダン)が履いているのは、トーヨータイヤのオールシーズンタイヤ「セルシアス」である。

2021年3月にセルシアスを履いた筆者は、雪を求めて山形までドライブして、一応、雪の上にタイヤを載せたが、本格的なスノードライブは未体験だ。

4月上旬だったので残念ながら本格的な雪上ドライブは、できなかった。

今回は、北海道での試乗会でセルシアスの雪上ドライブを経験済みの自動車ジャーナリストの諸星陽一さんのレポートをお届けしよう。


走り出しの感触はスタッドレスとほぼ同じ

RAV4 Xグレードの標準サイズである225/65R17サイズのトーヨータイヤのオールシーズンタイヤ「セルシアス」を装着。

2020年の冬季に開催されたウインター試乗会でのセルシアスの印象をお届けする。試乗フィールドは北海道のサロマ町に位置するトーヨータイヤの冬期タイヤテストコース。用意された試乗車はトヨタRAV4の4WD、装着タイヤサイズは225/65R17で、これはRAV4 Xグレードの標準サイズとなる。

このテストコース、なかなかのタフさを持つ。我々に用意されたのは全面整備された圧雪路面の外周路で、長い直線とカーブに上り下りの勾配が組み合わされた変化に富んだコース設定である。

セルシアスを履いたトヨタRAV4(4WDモデル)
トヨタRAV4にウィンタートランパスTXを履いた車両で比較テストもできた。

試乗はスタッドレスタイヤであるウィンタートランパスTXとの比較という形が取られた。正直、オールシーズンタイヤのセルシアスにはさほど期待はしていなかったのだが、これが驚くべき高性能であった。走り出しの感触はスタッドレスとほぼ同じ、まったくマイナスイメージはない。外周路へのアプローチ路はちょっときつめの勾配だがそこで一時停止しても、何もなかったかのように走り出す。RAV4の4WDモデルではあるが、グイグイ加速していく感覚はスタッドレスタイヤかと思うほどである。下り勾配のストレートで速度が乗ったところ、100km/hオーバーで左右にこぶし1つ分くらいステアリングを振ってみても、しっかりとクルマが反応する。ウインタートランパスの半テンポ、いや4分の1テンポ遅れくらいのフィールで反応してくれるのだから大したものだ。

下りのストレートの先がもっとも滑りやすい路面になっているというかなり意地悪なコースだが、競技をしているわけでもタイムを計っているわけでもない。早めのブレーキングで速度を調整していく。ゆっくりとブレーキペダルに踏力を入れていくと、スーッと速度が落ちていく。試しに踏力を強めると、きちんと強い制動力を感じることができる。路面ミューが落ちアイスバーンに近い路面で強めの踏力でブレーキを踏むと、圧雪路では介入しなかったABSが作動してくる。

※全車チェーン規制時はどんなタイヤ(スタッドレスタイヤも含む)もチェーン装着が必要となる。全車両チェーン装着規制に備えて冬期はタイヤチェーンを携行したい。

同じことをウインタートランパスTXで行なうと、圧雪路での反応は似ているものの、アイスバーンに近い路面でのABS作動に至るまでの踏力はかなり違いがあり、スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの性能差が感じられた。また、同様に路面ミューが低い路面でのコーナリングではセルシアスのほうがクルマ1台分アウトに膨らむ場面もあった。もちろん、このラインずれの量は速度や車重に影響するが、こうしてあらためて乗り比べてみると、スタッドレスタイヤの氷上性能の高さを実感する場面であった。

トレッドコンパウンドには、シリカの分散を向上させるアクティブポリマーを採用。スノーフレークマークを打刻したスノー性能を持ちながら、夏タイヤに必要なウエット性能向上と転がり抵抗の抑制を実現している。
スノー性能とドライ・ウェット性能を最大限に発揮する非対称パターン採用する。
冬用タイヤチェーン規制時でもそのまま走行できる。ただし、全車チェーン規制時はどんなタイヤ(スタッドレスでも)もチェーン装着が必要になる。

路面ミューが低いコーナーを抜けるとしばらくフラットなコースとなるので、左右に振り回してみる。各種制御デバイスが介入はしてくるものの、全体としては落ちついていて前後、左右、どちらの方向にもしっかりとグリップを発揮してくれることを再確認できた。

アウト側はドライ/ウエット性能重視のパターンで、イン側がスノー性能重視のパターンをとる。

セルシアスは元々は欧州向けのオールシーズンタイヤとして販売されていたタイヤということで、スピードレンジも国産スタッドレスタイヤによく見られるQレンジ(160km/hまで)ではなく、Tレンジ(190km/h)からVレンジ(240km/h) までの設定となっている。。

圧雪路面での高い操縦安定性から想像するに、欧州ではそれなりの速度域で使われているのだろう。しかし、日本の路面はじつに特殊で、降雪地帯では昼間に雪が解けそれが夕刻から再氷結し、スタッドレスタイヤに磨かれてブラックアイスバーンとなる。このような路面ではスタッドレスタイヤは必須である。だが、東京、名古屋、大阪といった三大都市圏でなら、セルシアスの恩恵はかなり高い確率で受けられるだろう。また、降雪地帯の3シーズンタイヤとしての利用価値も高そうだ。「まだ降らないだろうという秋」、「もう降らないだろうという春」に、セルシアスを履いているのはかなり高い安心感が得られるはずだ。
TEXT & PHOTO◎諸星陽一(MOROHOSHI Yoichi)

都会の雪もオールシーズンタイヤなら安心感が高い

東名阪エリアでも突然大雪が降るケースがある。降雪量の増減も大きいし、都内でも年に数回は積雪する。そんなとき、オールシーズンタイヤを装着していれば、ノーマルタイヤよりも安心して走行できるのだ。スタッドレスタイヤに履き替えるほど、雪に見舞われることがない人、スタッドレスタイヤ交換したあとのサマータイヤを保管しておく場所に困る人など、オールシーズンタイヤがフィットするケースは意外と多い。

すでにトーヨータイヤのセルシアスを装着している筆者にとっては、もう「東京の雪」は怖くない。諸星さんのレポートにもあるように、都市部のユーザーにとってセルシアスは、リプレイスタイヤの有力な選択肢になる。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…