国産ミニバンとは異なる価値観が新鮮「シトロエン・ベルランゴ」【最新ミニバン 車種別解説 CITOROËN BERLINGO】

輸入ミニバンの中でも個性的なデザインが際立つ「シトロエン・ベルランゴ」。プジョー・リフター、フィアット・ドブロと共通のベースを持ちながらその存在にはシトロエンらしいこだわりが詰まっている。シンプルなインパネや機能的な収納、差し色を配したインテリア、意外性のあるシートアレンジはフランス車らしいセンスが光っている。
REPORT:渡辺陽一郎(本文)/遠藤正賢(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:平岡明純

個性的な表情で姉妹車と差別化 高速走行の直進安定性が良好

ミニバンは国産車に多く設定され、輸入車は少ない。後者の貴重な選択肢のひとつがシトロエン・ベルランゴだ。今のシトロエンはステランティスに属するため、ベルランゴの姉妹車として、プジョー・リフターとフィアット・ドブロもある。基本部分を共通化しながら、ブランドに応じて個性化されている。

エクステリア

全長が365㎜拡大した「LONG 」は標準ボディのボクシーさが薄れて伸びやかな印象に。「XTR PACK 」は17インチ、ほかは16インチのアルミホイールを装着。
角丸のモチーフを多用したポップなデザインながら、フロントバンパー下側とリヤバンパーは無塗装樹脂にシルバーのアンダーガード風加飾が入り、ワイルドな印象も醸し出す。「LONG」系では手動式のリヤゲート地上高が2040㎜と標準ボディより60㎜高く、ストラップが垂れ下がった際の下端地上高も60㎜高い1780㎜と、背の低い女性が開閉するのはやや困難か。

外観を見るとボンネットは短く、全高は1800㎜を上回り、後席側のドアはスライド式だ。フロントマスクのデザインは、シトロエンの個性が濃厚で、姉妹車のリフターやドブロとは表情が大きく異なる。注目度の高い3列シートのロングは、全長が4770㎜と長く、全幅も1850㎜とワイドだ。最小回転半径も5.8mで少し大回りになる。車内に入ると、インパネの周辺はシンプルなデザインだ。ATはダイヤル式のスイッチで切り替える。シートの座り心地は、ほかのシトロエンと基本的に同じだ。1列目は腰の近辺をしっかりと支えて、長距離移動するときでも疲れにくい。2列目は、3名分にキッチリと区分され、2名で座ると中央が空席になるが3名で座るときは快適だ。2列目のシートに、リクライニングやスライド機能は装着されないが、着座姿勢はちょうど良い。

乗降性

3列目は床と座面の間隔が不足気味で、座ると膝が持ち上がるが、座面は適度に柔軟で座り心地に不満はない。身長170㎝の大人6名が乗車した場合、2列目に座る乗員の膝先空間は握りコブシふたつ分で、3列目にもひとつ半の余裕がある。外観はワゴン風だが、多人数で乗車しても快適。2/3列目の背もたれを前側に倒すと、平らな広い荷室に変更できる。収納設備は国産ミニバンに比べて少ないが荷室は使いやすい。

インストルメントパネル

助手席インパネアッパーボックスリッドに白のベルト調加飾が入るのはベルランゴならでは。上級グレード「XTRPACK」系はさらにインパネ上部が緑色となる。ナビはオプション。

クリーンディーゼルターボは、排気量が1.5ℓだから突出して力強い印象はないが、実用回転域で3.0ℓのガソリンエンジンに匹敵する駆動力を発揮する。1400rpm付近からターボの過給効果が感じられ、4000rpmを超える領域まで滑らかに吹け上がる。エンジンノイズも小さく、ガソリンエンジンに近い感覚で運転できる。その一方でWLTCWモード燃費は18.1㎞/ℓだ。軽油の価格はレギュラーガソリンよりも1ℓあたり約20円安いため、燃料代はセレナe-POWERと同程度。ディーゼルエンジンを搭載する国産ミニバンは、デリカD:5とグランエースだけだから、ベルランゴは数少ない選択肢だ。

居住性

カーブを曲がるときはボディが少し大きく傾くが、挙動の変化は穏やかに進む。しかもロングボディはホイールベースが2975㎜と長いこともあり、高速道路で横風にあおられたときの直進安定性も良い。乗り心地は街なかでは少し硬いが、速度が70㎞/h以上に高まると快適になる。

うれしい装備

助手席側インパネアッパーボックスは奥行きが深く、ポーチはもちろん車検証入れやA4サイズの書類もリッドで隠して収納できるほど。リッドがない中央と下側は助手席の乗員が手荷物を置くのに最適。
月間販売台数    NO DATA
現行型発表     19年10月(「LONG」系追加 23年1月)
WLTCモード燃費   18.1 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム

このあたりは日常的に高速走行の機会が多い欧州メーカーのミニバンであることを実感させる。3名分に分かれた2列目シートなども含めて、国産車とは違う価値観が新鮮だ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.155「2024 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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