米国ウーバー社の自動運転車が歩行者と衝突、世界で初めて歩行者を死亡させた事故が発生【今日は何の日?3月18日】

一年365日。毎日が何かの記念日である。本日3月18日は、米国ウーバー社の自動運転試験車が道路を横断中の歩行者に衝突、自動運転車が初めて歩行者の死亡事故を起こした日だ。

自動運転車が車道を横断中の歩行者を認識できずに衝突

2018(平成30)年3月18日、米国のアリゾナ州でウーバー・テクノロジーズ社の自動運転試験車が、自転車を押して車道を横断中の女性に衝突して死亡させる事故が発生。自動運転車による死亡事故で歩行者が犠牲になったのは、これが初めてだ。

ウーバー自動運転車(2017年型「ボルボXC90」)

ボルボXC90ベースに開発されたウーバーの自動運転車

事故を起こした自動運転車は、米国のライドシェア最大手であるウーバー・テクノロジー社が2017年型「ボルボXC90」をベースに改造した実証試験車。クルマの屋根に装備した小型ドーム内のLiDARとカメラ、レーダーによる高度なセンシング技術とAIを活用したシステム制御によって自動運転を可能にしている。

ウーバー自動運転車の屋根には、LiDARとカメラ、レーダーを収納した小型ドームを装着

事故は、米国アリゾナ州において自転車を押して車道を渡っていた49歳の女性に、自動運転車が車速63km/hで衝突、世界で初めて歩行者を死亡させた事故となった。原因は、システムが被害者を“人間(歩行者)”と認識できなかったことで、基本的かつ技術的な問題が浮き彫りになり、しかも補助ドライバーは動画を見ていて前方をまったくく注意していなかったことも明らかになった。

ウーバー社と死亡した女性の遺族はその後和解したものの、自動運転の安全性に対する懐疑的な意見が噴出、世論からも厳しい目が向けられるようになり、州によっては自動運転の公道試験を禁止するなど自動運転車の検証試験が一時的に停滞した。

ウーバー自動運転車(2017年型「ボルボXC90」のリアビュー

他にもある自動運転車による重大事故

2015年頃から、自動運転車の実証試験を積極的に進めた米国では、軽微な事故を含めると数多くの事故が発生している。以下に、ウーバー社以外の代表的な重大事故を紹介する。

・グーグル社の自動運転車が路線バスと衝突(2016年2月14日)
カリフォルニア州で自動運転車が路線バスと接触。路肩の砂袋を避けて左方向に車両を移動した際に、後ろから走行してきたバスの側面に衝突、ケガ人はいなかった。

・テスラ社「モデルS」が大型トレーラーに衝突して運転者死亡(2016年5月7日)
フロリダ州のハイウェイで部分自動運転モード中の「テスラS」が、大型トレーラーに衝突してドライバーが死亡。トレーラーを物体と認識できなかったことが原因だが、運転車がほとんどハンドルを握ってなかったことが判明、システムは何回も警告していたのでクルマ側の過失は認めらなかった。

自動運転レベル2相当のBEV「テスラ・モデルS」

・テスラ社「モデルX」が高速分離帯に激突して運転者死亡(2018年3月23日)
カリフォルニア州のハイウェイで、部分自動運転モード中の「モデルX」が中央分離帯に衝突し、運転車が死亡。衝突直前にシステムがドライバーに警告を発したが、ドライバーはハンドルを握っていなかったことが判明。やはり、車両側に技術的な過失はなかったとテスラ側は主張している。

日本では限られた条件での走行なので自動運転車の事故は軽微

・名古屋大学の「ゆっくり自動運転」が、車速14km/hで走行中に一般車両と接触(2019年8月26日)

・ソフトバンク子会社のBOLDLYの自動運転バスが、都内で路上駐車の乗用車に接触(2020年3月10日)

・産総研の自動運転バスが滋賀県大津市での実証試験中に歩道柵の支柱部分に接触(2020年8月30日)、また茨城県日立市ではガードレールに接触(2020年12月14日)

・東京オリパラの選手村でトヨタの「e-Palette」が視覚障害のある日本人選手と接触、選手は全治2週間の軽傷(2021年8月26日)

・福井県永平寺町の電磁誘導線を使った日本初のレベル4の自動運転車「ZEN drive」が、人が乗ってない自転車と接触、乗客4人にケガなし(2023年10月29日)

最近の新型車の多くは、部分自動化「自動運転レベル2」を採用し、ホンダ「レジェンド」とメルセデス・ベンツ新型「Sクラス」は、条件付き運転自動化「自動運転レベル3」を採用している。どちらであれ、システムが作動困難と判断し、ドライバーへの運転交代を要求した際には、ドライバーは速やかに運転操作を行う必要がある。これを理解してないと、ウーバーやテスラのような事故につながり、責任はドライバーにあるので要注意だ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…