■現行世代は初代比で75%もパワーアップ
バッテリーEVによるサーキットレースシリーズの最高峰に位置するフォーミュラE。他の世界選手権とは異なり、フォーミュラEでは共通シャシーが使われているのは前回お届けした通りだが、これまでに3つのシャシーが導入されてきた。
第1世代マシン「Gen1」はフォーミュラEが発足した2014/15年のシーズン1から、2017/18年のシーズン4まで使用された。
シーズン1は全チームがまったく同じマシンでレースを行ったが、シーズン2からはモーターやインバーター、ギアボックスなど、パワートレインの独自開発が可能に。また、レース中に使用できるパワーも150kWから170kWへと増加した。シーズン3にはマシンの外観が変更。フロントウィングが2段式とされるリフレッシュが図られた。
Gen1時代のフォーミュラEは、レース中にマシンを乗り換えるのが特徴的なシーンだった。このシャシーに搭載されたバッテリーの容量は28kWhだったが、100km前後に設定されたレースを走り切ることができず、ドライバーはレース中にピットでマシンを乗り換える必要があった。
第2世代マシン「Gen2」が導入されたのは2018/19年のシーズン5。野暮ったい見た目の前世代から一転、“バットモービル風”に仕上げられ、今となってはフォーミュラレースにはおなじみとなったドライバー頭部保護デバイス、HALOも装着された。
マシンの外観並に変わったのはバッテリー。バッテリーパックの重さはGen1から大きく変えず、容量は52kWhまで引き上げられた。これにより、同シーズンから45分+1周にフォーマット変更を受けた決勝レースを、マシンの乗り換えなしで走りきれるようになった。
また、モーターのパワーも同様に引き上げられ、最高出力は250kW(約340PS)に。最高速も前世代の225km/hから280km/hへとスピードアップ。減速時の最大回生電力も250kWまで増加した。
そして、現行の第3世代マシン「Gen3」は、2023年に行われたシーズン9から採用された。
Gen2からの一番の変更点は、パワートレインがマシンのフロントにも搭載されたこと。フロントモーターは加速のアシストは行わず、減速時の回生のみに使用されるが、モーターが2基搭載されたことで最大回生力はGen2の2倍以上の600kWに。これによりレース中に使用されるエネルギーの40%以上を回生できるようになった。
また、回生ブレーキの強化により、従来の油圧ブレーキの役割が減少。フロントブレーキが小型化され、リアでは従来のブレーキシステムは廃止された。
また、モーターパワーは350kW(約460PS)まで上がり、最高速は320km/hと300km/hの大台超えを達成。Gen1と比較するとパワーは75%増し、最高速は95km/h増しており、この10年で大きく進化したと言える。
フォーミュラEマシンスペック一覧
Gen1 | Gen2 | Gen3 | |
全長×全幅×全高 | 5000mm×1780mm×1050mm | 5200mm×1800mm×1063.5mm | 5016.2mm×1700mm×1023.4mm |
ホイールベース | 3100mm | 3100mm | 2970.5mm |
最低重量(ドライバー含む) | 900kg | 900kg | 840kg |
最高出力 | 200kW | 250kW | 350kW |
最大回生電力 | 150kW | 250kW | 600kW |
電力回生量 | 約15% | 約25% | 40%以上 |
最高速 | 225kmh | 280kmh | 320kmh |
パワートレイン | 1基(リア) | 1基(リア) | 2基(フロント/リア) |