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クラウンシリーズで唯一の後輪駆動プラットフォーム
近年のクラウンは売れ行きを下げて、2021年の国内登録台数は1990年の約10%であった。しかしクラウンは、伝統ある基幹車種だから廃止できない。そこで、海外でも販売できるSUVに発展させたが、セダンも残した。クラウンは国産上級セダンの代表で、法人、自治体、ハイヤーなどの需要も多い。これらの用途では、定期的な乗り替え需要が発生し点検も入念に行なう。販売会社のメリットも考慮して、クラウンに新開発のセダンを加えた。
エクステリア
開発に際しては、従来型やカムリをベースにする案もあったが、最終的に燃料電池車のMIRAIを新型クラウンセダンへ発展させた。そのためパワーユニットも、直列4気筒2.5ℓエンジンのハイブリッド車と、燃料電池車だ。他のクラウン3車種は、カムリなどと同じ前輪駆動のプラットフォームを使うが、クラウンセダンはMIRAIから発展したために後輪駆動。プラットフォームと駆動方式の違いは、ボディの前側を見るとわかる。クラウンセダンは、フロントピラーとウインドウに対して前輪の位置が他のクラウンよりも前寄りで、ボンネットが長く見える。ボディの側面は、リヤウインドウを寝かせたトランクフードの短いファストバックスタイルとした。
乗降性
ボディは大柄で、全長は5030㎜、全幅は1890㎜に達する。販売店では「ここまでボディが大きいとマンションの駐車場に入らない方も多く、必然的に法人のお客さまが中心になる」と言う。クラウンセダンには、他のクラウンと違って後輪操舵のDRSも装着されず、最小回転半径はハイブリッド車が5.7m、燃料電池車は5.9mと大回りだ。運転席に座るとワイドな車幅を実感するが、ピラーとドアミラーの間に隙間があり、斜め前方の視界を確保している。セダンとあってボンネットもよく見えて、ボディの先端や車幅もわかりやすい。
インストルメントパネル
インパネ形状は、プラットフォームは異なっても他のクラウンシリーズに似ている。前席は腰を確実に支えて座り心地が良い。後席は床と座面の間隔が少し不足して、膝がもち上がるが、足元空間は広く窮屈ではない。後席はドアの開口部が下降気味のため、頭を下げて乗り降りする。
居住性
ハイブリッドの動力性能は、ガソリンエンジンに当てはめると3.0ℓに相当する。遮音は入念に行なわれ、アクセルペダルを深く踏まない限りエンジンの存在を意識させない。燃料電池車の運転感覚は、実質的に電気自動車と同じだ。動力性能はMIRAIと等しく、特にパワフルではないが、走りは静かで滑らかだ。走行安定性も優れている。ステアリング操作に対する反応は、比較的機敏な印象で、峠道も走りやすい。乗り心地は快適で、ドライブモードセレクトを後席優先のリヤコンフォートモードにすると、ショックアブソーバーの減衰力が大幅に柔らかくなる。この状態でカーブを曲がるとボディが大きく傾くが、時速50㎞以下で街なかを走ると実に快適だ。
うれしい装備
追加モデル発表 23年11月2日 月間販売台数 90台(23年11月) WLTCモード燃費 18.0km/ℓ ※Z(HEV)
ラゲッジルーム
セダンは重心が低く、ボディ後部には骨格と隔壁があるから剛性も確保しやすい。静粛性でも有利だ。クラウンセダンに乗ると、セダンボディの良さを実感できる。クラウンの本命はやはり伝統のセダンだと思う。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156 「2024年最新国産新型車のすべて」の再構成です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/156/