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ホンダS800（エスハチ）に対抗したトヨタスポーツ800（ヨタハチ）
1965（昭和40）年4月1日、トヨタの2シーター・ライトウェイトスポーツ「トヨタスポーツ800（ヨタハチ）」がデビュー。前年の東京モーターショーで参考出展された「パブリカスポーツ」を量産化したモデルで、ホンダのスポーツモデルSシリーズ「S600」（エスロク）＆「S800」（エスハチ）に対抗する形で登場した。
優れた空力性能と軽量ボディで俊敏な走りを実現
トヨタは、1964年の“全日本自動車ショー（現在の東京モーターショー／ジャパンモビリティショー）”で小型スポーツカー「パブリカスポーツ」のプロトタイプを発表。翌年、それをベースにデビューしたのがトヨタスポーツ（S）800だ。
トヨタS800は、翌年登場したホンダの「S800（エスハチ）」に対し「ヨタハチ」と呼ばれ、「トヨタ2000GT」を彷彿させる流麗なスタイリングが注目された。
前面投影面積の低減や曲面サイドガラスの採用など、航空機の空力技術が随所に盛り込まれたボディにより、Cd値は驚異の0.30を達成。また、ルーフやトランクにアルミパネルを採用するなどして、軽自動車並みの580kgの軽量化を実現。この優れた空力性能と軽量化が、トヨタS800を特徴づけた。
パワートレインは、パブリカ用を改良した排気量790cc空冷水平対向2気筒OHVエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はFR。最高出力45ps/最大トルク6.8kgmは、スポーツモデルとしては非力だが、優れた空力性能と軽量化によって俊敏な走りを実現した。
ライバルは、高性能エンジンを搭載したホンダのS600とS800
トヨタS800のライバルは、1964年デビューの「ホンダS600」と1966年にデビューした「ホンダS800」だ。2つのモデルの主要なスペックは以下の通り。
【トヨタS800（ヨタハチ）】
ボディサイズ：全長3585mm／全幅1465mm／全高1175mm
エンジン：790cc空冷水平対向2気筒OHVエンジン
車体重量：580kg
最高出力：45ps/5400rpm
最大トルク：6.8kgm/3800rpm
最高速度：155km/h
【ホンダS800（エスハチ）】
ボディサイズ：全長3335mm／全幅1400mm／全高1215mm
エンジン：791cc直4 DOHCエンジン
車体車重：755kg
最高出力：70ps/8000rpm
最大トルク：6.7kgm/6000rpm
最高速度：160km/h
ホンダS800がバイク譲りの高回転高出力型のDOHCエンジンを搭載し、最高出力はトヨタS800を大きく上回っている。しかし、レースではトヨタS800は、ホンダS800と対等以上の熾烈な戦いを繰り広げた。ホンダS800が高性能にこだわったスポーツモデル、一方のトヨタS800は非力なエンジンながら空力と軽量ボディにこだわったのだ。
車両車重は、トヨタS800の580kgに対して、ホンダS800は755kgと、その差は175kgもある。同じスポーツモデルながら、アプローチが対照的だった。
伝説の走りを残したヨタハチの輝かしいレース戦歴
トヨタS800は、1965年に行われた第1回全日本自動車クラブ選手権でのGT-Iクラス優勝、第1回鈴鹿300kmレースでのクラス優勝、1966年の鈴鹿500kmレースでの総合優勝など、輝かしいレース成績を記録した。
なかでも、船橋サーキットで行われた第1回全日本自動車クラブ選手権レースでの天才ドライバー、浮谷東次郎選手による最下位からのごぼう抜き優勝は、今も語り継がれるトヨタS800の伝説となっている。
また鈴鹿500kmでは、大型車に絶対速度では負けるものの、燃費の良さを生かしてピットストップの回数と時間を節約し、結果として総合優勝を飾ったのだ。
レースで勝つためには、エンジンパワーだけでなく、空力性能と車両重量が重要であることを認識させたトヨタスポーツ800だった。名車トヨタ2000GTの影に隠れがちなヨタハチだが、今も中古車市場では500万円以上の高値で販売され、海外では1000万円を超える個体もあるそうだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。