もはやご存じない方も多いのではないかと思うが、ポルシェは1963年のフランクフルトモーターショーで、『901』のバッジを付けた『356』後継モデルを世界に公開した。しかし、すでに真ん中に『0』をつけた3桁ナンバーを使用していたプジョーからの抗議により、車名を『911』に変更することになる。これが現在の『911』の起源となっている。
逆にポルシェもクレームをつけた過去がある。2015年にアストンマーティンが『ヴァンテージGT3ロードカー』を発表した時、ポルシェは1999年からその名前を使用しており、2011年に商標登録したと主張した。実際には『GT3』とはレーシングクラスを指すため、理論的には問題ないはずなのだが、アストンマーティンは『ヴァンテージ GT12』として限定販売した。
さて、今回注目されたアルファロメオだが、実は『ミラノ』と命名を試みたのは初めてではなかった。2009年にもルフサイズのハッチバックに『ミラノ』の名を使用しようと計画していたが、最終的に『ジュリエッタ』に改名されたという経緯があった。
この他の動きに目を向けると、フォードは1998年のジュネーブモーターショー直前まで、そこで公開される車の名前を、30年間使用されていた『エスコート』にこだわり続けるつもりだったと言われていた。しかし、これほど革新的で、スタイリッシュで、運転するのが楽しい車には新しい名前が必要であるいう意見に負け、同月にジュネーブでデビューしたのが『フォーカス』だった。
ボルボは、コンパクトセダン『S4』を1990年代初頭から半ばにかけて使用していたが、アウディがクレームを入れたことで『S40』に変更した。ただし、ボルボとの争いが起こった時点で、アウディはすでに『S4』のブランド名を『S6』に変更。その後『S4』バッジは1997年後半にコンパクトカーA4の高性能バージョンとして再び登場している。
コンプライアンス問題がクローズアップされる現代社会では、もはや「普通のこと」として捉えられる問題だが、名車『911』が過去に同様の問題に巻き込まれた末に誕生したとは、若い世代の方々にはなかなか新鮮な驚きではないだろうか?